【ショートショート】水蜜桃、食べた
若いというには相応しくない年齢を迎えようとして、それでもなお若者は充分に美しかった。
おのれがその年齢に差しかかっていることを、若者はよく弁えていた。
しかし美しく生まれついたことには、全く以って無頓着であった。
むしろおのれを醜いとすら、思い込んでいた。
乙女らが彼の顔を桃の花にたとえても、奇妙な戯れ事にしか聞こえなかった。思わせぶりな目つきで物陰に誘われると、気味の悪さに走って逃げた。
物心ついた時から、男ばかりを視ていた。
屋敷の高窓から、下衆の者たちが両肌を脱ぎあせ