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2020年1月からカードリーディングをはじめました!ここではリーディング・ときどき日々のことを書かせていただきます🌠 https://twitter.com/shuureading

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100回続けば丸儲け#01「テキトーに1200字」

「1200字の原稿を100回分ためれば300枚になって本1冊分になる」 昨日急にそんな計算が頭の中で弾き出された。こういう数字を出すのは割に得意である。今まで300枚という量は書いたことがないわけではなく、そこまで遠い数字というイメージでもなかったが、経験があるだけになかなか時間がかかる作業だということもわかっていた。そもそも300枚(要するに12万字である)も書きたことがあるのかと言えば全然ない。書きたいことはないけれど、書きたいという思いがある。不思議な感情であるが、僕に

    • 深海の森を漂うものたち#16

      翌日、JとHはともに森の巡回に出かけた。基本的には分かれて行動するので二人が並んで森を回るのはHがこの業務について間もない頃、まだJが彼に仕事の仕方を教えている時以来だった。あの頃はHといると全くみなしごの魂と遭遇できなかったので、Jとしてはちゃんと教育することができなかったという思いがあるが、ずっと付き添っていてもプレッシャーになりそうだったので(J自身何週間もみなしごの魂を捕獲できないのも業務としてまずいだろうということもあったが)ある程度のところで見切りをつけてHに単独

      • 深海の森を漂うものたち#15

        2か月ほどJは沼を見張ったが、結局彼らがクライと名付けた生き物を観測することはできなかった。しかしHがクライを見つけた時のように発光体が沼から出てくることは何度か目撃することができた。一体沼の中に何の用があるのかと思うがそんなことは考えても仕方がない。あいつらが何を考えているかなんてヒトにはわかりようがないのだ。Jはこの2か月の成果(つまりほとんど意味はなかったということ)を報告するとともに見張りの解除を願い出た。これ以上続けても状況に変化があるとは思えないし、効率がいいとも

        • 深海の森を漂うものたち#14

          20XX年11月X日 直近の事として。 Hは無事に森に順応したようである。当初彼は森および対象Lに対する適性が充分ではないと判断されていたが、今回致し方なく異動する事となり北の拠点の配属となった。対象Lの捕獲任務についてはあまり期待をしておらずさして重要でもなかったが、最近では問題なく遂行できるようになったということである。これは組織としては少々イレギュラーなことと言わざるを得ない。これまでの研究、そして今後の方針を検討し直さなければならない。判断をするのは私ではないがいくつ

        100回続けば丸儲け#01「テキトーに1200字」

        マガジン

        • 深海を漂うものたち
          16本
        • 自分という海を超えていく日誌
          30本
        • すぴと風
          6本

        記事

          深海の森を漂うものたち#13

          彼らが「クライ」と名付けた沼の生き物はなかなか姿を見せなかった。Jは毎日本部に「異常なし」との報告をした。見張りを始めてから1か月が経とうとしていた。何も起こらない沼の周囲をぐるぐる回るのはそろそろ飽きてきていたが、本部から見張りをやめていいという許可はまだ出なかった。それだけ本部もHの見た沼の生き物に興味があるということだろうか。確かに捕獲対象であるみなしごの魂を食べてしまうような生き物がいるのであれば、その存在を確認し、対策を立てる必要がある。自分たちにとって障害の一つに

          深海の森を漂うものたち#13

          深海の森を漂うものたち#12

          その後もHはみなしごの魂から逃げられ続けた。発見する回数は増えていたので、それ自体はJが言うように「前進」と言えるのかもしれなかったが、毎回近づいている最中に存在に気づかれて逃げられることになった(そのおかげでみなしごの魂が実はかなり速く動けるということがわかった。H曰く尾を引くような速さで本体を目で追うのはかなり難しいとのことだった)。JとHは検討を重ね、みなしごの魂が逃げる理由を考えてみたが未だヒントすら掴めない状態だった。JとHに装備の違いはなく、匂いも森と獣に紛れてい

          深海の森を漂うものたち#12

          深海の森を漂うものたち#11

          HはJについて回りながら森のことを少しずつ学んでいった。Jが森に入る前に受けたのと同じ種類の研修はHも受けていたが、見ると聞くとでは大違いだった。ラッキーだよ、とJは言った。俺の時にはこんなふうに先輩に教えてもらうなんてこともなかった。「先輩」と言う時に少しためらうような間があった。どう表現するか迷ったのだろう。しかしJが言うようにこれをラッキーと言えるのかどうかはHにはよくわからなかった。ここに来てしまったこと自体ラッキーと言えるのかどうか。 「Rのことは」Jは名前の響きを

          深海の森を漂うものたち#11

          深海の森を漂うものたち#10

          西の空に濃い橙色をした太陽が浮かんでいる。じっと見るとその円形は大気に揺らいでいる。細長い雲はところどころ千切れながら紫色に染まっていた。月はまだ出ていなかったが早々と顔を見せている星がある。瞬かないところを見るとおそらく惑星なのだろう。Hは星の名前に明るくなかった。次に星を、そして太陽を見るのはいつになるのだろうと彼は思った。 Hは彼のパートナーであるところの四つ足の生き物に乗り、森の入り口へと辿り着いた。外から見ても森は黒々としていた。まだ太陽の光もあるというのに。色の深

