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根矢涼香『8月22日は茨城でシュシュシュ!』


早いものであと数日。 

8月21日より全国公開の、
映画『シュシュシュの娘』 

丹治紗枝子役の根矢涼香です。 


4:3のスタンダードサイズで撮られたこの映画。

ミニマムな可愛さと、真に迫る容赦のなさの両面を兼ね備えているのは、

この映画の魅力でもあります。 


物語の舞台となる福谷市の色濃い人物たちも、ロケ地に漂うなんともいえない(褒めています)空気感も、海田庄吾さんによる音楽も追い風となって、衝撃の展開からラストまで駆け抜けていく快感。。。

これは是非映画館で楽しんでいただきたいです!



この回では、映画本編のことからすこし離れて、わたしの地元と映画にまつわるの話をいくつかさせてください。

ちょうど先日、茨城でラジオ番組の収録があり、そのまま帰省してこのノートを綴っていました。

FMぱるるんの「シネマ倶楽部」という番組に、『シュシュシュの娘』の8月21日の公開に向けて、ゲストとして映画のことや活動を紹介させていただきました。本当にありがとうございました。

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11日のプレミアム試写会を瓜連のあまや座さんから観てくださっていた、パーソナリティのタポシさん、寺門さんのお二人とラジオの前にお会いし、『シュシュシュの娘』の感想を交えながら打ち合わせをしました。 



「実は根矢さんにお見せしたいものがあるんです。」 


そう言って、寺門さんがカバンから取り出したのは、“シネ・ポート”と書かれた古くて分厚い本。

茨城県屈指の“水戸映評会”という映画好きのメンバーが、自分たちで広告協賛などを集めて発行していた、今でいうフリーペーパーがまとめられたものでした。(物凄くつめこまれている!)1976年の創刊で、104号まで続き現在は休止中だそうです。

ちょうど私が開いたページには、茨城出身の柳町光男監督と深作欣二監督の特集で、当時の学生たちが地元での映画上映を成功させる会を開き、監督を迎えて講演&討論会をしている様子が書かれていました。

お手製のイラストやフォントにキュン。けれど内容は辛辣さも皮肉も交えた映画愛溢れる個人、個人、個人。自主の最強の形じゃないかコレ?と衝撃。映画に熱ければ、作る側だけではなく、観る側だって「自主」なのだよなと再確認しました。

簡単には人や情報にアクセスが叶わない当時だからこそ、今の便利な時代よりも自主的に、ものを掴み取る握力が強かったのかもしれないですね。

現在はそんな熱風の中で育った一人である寺門義典さんがその情熱を継いで、「310+1シネマプロジェクト」という団体を立ち上げ、再び水戸のまちなかでの映画体験を呼び起こそうと様々な映画イベントに携わっています。

映画が届く形も、応援する形も、
時代とともに変わってしまうけれど、

きっと都会だけではなくこの場所のように、
全国各地にちゃんと根を張っていて、
一人ひとりの想いが寄集まって火を絶やさずにおいてくれているのだろうなあと、
先日の試写会での光景を思い出してはひしひしと感じています。

自分の住んでいた地域にも、知らなかっただけで、かつてはこんなにも熱い映画文化が根付いていたのだと知ってとても嬉しくなりました。


同時に、自分が育った時代にはそんな熱で溢れていたほとんどの映画館が、なくなっていたことに堪らなくなりました。


私はその跡形も、しらない。



気になって、これまでどのくらいのシアターが地元にあったのだろうと調べてみました。

聞いたことがある名前から、全く知らない館名まで、想像を超える数の映画館が生まれ、姿を消していました。自分が訪れたことのある場所やお店が、かつての映画館の跡地だったりもしました。


わたしが茨城にいた学生の頃は、文化の面白いものや先端のものは都心でしか生まれ得ないものだと落胆していました。
映画といえばシネコンに行くか、TSUTAYAでレンタルをするか。交通の便も良くないので、どちらに行くにしても両親に車で連れて行ってもらう必要があります。
あとはテレビの映画チャンネルを観たりとか。

「体験」としての映画は、思えば少なかったと感じます。


唯一記憶にあるならば、幼いころに家族でたまにやっていた”映画館風”。

すべて1日のやることを終わらせて、リビングの机を全部どかして、横たわれるソファや枕を集めてきて、準備ができたのを確認してから部屋の電気を消して、皆で映画を観る。

決してスクリーンがあるわけでもなく、テレビ画面で映画をかけるただそれだけなんですが、家族が集まって同じことをして、同じものを共有できるというのがひたすらに、わくわくしたのを覚えています。(VHSでもジブリやミュージカル映画を観ました。)



今は、那珂市の瓜連 あまや座が、茨城県唯一のミニシアターです。

閉店したスーパー「あまや」の駐車場に建てられ、今年で4年目を迎えます。

先ほどのサイトを見ていたら、1955年以前に建てられ66年辺りに閉館した「瓜連座」という映画館の名前を見つけました。


あまや座支配人である大内靖さんには何度も何度もお世話になっており、3年前に自身の出演作2本(『少女邂逅』『ウルフなシッシー』)を上映していただいたときから、
毎年有難いことに「根矢涼香特集」として、作品の上映を組んでくださっています。
俳優にとって、こんなにも幸せなことはありません。

