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【創作】真夏のまぼろし

こんばんは🌙
ごきげんいかがですか?

8月と言えば、夏休み。
夏休みの宿題。朝顔の観察。
スイカ。かき氷。プール。花火。怪談話。
いろいろイベントがあり過ぎて
夏休みってホント 忙しいですよね。

今日のお話は わたしが小2の夏休み
7つ下の弟が 産まれた日のお話です。

#挨拶文を楽しもう

***

☀この記事はクロサキナオさんの企画参加記事です☀
#クロサキナオの2024AugustApex
https://note.com/kurosakina0/n/nbe3250227e3e

***

祖母とわたし

セミが近くの木に停まって
シーシー鳴いている。
お盆も過ぎ、残暑となる夏の日。

小2のわたしは 涼しい朝のうちに
夏休みの宿題の 8月18日分を済ませ
朝顔の観察日記を書いていた。

わざわざ群馬県の自宅から
栃木県の祖母の家まで
朝顔を鉢ごと持参したのだ。


小2の夏休みは最初から最後まで
祖母の家で過ごすことが決まっていた。
臨月の母が 実家近くの病院で
お産をするため 帰省していたのだ。

予定日は 二日前。
三人目の出産ではあったが
陣痛が予定日にこなかったため
翌日には 母は入院していた。


だから今朝は 妹と
祖母と伯父と従兄の5人で
朝ごはんを食べた。
従兄の母(伯父の妻)は乳がんで
既に他界していた。

従兄は祖母を『母さん』と呼ぶ。
伯父の真似をしているのだ。
幼い頃に母親を亡くした従兄は
祖母に育てられた。
仕事のため ほとんど家にいない伯父より
ずっと長い時間一緒にいる祖母を
母として慕っていた。

祖母を独り占めされたような
悔しい気持ちを抱いていたのは
従兄には内緒だ。


「明日香ちゃん、午後にはパパ
来るって。そしたら妹ちゃんと一緒に
ママのお見舞いに行こうね。」

朝顔の観察日記を書き終えたわたしに
祖母が言った。
妹はお昼寝をしていた。

「わかった!」

辺りを見回すと 従兄がいない。

「あっちゃんはどこ?」

「あっちゃんはお友達と遊ぶって
外に行ったよ。」

従兄はいつの間にか 出かけていた。

「おばあちゃん、わたしもお外に
遊びに行ってきていい?
近くの公園のブランコ乗ってくる!」

「いいよ。帽子被って行きなさいね。」

帽子…持ってきたっけ?
持ってきた荷物の中をゴソゴソ漁ってみる。
持ってきたような…忘れたような…

あ。あった。妹の。
ちょっとちっちゃいけど…ま、いっか。

「おばあちゃん、行ってきまーす。」

「あー、明日香ちゃん、ちょっと待って。」

祖母が奥のキッチンから
小さなリュックを持って出てきた。

「あっちゃんのリュックだけど
ちょっと借りようね。
水筒と、おにぎり2個入ってるから
お腹空いたら食べてね。
あー、でも、2時にはパパが来るから
その頃までには帰ってくるんだよ。」

