図解入門ビジネス 最新電力システムの基本と仕組みがよ~くわかる本[第3版](4)
最近耳にする「電力不足」や「電気代高騰」。
カーボンニュートラル宣言以降、多くの注目を集め、またライフラインとして重要な位置づけがされている電力について解説した『図解入門ビジネス 最新電力システムの基本と仕組みがよ~くわかる本[第3版]』(木舟辰平 著)から抜粋記事を5回連載でお送りします。
今回は第4回目「1-3 安定供給の確保」です。
【 1-3 安定供給の確保 】
電力の安定供給に万全を期すためには、需要に対して運転可能な発電設備を十分に持つことが不可欠です。日本全体の需要と供給のバランスに問題がないかどうか、10年先までの状況が毎年度、確認されています。
▶kWとkWhの両方の観点で
日本の2019年度の電力需要は8,799億kWhでした。工場など産業用、商業ビルなど業務用、家庭用の3部門がほぼ3分の1ずつ消費しています。電力の安定供給を維持するためには、当然のことですが、これだけの電力需要をまかなえるだけの発電設備が存在していることがまず必要です。
従来の電力システムで、その基準として参照されてきたのは、1年間で最も電気が使われた時間帯の量である最大電力(kW)です。最大電力が発生した際に需要を十分にまかなえるだけの発電設備があれば、1年を通して電気が足りなくなることは基本的にないからです。
こうした考え方に基づき、10年先まで想定される最大電力に対して十分な発電設備が存在するかどうかが、発電事業者などが提出した計画に基づいて毎年度確認されています。具体的には日本全体で最大電力の8%分の予備力が確保されていれば、突然の発電設備トラブルなどの供給側の要因、あるいは異常な猛暑や極寒など需要側の要因が発生しても、安定供給に支障はないと判断されてきました。
ただ、供給安定性確保のための基準のあり方は近年、見直しが必要になっていました。例えば、太陽光発電の導入拡大により、1年間で最大電力が記録される真夏の日中の時間帯の需給だけを確認するのでは不十分になっています。夜は日中より需要は減る一方、太陽光発電は稼働を停止するため、需給バランスがよりタイトになる可能性があるからです。
そこで供給安定性のレベルをより精緻に把握するため、21年度からEUE(Expected Unserved Energy)という新たな指標が本格的に採用されています。EUEとは需要が供給を上回ると想定されうる時間帯における1年間の供給力不足量の合計のことです。この値があらかじめ定められた基準値以下であるかどうか、エリアごとに確認されています。
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