またすこし脱線していきますが、

今年の5月にホテルの宴会場に上映環境を設けて映画を上映する「ランチでシネマ」という企画に御誘いをいただきました。

映画業界から1つ踏み出し、ホテル・観光業界や、飲食業界、農業や畜産業を始めとする生産者さんと一緒にお客様を迎えて、それぞれが今届けられる「良いもの」を出し合いました。

無事にイベントは成功し、この状況下でなかったらご一緒する機会は中々得ることは無かったご縁も体験も多くありました。


上映後は、大内支配人と私とで、今のミニシアターの実情や、地域と文化のこれからについてをお話しました。


「こんなものが近くにあったのか」
「そういえば昔好きだったな」
と、少しでも知るきっかけの体験を作り、いつも来てほしいとは言わないから、ほんのたまにでも、「在る」ということを思い出してもらえたらと、願いを込めた1日でした。

開催側も、お客さん側も、戦いの孤独は自分だけではないこと、挑む時は誰しも一人だということが、この機会を通じて感じた勇気です。

この日が終わればそれぞれにまた自分の持つ仕事の日々に戻っていきました。ですが以前よりも、自分達とは違う場所でも同じように進もうとする人たちを「応援をしたい」という気持ちが格段に増えていきました。

人の手で作り、人のもとへ届けていく過程が、なんだかそれぞれに映画に似ていると感じたんです。

私たちの映画『シュシュシュの娘』も、
クラウドファンディングをはじめ本当にたくさんの方に、金銭面でも、気持ちの面でも、ご支援、ご声援をいただいてきました。

また、映画のポスターを張っていただいたり、チラシやを置かせていただいている、施設や飲食店さん、お店屋さんのご協力のおかげて、普段映画を観にくることが少ない方に、作品のタイトルを知ってもらえたり、興味を持ってもらえるきっかけが生まれています。


携わる業種は違っても、となりの文化を「応援」したいという気持ちの1つ1つが、心の栄養となる沢山の場所を築きあげている。

映画館が、レストランが、図書館が、ホテルが、勝手に建っているわけではないということ。

独りでに営業をしているのではないということ。

その場所にとどまり、いつ人が来てもいいようにとあたため続けている人が必ず居るということ。

そこにある文化を楽しんでくれるお客様が居てくれること。

時間をかけて人の手から手へと受け継がれた歴史があること。


家だって同じで、空けてしまえばやがて埃が漂い朽ちてしまう。

床を拭いて、光を入れて、空気を通して、誰かが生活の営みを絶やさずにおくからこそ安心して帰ることができる。 


それらは当然とされてしまうけれど、

その当たり前を続けていくというのはとても大変なことです。

毎日のめまぐるしさに埋もれ、見逃されてしまう営みを思い出してもらえるように、
光をあてられるように、

私たちは、「映画」を届けたい。



これから全国各地のミニシアターで上映が始まります。

自分の地元だけでなく、
これまでに訪れてきた映画館さん、
これから訪れていきたい劇場さん、
またその街で文化を支えている、沢山の沢山の人たちへの敬意をこめて、この中編は終わりとさせていただきます。

今日ここに在り続けてくれて、心からありがとうを伝えたいです。


そしてそんな劇場の1つ
茨城県 瓜連 あまや座で、
8月22日 10:50〜の回
上映後の舞台挨拶が決定しました。

映画を上映してもらえるだけではなく、人と人との距離でこんなにも色々な形で関わらせてもらえることに、感謝が絶えません。

お越しくださるお客様一人一人の応援の言葉に、いつも背中を押されています。

地方のミニシアターは、都市ほど交通の便が良くないということもあり、実際に見に来たいと思っていても中々来られない方や、時間と労力をかけて来てくださる方それぞれいらっしゃると思います。

すぐには駆けつけられないけれど応援の気持ちを送ってくださる方、
直接映画を観にシアターへ足を運んでくださる方がいて、私たちの映画は届いていきます。

気が滅入るようなニュースも続きます。
色々な事情で思うように動きにくい方もいらっしゃるかもしれません。

そんな中、少しでも、日常に隙間をあけて、
映画館の時間を一緒に楽しむ事ができたら、
そのお手伝いをする事ができたら幸いです。

どうかこれからも、あなたの街の映画館で
あなたの近くの文化を存分に、楽しんでください!


まずはわたしも。地元の「あまや座」で。
映画『シュシュシュの娘』と一緒に、お待ちしております!

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実際の建物の色はシンプルな黒色をしているけれど、田舎の町に現れた飛来物体みたいで初めて見たときは「モノリス!」とワクワクしたので、宇宙船みたいに色を付けました。


後編は「人」のお話をします。


根矢涼香

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