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独り言が増えている

歳を重ねるごとに独り言が増えている。

自分で言うのもなんだが、学生時代の私は静かそのものであった。基本的に無口で会話も最低限しかしなかったし、そもそも意図的に存在感を消していたくらいまったく音を発しなかった。自分の特技はステルスだと本気で思っていた。

そんな私も今は、パソコン画面を睨みながら「あ~しまったな〜」とか「いや〜これ間に合うかな〜」とか呟いている。仕草も年々大げさになっている。大きくため息を吐いたり、天を仰いでみたり。眉間にシワを寄せていることもあるだろう。

自覚はある。わざとやっているというよりは、パフォーマンスが入っている。「しまったな〜」と発するのは、周囲に「何がしまったんだろう」と思わせる効果があるし、もしかすると一人くらい「え、どうしたの」と聞いてくるかもしれない。それを期待してやっているわけではないが、独り言が何かしらの磁場を生み出すことは間違いない。

子どもの頃は自意識が高かったので、ひとりでブツブツ呟くことそのものが恥ずかしかった。恥ずかしいというよりは、はしたないくらいに思っていたかもしれない。今となっては、恥もへったくれもない。ガンガン呟いているし、むしろ聴かせているほどである。そもそも大人というのは、独り言を使うものなのだ。独り言を使いこなせるようになって初めて大人だ、みたいな。

あとこれは完全に個人的なものだが、「無口キャラ」に憧れを持っていたというのもある。知る人ぞ知る名作ゲーム、『風来のシレン』というRPGがあるのだが、幼い頃にこのゲームにどハマリした。

このゲームの主人公(シレン)が極度の無口という設定であったため、子供心に「カッコイイ」と思ってしまった。多くを語らずに黙々と為すべきことをやる。「これだ…!」と思ったかどうかは定かではないが、ベラベラ喋るのはかっこ悪いという感覚はここで植え付けられた。

今だって、黙々とこなす方がかっこいいとは思っている。だけどここまで生きてきて、自分の性格的に「クール」なキャラは演じきれないことがわかった。クールどころか、ちょっととぼけたことを言って突っ込まれることのほうが多い。どこでどう間違えたのか。

歳とともに、変なプライドを捨てるのは上手くなった。こう思われたらどうしようとか、笑われるのが嫌だとか、あまり感じなくなってきた。思ったことを口にするし、自分を下げてでも笑わせるくらいの気持ちでいる。もちろん度が過ぎると今度は無神経な奴になるので、そこは適度を保って。

堂々と独り言が言える今の自分を誇ってみたものの、ふと気になって「独り言が多い人 特徴」で検索をかけてみた。すると、ストレスが多いだの、精神的に不安定だの、なんだか不穏な感じ。そっと閉じて見なかったことにする。現在こうして週二でnoteを書いているのも、盛大な独り言かもしれない。そうだとすれば、独り言に過ぎる。

「ストレス、溜まってるのかなあ。」

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