「わかった!行ってくる!」

祖母はとても子思い、孫思いの
人情厚い人だった。
優しくて 本当に大好きだった。

***

ゆうたくんとわたし

あの角を曲がれば公園だ。
最寄りの公園にはブランコとシーソー
それに屋根のあるベンチが2つ。
子どもが遊ぶには少し物足りない
質素な公園だった。

あ。誰かいる。。。

人見知りのわたしは恐る恐る
公園の敷地に入っていく。

男の子がたった独りで
シーソーの端に座っていた。

「君は誰?」

突然話しかけられて、少し緊張しながら

「さくらいあすか」

「あすかちゃんか。
ボクはほしのゆうた。3年生だよ。
あすかちゃんは?」

「2年生。」

「そっか1個下だね!
一緒に遊ぼうよ。
ボク、シーソーしたいんだけど
独りじゃダメなんだ。」

「いいよ。」

リュックをベンチに置いて
2人でシーソーに乗ったり
ブランコを思っきし漕いだりして
ゆうたくんとわたしは
しばらく遊んでいた。

ほしのゆうたくんは学校の近くの
大きな家に住んでるんだって。
庭では、白い大きな犬を飼ってて
『メリー』って言うんだ
って、教えてくれた。

「ボクは身体が弱くて
なかなかお外で遊べなかったんだ。
ねぇ、あすかちゃん、川に行ってみない?
ボク、ずっと川に行ってみたかったんだ。」

近くを【思川】という川が流れていた。
去年の夏休み、あっちゃんに
連れてってもらった記憶がある。

ゆうたくんの願いを
叶えてあげたくなったわたしは
水筒とおにぎりの入ったリュックを
再び背負って、ゆうたくんと2人
歩き出した。

冒険のはじまりだ!

思川までは少し歩かなければいけない。
大きな道こそないけれど
クルマが通るのは避けられない。

歩きながらたくさんお話をした。
弟がもうすぐ生まれること。
群馬県から来てること。
午後にはパパが来ること。

ゆうたくんもお話してくれた。
ゆうたくんにも弟がいること。
ママがとっても優しいこと。
小学校に上がってからずっと
入院してて学校には行けなかったこと。

「退院できたの?病気、治ったの?」

「まぁね。もう大丈夫だよ。」

ゆうたくんはそう言って
ニッコリと笑った。
その笑顔がまぶしすぎて
わたしは たぶん 恋をした。

「じゃぁさ、来年の夏休み
またおばあちゃんち来たら
一緒に遊ぼう!また川に行こう!」

「そうだね。ボクもまた
あすかちゃんと遊びたいな。」

ゆうたくんがそう言ったあと
目を輝かせて前方を見て
指さした。

思川だ。

水面が太陽の光を反射して
キラキラと揺れる。

「ついたね!」
「うん!」

サンダルを履いていたわたしは
そのまま川に突っ込んでいく。
川の冷たさが心地いい。

靴下を脱いだゆうたくんが
遅れて川に入ってきた。
素足でめっちゃ気持ちよさそう!

わたしたちはひとしきりはしゃいだ。
本当に楽しくって
時間が経つのを忘れそうだった。

はしゃぐ気持ちが一段落した頃
2人でおにぎりを食べた。

「おいしいねー!」

ゆうたくんと2人で食べたおにぎり。
塩結びにノリを巻いてるだけの
質素なおにぎりだったけど
たぶん、一生で一番美味しかったと思う。

たくさん歩いて喉が渇いたので
2人で水筒のお茶も飲む。

「こんなに楽しいの
生まれて初めてだよ。
ありがとう。あすかちゃん。」

「わたしも楽しい!
おばあちゃんち来て退屈だったけど
今日はホントに楽しい!
ゆうたくん、ありがとう。」

「でもね、あすかちゃん…」

ゆうたくんは寂しそうに言い出した。

「ボク、そろそろ行かなくっちゃ。」

「わたしも2時までに帰らなくっちゃ。」

わたしたちは名残惜しかったけれど
帰路につくことにした。
公園よりもかなり遠いところで
ゆうたくんは去って行った。
わたしは結構長い道のりをトボトボと
独り歩いて帰った。

