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初の映画撮影に参加して/稲田凌(演出部・大学4年生)

あの、入江悠監督の自主映画に自分が参加できるとは……。
これが自分がスタッフとして決まった際に思った率直な感想です。
それまでの自分は映画の世界で生きていきたいと考えていながらも、特にこれといったアクションを起こすことなく、大学生活を過ごしていました。そして、自分で勝手に映画業界は門戸が狭く、自分のようなスキルも経験もない人間には縁がない世界なのだと決めつけいました。

そう考えていた自分がなぜ、入江監督のシュシュシュの娘のスタッフ募集のツイートを見て、応募することになったのか。これは、本当に気が付いたら体が動いていたとしか言いようがないのです。

入江監督の様な第一線で活躍されている映画監督の作品に、学生スタッフとして関わることができるという、またとない機会を逃すことはできないという思いと、自分は大学4年生という立場でしたので、これが学生時代に映画に関わることができる最後のチャンスだ、という思いが自分を突き動かしていました。

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志望動機には、この映画で自分の止まっていた人生を動かしたい、というような青臭い文章を書き連ねたと記憶していますが、入江監督との面接の後、演出部のスタッフとして迎え入れていただきました。

そしてスタッフに決まった私は、大学を休学することになります。この決断は、映画業界に本気で飛び込みたいという自分なりの決意と、撮影に全日程参加して入江監督から多くを吸収するんだという思いの表れであり、アクションを起こしてこなかった今までの自分との別れを意味していました。

そこからクランクインまでの時間は本当にあっという間で、リサーチやロケハン、ロケ地の掃除、小道具の制作など、初めて体験する映画制作に胸を躍らせる毎日でした。

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そして迎えたクランクイン当日。

私は早速カチンコという壁にぶつかります。カチンコがなかなか上手く画角に入らないのです。この壁は最終日まで自分の前に立ちはだかることになるのですが、撮影終わりで宿に帰るなり、共有スペースでカチンコの練習を行いました。カチカチカチカチと音を響かせ、片手で打てるようになるまで練習し、共に宿泊していたスタッフの皆さまには騒音でしかなかったと思いますが、あの時は必死だったので許していただきたいです。

撮影中は自分の不甲斐なさであったり、何も貢献していないのではないかという思いに苛まれ、気持ちよく眠りについた日は数えるほどしかありません。次の日を迎えるのが不安だった日もあります。 

しかし、そのように悩んでいた私に俳優部の橋野さんが、
「稲田がこの映画に参加しなくても、現場は明日も稼働する。でも、稲田が参加した完成品と参加しなかった完成品では全く違うものになっている。だから明日も現場に来い」
と言葉をかけてくださいました。私は現在も映像業界で働いていますが、辛い時や苦しい時にはこの言葉を思い出します。

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このように、何もスキルも無い自分が最終日まで完走できたのは暖かい俳優部・スタッフの皆さまに囲まれていたからに他ないのです。
そんな私がシュシュシュで得た大切な出会いの象徴である監督・仲間についてこの場を借りて手短に感謝の言葉を述べさせて頂きます。

◯入江悠監督
監督が自分に厳しく接して頂いたことは、本気で自分たち学生スタッフを映画の業界で生きていける様になって欲しいという愛からだと認識しています。入江監督のこれからも続いていく監督人生の中の1ページに自分がいるということが何よりも嬉しく、誇らしいです。また、入江監督の現場で働けることを夢見ております。本当にありがとうございました。

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◯冨高くん
冨高くんとの毎日のたわいもない会話が自分の原動力になっていました。冨高くんに出会えて本当によかったです。また、一緒に映画を作りましょう!

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◯コギトワークス宮司さん
自分たち学生スタッフのお兄さんの様な存在で、暖かくも厳しく見守っていただいたこと、愛のあるイジリを沢山頂いたことは一生の思い出になりました。またどこかの現場でご一緒できればと思います。

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◯装飾・小道具武富さん
武富さんとのウルトラマン談義が本当に楽しく、次はどの話題を話そうかと毎日考えていました。いつも明るく接していただいたことに感謝を申し上げます。

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◯スチール伊藤さん
自分の好きな映画のスチールを担当されていたことを知って、話しかけさせていただいた瞬間を今でも鮮明に覚えています。宮司さんとともに兄貴的存在の伊藤さんがいる安心感は自分にとって大きなものでした。

◯監督補佐宮本さん
右も左も分からない自分たちに、丁寧に現場での動きを教えていただきありがとうございました。ある経験は今でも自分に生きています。

長々と拙い文章を書き連ねてきましたが、まだまだ書きたいことが沢山あり、キリがないのでここまで閉めさせていただきたいと思います。自分が映像業界で生きていくんだという決意が固まったのも、全ては『シュシュシュの娘』があったからこそです。これから私は様々な作品に携わっていくと思いますが、自分の全てのルーツはシュシュシュです。これは一生自慢できることです。

ここまでご覧いただいた皆さま、本当にありがとうございました。『シュシュシュの娘』は沢山の人に支えられて完成した自分にとっても、この世情においても意味のある、大切な作品です。

コロナ禍で映画業界は今までにない苦境に立たされていますが、この現状に風穴を開けるべく製作された今作品が、多くの方の下に届くことを祈っております。是非劇場に足を運んでいただき、楽しんでいただけますと幸いです。

映画『シュシュシュの娘』
8月11日(水)先行プレミアム試写会
8月22日(土)全国ミニシアター公開


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