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裏山の小さなユートピア「善知鳥キリシタン洞穴」

人形道祖神の習わしが続き、減反画廊も残るこの横手盆地には、隠れキリシタンの歴史も重ねられている。

東北にも隠れキリシタンは多く潜んでいた。国東半島に生まれローマへ渡ったペトロ・カスイ岐部は、キリシタン禁制の日本に戻り、東北まで逃げ延びながら信徒達を祝福していった。そして遂には仙台で捕らえられ命を落とした。




この地域にも13人の殉教者が出たという。彼らは、この裏山洞穴を隠れ家と礼拝堂にしていた。畑から歩いて5分ほどにあり、奥行きは10m、突き当たり左には3畳程度の空間が広がっている。ここに篭り祈りを続けていたのだろう。


こうした洞穴は九州にもたくさんあった。長崎や大分にも隠れキリシタンの洞穴はある。宮崎や鹿児島には隠れ念仏のガマが点在している。
実際に行ってわかったのは、集落や田畑からの距離感がどこも共通しているということだ。決して近くもなく、かと言って10分以上歩くわけでもない、絶妙に離れた場所に洞穴をつくっている。

日常の中に密やかな祈りがある。裏山に小さなユートピアがある。信仰とはやはり隠れることなのかもしれない。

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