【1】出会いについて
出会いについて語らなければならない時、その話は必ず、「悲しい話だと思いませんか」で締めくくられる。そういうものなのかもしれない。
例えば、原宿の裏通りですれ違った時。
例えば、新幹線の指定席で隣同士になった時。
例えば、夜行バスの待合室のトイレの列に並んでいる時。
例えば、大学の同じサークルに入った時。
これらは全て出会いになり得る。お互い意識しないところで悲しいとか、怖いとかそういう感情を共有しているかもしれない。友達になるかもしれないし、ならないかもしれない。必要最低限の会話のラリーをするだけで終わるかもしれないし、涙を流しあうほど感傷的な話をするかもしれない。
「出会いが無い」ということが、「恋人ができない、又はいない」ことの最たる理由によく用いられる。確かに、出会いから全てが始まる。出会わなければ始まりはしない。しかし、出会ったからといってある種の時間が始まる訳でも無い。
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