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感染管理抄読会報告:COVID-19後遺症について

COVID-19のパンデミックから1年以上が経過し、新型コロナウイルス感染症の後遺症(Long COVID)に関する報告が出始めています。今回は、その後遺症について、6か月間フォローアップ調査した論文を紹介します。感染後の身体的・心理的、生活への影響を知り、具体的なケアにつなげられればと思い、この論文を選択しました。

論文タイトル                            6-month consequences of COVID-19 in patients discharged from hospital: a cohort study(COVID-19患者の退院6か月後:コホート研究)

Lancet 2021; 397: 220–32, Published Online January 8, 2021  DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)32656-8

論文の概要
【背景】
退院後のCOVID-19患者の持続的な症状、肺機能、身体的・心理的な影響に関する長期的な追跡調査が必要である。
【目的】
退院したCOVID-19患者の長期的な健康への影響を明らかにし、関連する危険因子、特に疾患の重症度との関連を調査すること。
【方法】
研究デザイン:前向き後ろ向き両方向のコホート研究
研究場所:中国・武漢のJin Yin-tan病院
対象:2020年1月7日~5月29日に退院したCOVID-19患者
【結果】
対象者は1733名であり、年齢の中央値は57.0歳(四分位範囲47.0-65.0)、男性が52%であった。

対象者の76%が追跡調査時に少なくとも1つの症状を報告した。症状の訴えは、男性と比較し女性の割合が高かった(73% vs 81%, p=0.0046)。退院後もっとも多くみられた症状は、倦怠感・筋力低下63%、睡眠障害26%、不安・抑うつ23%であった。

また、入院中の重症度が高いほど、肺拡散機能障害、不安・抑うつや倦怠感・筋力低下といった症状が出現しやすいことが明らかとなった。

追跡調査時の血中抗体検査は、急性期と比較して、中和抗体の血清陽性率(96.2% vs 58.5%)と抗体価の中央値(19.0 vs 10.0)が有意に低下した。

入院中には腎機能障害を認めなかった対象者のうち、13%が追跡調査時に腎機能障害を認めた。

【結論】
COVID-19症状発現後6か月の時点で、患者の主な症状は、倦怠感・筋力低下、睡眠障害であった。心理的合併症である不安・抑うつや、肺拡散能の低下は、重症患者ほど高かった。これらの結果は、重症患者には退院後のケアが必要であることを示している。

ディスカッション内容
今回の論文のテーマであるCOVID-19後遺症には、どのような症状があるのか、臨床でも非常に関心のあるテーマでした。これまでもイタリアや中国から後遺症に関する報告はありましたが、その中でもこの研究は、対象者数が多く、最長の追跡調査結果を示しています。

この調査に参加した対象者は、平均年齢が57.0歳と比較的若く、酸素投与が必要でない患者(25%)も含まれていました。日本では入院適応とならない軽症者も含まれていることから、軽症であっても後遺症に注意が必要と言えるのではないでしょうか。

重症だった患者では、退院後に疲労や筋力低下を生じやすいという結果については、早期からのリハビリ介入の必要性を再確認しました。入院中のリハビリ介入や退院後の受診の頻度については、結果に影響を及ぼす可能性もあるため、記載があった方がよいのではという意見もありました。

COVID-19後遺症を認識することは、患者への入院中の具体的なケアや退院指導につながるだけでなく、退院後に家族や会社といった周囲の人々によるサポート体制づくりにも重要だと思いました。

(担当:Y.T)

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