***

赤ちゃんとわたし

「あすかちゃん、どこ行ってたの?
赤ちゃん生まれそうだって!
早く病院に行かなくっちゃ。
パパもお待ちかねだよ。」

そう言って祖母はわたしから
リュックを受け取った。

クルマで15分ほどのところに
母の入院している病院があった。
母の病室は3階だ。
1日ぶりに母に会える。
嬉しくて小走りになりながら
母の病室へと急いだ。

「あすかちゃーん。妹ちゃーん。
会いたかったー。いい子にしてた?
おばあちゃんの言うことちゃんと聞いてた?」

うんうん。と返事をしていると
父が病室に入ってきた。

「パパ、見た?」

「え?何を?」

「もう生まれたんだよw」

3人のビックリする顔をみた母は
1人で大笑い。

「陣痛がきたらいともあっさりと、ねw」

そう言って笑う母に、父は

「そうか!おつかれさまー」

と言って身体をさすっていた。
が、一刻も早く赤ちゃんをみたい
わたしと妹ちゃんは、
父の腕を引っ張った。

「わかったから」

と言いながら父が赤ちゃんの部屋に
つれて行ってくれる。

まだガラス越し。

するとあとから母がやってきて
赤ちゃんの部屋から
赤ちゃんを連れてきてくれた。
そして母の病室にそのままつれて行く。
ゆっくりと、家族のご対面だ。

「こんにちは、赤ちゃん。。。」

ギュッと握りしめた小さな小さな
奇跡みたいな指をツンツンすると
一瞬緩んでわたしの指を握りしめた。
フワッとあたたかな空気が流れる。
なんだか懐かしいようなホッとするような
そんな空気だ。
ギュっと握りしめる小さな指が
もう離さないよと言ってるかのような
小さな指とは思えないくらいの強さだった。

なぜかわたしはフッと
ゆうたくんを思い出したのだ。
どうしてなのかわからない。
ただ、ゆうたくんのあの笑顔が
脳裏から離れなかった。

***

ゆうたくんと弟くん

翌日は、朝から雨だった。
祖母が珍しくバタバタしている。
不思議に思ったあっちゃんが祖母に聞く。

「かあさん、今日はなんでそんな
忙しそうなんだよ?」

「星野さんトコで昼からお葬式なんだよ。
隣組だからね。お手伝いに行かなきゃ。」

「星野さんて?」

「小学校の近くの大きい家の。
あっちゃん、同級生の子いたでしょ。
なんて言ったっけ?」

「星野佑太?」

「そうだ。佑太くんだ。
あの子全然学校行ってなかったでしょ。
白血病で入院してたんだって。」

「うん、病気だって先生が言ってた。」

「そうそう。その、佑太くんが
一昨日亡くなったんだってよ。」


ゆうたくんて…
ゆうたくん?
わたし、昨日遊んだよ?
ゆうたくん、元気だったよ?
なくなったってなーに?
消えちゃったの?
………わたしは幽霊と川で遊んだの?


祖母にもあっちゃんにも言ってない。
パパにもママにも言えない。


弟くんはきっとゆうたくんなんだ。
わたしはそう思ってる。

前世ではやりたいこともできずに
我慢し続けたゆうたくんだから…
お姉ちゃんになるわたしを見に来たんだね。
一緒に遊んであげたわたしを
ゆうたくんは気に入ってくれたんだ。
だから、わたしは弟くんを大切にする。
誰よりも、、、



*あとがき*

今回も半分フィクション
半分ノンフィクションの
ややこしい作品を創作しました。

ゆうたくんは亡くなった後、魂となって
独りであの公園で遊んでいました。

恐らく、姉弟として約束されたわたしは
ゆうたくん(次期弟くん)を
見たり触ったりできる権利を与えられて
ゆうたくんの希望を叶える任務を
遂行しなければならなかったんですよね。
じゃないと、やり残したことがありすぎて
ゆうたくんは上手に輪廻転生できなかったんです。

無事、弟くんになることができたゆうたくん。
明日香の弟で満足でしょうか?
…満足してくれてるといいな…

***

☀この記事はクロサキナオさんの企画参加記事です☀
#クロサキナオの2024AugustApex
https://note.com/kurosakina0/n/nbe3250227e3e



長い物語を最後まで読んでいただき
本当にありがとうございます✨


わたしが物語を創作するのは
ナオさんのイベントだけです。
それ以外は創作意欲が全くわきません。
なにも思いつきません。

…どうしてだろう?www

#なんのはなしですか

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