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救いようのない現実の中に何を見出すか~映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」レビュー~

一言で感想を述べるなら、

本当に救いようがない。

そんな映画だった。作品自体が面白くなかったとかではないが、気持ちよさが全くない。観終えた後のもやっと感がものすごい。事前にこういう映画だと知人に聞いていたから、メンタル正常の時に観たが、元気がない時に観ていたら少し沈んでいたかもしれない。

あらすじはこう。

大工の初老おじいさんダニエルが心臓病で医者から労働を止められ、国から援助を受けようとするも複雑な制度や手続きに苦戦。役所でシングルマザーのケイティと出会い家族との交流を深めていくが、お互いに貧困を初めとする厳しい現実に苦しめられる。結末も救いようがないの一言。

ダニエルが国からの援助申請のため訪れた役所でひどい仕打ちを受ける。職員は機械的で不親切、柔軟な対応をしてもらえず、手続き方法などの関係で対面でのやり取りで対応してもらえない(作中では職員が悪い風に描かれているがそんなことはない。ネットで申請するものはそうしてもらう、期限がきた申請については受け付けない、など当然の対応ではある。)。

お爺さんとはいえ、ITリテラシーがないと生活する上で必要なサービスや福祉を享受できなかったのが厳しかった。

これは現在の自分にも当てはまる。今当たり前になっているインフラや技術に関する知識を知らないせいで今後の日常生活に支障をきたすかもしれない。例えば、もうじき現金で支払いできないお店が出てきてキャッシュレスが活用できないと生活が不便になるかもしれない。ITサラリーマンの私だが、まだIT知識に精通しているとは言えず、そのせいで近い将来何か不自由になるかもしれない。

こういう流行や今後メインストリームになりうる知識については多少知っておく必要があると改めて感じた。少なくとも抵抗がないように準備はしておきたい。

シングルマザーのケイティも、貧困に苦しめられる。二人の子供にご飯を食べさせるために自分は食事をとれない。食事以外の物(衛生用品など)が買えずに万引きしてしまう。最終的には売春するしかない状況にまでなってしまう。この状況を救えない制度自体に問題はなかったのか。少しの遅刻で手当の申請ができなかったためだが、そうまでして役所は規律を守るべきものなのか。特定の何か悪いということはなく、本当に難しい問題だと思った。誰も責められない。

ただ一つ言えることは、国家・社会・福祉・役所などは特定の個人だけを相手にしているのではなく、大勢の人々を相手にしている。そのためには仕組みが必要だし善意ばかりで行動していたらシステムが破綻してしまう。

そのような大衆を支える仕組みに頼りすぎるのは良くない。それはギリギリのセーフティネットであって、ないものと捉えておいた方がよい。

基本的には何が起きても自立して生活を成立させられるように、稼ぎ、備え、知識を養っておく必要がある。

すごく悲しい映画だった。でもみんなに観てほしい。本当に。救いようがなく、今の生活が平和に安全に送れていることに感謝し、同時に将来への危機感も抱かせてくれる。

終わり。

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