          深海の森を漂うものたち#10

          深海の森を漂うものたち#09

          Hはグレーのスーツの男の前に座っていた。彼と会うのはHがまだ地方公務員だった頃に役所の所長室で初めて顔を合わせた時以来だった。 「久しぶりですね」とグレーのスーツの男は言った。Hは意外に思った。下手な挨拶のような余計な言葉は全く吐かない男だと思っていた。たった1回会っただけの印象ではあったが、そのイメージは深くHの頭に刻み込まれている。 彼らは今本部の建物にある一室にいた。簡素な小部屋であり、長机とパイプ椅子、書類の詰まった棚が二つと特に使うこともなさそうなパーテーションがあ

          深海の森を漂うものたち#09

          深海の森を漂うものたち#08

          メールボックスに本部から明日の回収業務について連絡が届いていた。Hは電子端末を操作し「承知致しました」と返事をした。そしてHは小屋へと向かい、四つ足の生き物の毛並みを整えた。彼はその獣との交流を大切にしていた。一般的なヒトにはあまり見慣れない、奇妙な姿をしている生き物かもしれなかったが、彼にとってその生き物はとても美しい存在だった。姿形からあの暗闇をも恐れない佇まいまでも。腹部に頬を寄せると柔らかな温もりが伝わってくる。獣も首をぐるりと回し、彼に寄り添った。彼はその四つ足の生

          深海の森を漂うものたち#08

          深海の森を漂うものたち#07

          Rの所在や状況についてJは本部に訊ねてみたが、プライベートなことだからと一切何も教えてもらえなかった。最初のうちは「慣らし」がうまくいかずに心身の調子が狂ってしまったのか、あるいは何らかのアクシデントに巻き込まれたのかと考えたりした。しかし時間が経つにつれ、JはRが仕事を辞めてしまったような気がしてきた。外の世界を味わったことで森に戻ることが馬鹿馬鹿しくなったのではないだろうか。十分にあり得ることだった。まとまった金だってある。何も伝えず姿をくらましてしまうなんてこともありそ

          深海の森を漂うものたち#07

          深海の森を漂うものたち#06

          ある息苦しさとともにJは目を覚ました。目を覚ましても当たり前のように辺りは真っ暗だった。不思議に思ったのはその態勢だった。Jはうつ伏せになってマットレスの上に横たわっていた。普段彼は仰向けで寝ていた。寝返りを打ったとしてもうつ伏せになることはほぼなかった。そして、うつ伏せになった彼の背中には覆い被さる黒い影があった。 「…なんだ?」と、かろうじてJは声を絞り出した。Jの首は後ろから押さえつけられていた。 「大丈夫だ」と声は言った。「これは夢だ」 「そう、か?」Jは喉を鳴らした

          深海の森を漂うものたち#06

          深海の森を漂うものたち#05

          ここで改めてみなしごの魂について少し語りたい。みなしごの魂とは親と死に別れた孤児の魂ではなく、生まれざるして生まれないことを選んだ子どもの魂だ。彼らは親となる一対の男女を選びながらこの世界に人間として生まれないことを望んだ。世界と約束を交わし、様々な手続きを経てそのように存在することを許されたのである。彼らのほとんどは精子と卵子が受精してからおよそ3ヶ月ほどの間にこの世界での命を落としていた。着床せずにそのまま子宮内膜とともに流れてしまうものもあったが、どちらかと言えばそれは

          深海の森を漂うものたち#05

          深海の森を漂うものたち#04

          外からの使いはいつも日の入り前にやってくるようだった。こんな言い方をするのはもちろん、森の中で仕事をする彼らに日の入りなどわからないからだ。だが、使者はいつも平均して午後5時前後に現れた。そしてその時刻は夏には遅くなり、冬には早くなった。おそらく、とJは推察した。弱まりつつも太陽の力が残っている頃に森に入り、出る時には夜が訪れているぐらいがちょうどいいのだろう。理由はわからないが、その方が彼らにとっては都合がいいのだ。 使者として遣わされるヒトはいつも同じだった。Hと呼ばれて

          深海の森を漂うものたち#04

          深海の森を漂うものたち#03

          Jと呼ばれる男は寝床のテントを抜け出し川へと続く道を歩いていた。ともに酒を飲んでいたRは盃を傍らに置いたまま眠ってしまった。Jは2杯しか飲まなかったのでそれほど酔ってはおらず、眠くもなっていなかった。 彼らはテントの中でも灯りを点けることはなかった。一度灯りを目にすると深海の森では本当に何も見えなくなってしまうからだ。彼らの視力は総じて衰えていたが、それでも機能はしていた。この森においてはたとえ衰えていようとすべての五感を活用する必要がある。特に視覚は彼らの相棒たる生き物たち

          深海の森を漂うものたち#03

          深海の森を漂うものたち#02

          発光体を捕まえたあと、男と四つ足の生き物は北の拠点へと帰ってきた。ヒト用のテントと四つ足の生き物が身体を休めるための小屋があるだけの簡素な拠点だった。四つ足の生き物は小屋に着くと間もなく眠ってしまった。柔らかな草が敷かれた、彼らにとってなるべく快適なように心がけられた小屋だった(本当は枯れ草の敷かれた小屋が理想的だったが、この森においては叶うはずもなかった)。彼は今、先祖たちの夢を見ていた。発光体の香りを吸い込むと、反射的にそのような時間が訪れる。彼らは日の光を一身に浴びなが

          深海の森を漂うものたち#02