日本と韓国の適切な関係とは

はじめに


 私は韓国という国がとても好きである。大好きな友人もいるし、大好きなドラマや大好きなインスタントラーメンもある。コロナウイルスが終息したら真っ先に訪れてみたい国の一つである。しかし現在の日韓関係は決して良好とはいえない。今までは政府間での対立が目立っていたが、韓国の市民が日本の企業を提訴したり、日本人女性が韓国で暴行を受けるなど民間レベルでの対立や憎悪がみられるようになってきているのである。国際政治の世界では近隣国同士は不仲であるというような言説をよく耳にするが、やはり互いの文化交流が停滞してしまうのはお互いにとってはマイナスである。私は常日頃から国家を批判するときには国民と政府を明確に区別すべきであると主張し、自らもそうしてきたつもりである。その理由は「韓国は○○だ」と批判するのと「韓国政府は○○だ」と批判するのとでは受け手の感じ方に大きな差があり、その時点でお互いが歩み寄り冷静な議論をすることができないと考えるからである。よって今回は日韓政府が今後海を挟んだ隣接国としてどのような関係を構築し、付き合い続けていくべきかを考察していく。ここで重要なのが国民レベルではなくあくまで政府レベルの話であるという点である。そのためにまずは近現代の日韓関係を確認し、互いの国の性質などにも注目する中で具体的には徴用工問題の政府間での解決策を検証する。

徴用工問題


 まず初めに現状の互いの主張を確認しておくと、徴用工への補償や請求権に関して韓国政府は「個人の請求権は存在しており、徴用工は日帝により強制連行され、日本人の働きたくない鉱山などで12時間もの長時間労働をさせられ、あげくには給料の多くを搾取され韓国へ送金することも叶わなかった。」と主張している。対して日本はそれらの補償は「日韓請求権協定で解決済み」であるという立場をとっている。ではまず徴用工とされる人々の実態についてみていこうと思う。
 大東亜戦争において朝鮮からは主に三種類の方法で労働者が日本へやってきた。それは「募集」「官斡旋」「徴用」であった。「募集」と「官斡旋」についてはその文字から分かる通り、日本が強制したものではなく、朝鮮人が自ら志願し日本へ渡ってきた人々である。そして最後に比較的短期間である八か月間のみ法律に基づき実施された強制的な「徴用」が行われた。その数は推定で10万人以下であったと推定されている。徴用を拒否すれば懲役刑もしくは罰金刑に処せられた。多くが農村出身の者であったために、当時若い日本人男性は戦場に連れ出されていたために鉱山などでの働き手が不足していたためはじめはそこに配属されるもその多くがその怖さから逃亡していったといわれている。そのため全体的に朝鮮人労務動員を見れば基本的には自発的であり、鉱山で働いたのはごく一部で強制連行も全体の中でもごく一部の人々のみが当てはまるという。
 韓国では朝鮮人労働者は「強制労働」「奴隷労働」を日本でさせられたと主張する。強制連行説を初めて主張した朴慶植氏は多くは1日12時間労働させられ、給料は現金で支給されずに強制貯金させられ、祖国への送金もままならずに一人で暮らすのも大変な水準であったという。さらに「日帝強占下強制動員被害真相究明委員会」の委員長を務めた全基浩教授は「民族的賃金差別」が存在し、「鞭と暴力」と「監禁」により自由と自立を奪われ監獄的で奴隷的に処遇されていたと主張した。しかし一方でそれらを全否定するような主張も存在する。前者らの主張は歪曲を超えた捏造であると主張し事実は以下の通りであったという。賃金は基本的には正常に支給されたうえに、強制貯蓄は日本人に対しても同様に課せられたものであり、そこに民族差別は存在しなかった。そして二年間の契約期間が終わると利子とともに貯蓄を引き出すことが可能で朝鮮への送金も可能であった。賃金は基本的には成果給であり、もちろん経験の劣る朝鮮人の生産性が低く、比較的に低賃金であったという者もいたが、一方で熱心に働き日本人以上に稼いだ者もいたとされている。暴力に関しては完全になかったとは判断できかねる点があるがその点に関しては日本人も同様であったとされている。さらに生活は自由度の高いものであり、一晩中遊び明かしたり、特別慰安所に行くことができたりした者もいたとされる。そのような様子からは監獄的拘束、奴隷的拘束が行われている様子は見えてこない。
 日本に対して韓国民が要求していることは労務者、軍人、軍属、慰安婦としての動員による被害への賠償または補償である。しかし今まで日本が一切韓国政府に対して戦後賠償をしてこなかったわけではない。日本は日韓請求権協定に基づき、韓国に支払いをしている。それに基づいて韓国側が補償する人の申請を受け付けて証拠に基づき補償金を支給した。日本政府としては個人に直接補償するのが困難であったために韓国政府に国民の代表として支払いをしたというわけである。しかし韓国で実際に支給された人は死者のみであり、生存者には支給されなかったという。そのため生存者の民間人としては戦後に日本人からの補償を受けてないと主張していて、日本政府側からは生存者も含めて補償したつもりであると主張しているというわけである。そのなかで韓国の一部の識者といわれる者たちが事実とは異なる捏造を発信し、教科書等でもそれが取り上げられ子供たちに教育されているという。問題解決の一歩は互いの食い違いを理解することであると考える。

おわりに


 ここまで徴用工問題について問題を概観してきた。これらの資料や証言は時間が経つに連れてその信憑性が低くなるので、一日も早い解決が求められる。また日本にとっても不利な現状がある。実際になかった強制連行や賃金格差などを証明することが難しい点である。あることを証明するには証拠を示せば十分であるが、証拠のないものを証明しようとすることは悪魔の証明と呼ばれ、極めて困難である。それらの情報を信じて感情的になっている韓国の人々に対して日本がこれからとるべきアプローチはどのようなものであろうか。国際政治の場はアナーキーな空間であるから結局は国力がものをいう実力主義の世界である。そこで重要なのは韓国とのこれまで以上の友好関係かそれともその他の国々との信頼関係かの選択であると考える。多くの資料が示すように私は日本が朝鮮の人々に対して私的な強制連行(拉致)による奴隷的な労働の強制はなかったと考えている。さらに日本側としては生存者を含めた戦争被害者に対する補償を韓国政府を代表者として渡しているため、韓国内で生存者に金を配らなかったことに対する不満を日本に対してぶつけるのはお門違いも甚だしいと感じる。韓国にとって日本が友好国となるのは日本がそれらの非を認めて謝罪したときであろう。しかしそうすれば今度は韓国以外の国からの信頼を失うことになる。対立を解消するためにお金を渡して謝ればいいという主張がしばしば聞かれるが、それらの主張はマクロのグローバルな視点を欠いていると感じる。より他国との信頼関係に重きを置いて意識しながら交渉を進める必要がある。以上を踏まえて私が考えるこの課題の解決法は証拠に基づいた反論と韓国への証拠の提供の要求、さらにこの課題に対して全力で臨むという本気度であろう。昨年のホワイト国除外である程度の韓国への本気度のアピールはできたと考える。今後は国内向けに問題に関する説明を行い国民の理解を深めることが重要であると考える。

参考文献
李栄薫ら (2019)『反日種族主義 日韓危機の根源』、文芸春秋

以下文献内資料
日帝強占下強制動員被害真相究明委員会 (2006)『強制動員寄贈資料集』
朴慶植 (1965)『朝鮮人強制連行の記録』、未来社


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