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文学会の集まり

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【読書の記録】
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2023年によんだ小説

ぼくはあまり、いま世の中で話題になっている本や 本好きではない人まで読んでいる、 いわゆるブーム本というものを読まない。 そういう本を安易に手にするのは あまり本を読んでいない人みたいで格好わるい、 と思ってしまう。 でも、そうやって無駄に格好つけてみるのが じつは格好わるいのだけど。 そんなこだわりはさておき、 作家が売れたいと思って書いた本ではなく、 好きで書いたという匂いのする本に むしろひかれる。 こっちの方が、本の中からその作家らしいものが 出てきそうで、わくわ

さいきん読んだ本 酒井順子「ユーミンの罪」

酒井順子「ユーミンの罪」 講談社現代新書 2013年 【読書感想】 かつて日本にはニューミュージックという音楽ジャンルがありました。 90年代くらいまででしょうか? 今このジャンルの名前を聞きませんが、そのエッセンスはJ-POPSに消化吸収されたのか。で、ニューミュージックの大御所、トップに君臨していたのがユーミンこと松任谷由実さんでした。 過去形で言っていいのか迷うけど、むかしユーミンさんはとても面白い歌をたくさん書いていた。 (今の歌も面白いと思う人がいたらごめんなさ

2022年に読んだ本・4冊

去年(2022年)に読んだ本の感想を、いくつか書きとめます。 ふつう、こういう記事は年末に掲載するのでしょうが……。 昨年末は書こうと思いつかなかったので、このタイミングです。 もう1月もおわりじゃん。 4冊しか書いてませんが、読んだ本の数はもうちょっとありますよ~。 「1984」 ジョージ・オーウェル・作 高橋和久・訳 ハヤカワepi文庫 近現代文学における歴史的名著、でありながら未読だったので読んでみた。ビックブラザーが支配する全体主義の近未来社会。主人公のスミスは

限りなく透明に近い不自由 吉田修一『パークライフ』感想

『パークライフ』は2002年に発表された小説だ。 作者は吉田修一氏。 これからこの作品の感想を書くけど、ネタバレがある。でもその「バレ」の部分は、僕はこう読んだ、であってちっとも正解ではないかもしれない。1つの読み方だと思ってほしい。 まずは僕の小説観から。僕は小説には、主に2種類あると思っている。 1つ目は「人はどう生きるか」を問うもの。作品によっては、ちょっとイデオロギッシュだったりもする。もう1つはイデオロギッシュなにおいを遠ざけ、ページを開いている間にしか存在しな