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倒され、のこぎりで切られた木

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【詩】
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#夢日記

【詩】絶海の囚人

目醒めれば 絶海の囚人であった 樹々はなく 草もなく 屋根もない 荒れた岩肌だけの孤島に 置き去りにされていた 見上げれば 微動だにしない太陽 夜は来ず 月もなく星もない 空と海とが 青々とした口を開く 灼熱のいがみ合いに 延々と眼を焼いた 千万年と続く青と青との争いに 放り込まれる刑罰なのか 両手で顔を覆い 岩肌に縮こまっても 目裏に押し付けられるのは 真青なる焼鏝 聞き覚えのない声が 番号を発し それが僕のことのようだと 目を開けば 絶海を背にして 真っ白なキャンバ

【詩】油屋のリンは「いつかここを必ず出てやる」とお気に入りの少女と彼女自身に誓ったけれど、茫洋とけぶる水平線は彼女の決意に応えるように一条の光を返した、ような気がした。『千と千尋の神隠し』

「宵」 ここで働かせて下さいなんて、言った覚えはないのだけれど どういう訳か、籠の鳥 西の水平線に茜色の刃がさしこんで、さあ身繕い お酌女でご奉公のボクなのだ 「たんとたんと布団を巻いて寸胴女におなりなさい」 やせた肋に着肉を巻かれ、サナダ紐でふん縛られる 衣装方専門の姐さんは、ここで二十年の飼い殺し 自分じゃこんな代物着たことない 緞子の打ち掛け 俎板帯 立兵庫には櫛笄 たんとたんと布団に巻かれ、鈍感女におなりなさい 姐さん昔は、鳥のさえずり真似るのが得意だったら