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第42回感染管理抄読会:在宅医療における手指衛生実施状況について

2022年2月の感染管理抄読会で取り上げた論文です。

Observation of Hand Hygiene Practices in Home Health Care
在宅医療における手指衛生の実施状況の観察

【書誌情報】
Journal of the American Medical Directors Association
Volume 22, Issue 5, May 2021, Pages 1029-1034
IF:4.669
DOI:10.1016/j.jamda.2020.07.031

【抄録】
目的:在宅医療(HHC)環境における看護師の手指衛生の実践、看護師の手指衛生ガイドラインの遵守、および在宅医療訪問時の手指衛生機会との関連要因について説明する。
デザイン:看護師の手指衛生の実践に関する観察研究。
設定と参加者:大規模な非営利のHHC機関がサービスを提供している患者の家庭で、准看護師と正看護師が観察された。
方法:50名の看護師が行う400件の訪問看護を2名の研究者が観察した。手指衛生の機会と実際の実践を記録するために、世界保健機関の検証済み観察ツールである「手指衛生のための5つの瞬間」を使用し、HHCの環境に特有の3つの機会を追加した。また、電子カルテで利用可能な患者評価データと看護師の人口統計学的アンケートを収集し、患者と看護師の参加者について説明した。
結果:合計 2014 回の機会が観察された。家に到着時が最も多く(n=384)、最も少なかったのは患者の周囲を触った後(n=43)であった。看護師レベルでのクラスタリングを調整した後の平均手指衛生遵守率は45.6%であった。遵守率は体液に触れた後が最も高く(65.1%)、患者に触れた後が最も低かった(29.5%)。手指衛生の機会数は、サービスを受ける患者が感染症関連の救急受診や入院のリスクが高い場合、および家庭環境が "汚い "と観察された場合に多くなった。看護師や患者の人口統計学的特性は、看護師の手指衛生の遵守率とは関連していなかった。
結論と含意:HHCにおける手指衛生の遵守率は、病院や外来患者の環境と同じであり、最適とは言えない。手指衛生の不備と感染伝播との関連はよく研究されており、SARS-CoV-2の発生で広く注目されるようになった。医療機関は、本研究で得られた結果を質向上のための取り組みに役立てることができる。

【感想】
在宅医療における手指衛生の実施状況を知りたいと思い、この論文を選びました。在宅医療の現場では医療提供者自身が適切な手指衛生が実施できているか分かりづらく、手指衛生の遵守を調査することで、必要な手指衛生のタイミングに対する気づきになりました。しかし、今後ますます重要性が増す「在宅環境における手指衛生」という着眼点は良くても、適切な先行文献を用いて、在宅環境での手指衛生の特徴や意味合い、施設における手指衛生との違いを背景や考察で掘り下げなければ、データを活かせない内容の薄い論文となってしまうことを学びました。今後自分が論文を書いていくにあたり活かしていきたいです。また統計についても、どのような分析方法を選ぶべきかもっと勉強していきたいと改めて感じました。

(M.S.)

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