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スパンコール

何か輝くものがあった。真っ暗な部屋の中、ベッドの上からそれは見えた。オレンジ色に光るそれは、僕の目を突くほど眩しく、じっとそこにあった。

2回目の大学受験が漠然と不安で、1回目の大学受験で成功した高校の友達に相談したとき、「不安の90%以上は実際に起きないって言われてるから大丈夫!」とLINEで言われ、その時の私からしたら、そういう根拠もクソもない自信が欲しかったため、それなりに勇気づけられたことを覚えている。

不安の90%以上が実際に起きないのなら、残りの10%以下を引きがちである。

中学の部活の大事な試合で盛大なミスを犯しそうだなと不安に思った時は、盛大なミスを犯しチームを敗北に導いたし、ずっと前から計画していた友達とディズニーランドに行く日は雨が降るし、彼女に振られそうだなと思っていたら、本当に振られる。

不安は「起こりそう」と思うから不安なのであり、起こる可能性が低いと思うものに不安を感じたりはしないのだ。

「起こりそう」と思うからにはそれなりの根拠があるということだ。練習の段階からなんとなく調子が悪かったり、天気予報が2週間前から雨だったり、「話したいことがあるから」と呼び出されたりすることがそれだ。

誰もが「恋愛には終わりがある」ということを知っているのに、知らないフリをする。「今回は違う」と自分に嘘をつく。好きだと思ったから「好きだ」と言うのではなく、好きだと言ったら相手が喜ぶだろうなと思うから「好きだよ」と言うし、「好き」って言われたら「おれも」と言わないと関係が壊れそうだから「おれも」と言うのだ。本心なのか本心じゃないのかも分からない、いや、たぶん多くの場合、本心ではないのに、自分も相手も騙して、堂々と、切実に、嘘をつく。そうすることが、楽しかったり、嬉しかったり、申し訳なくなったり、それでも自慢したくなったりする。 

恋愛は騙し合いなのかというと、必ずしもそうではない。と言いたい。この世界にキラキラ輝いているものを、全て否定するには僕は若すぎる。輝いているのは、夜空の星か、床に落ちたスパンコールか、歩み寄って確認する勇気はない。輝いているものは、そのまま輝いているものとして、とりあえず今のところは、存在し続けてほしい。

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