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むずかしいことをやさしく/400字エッセイ

むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでもゆかいに。作家・井上ひさしの言葉である。

最後まで徹底できれば言うことはないが、まずもって難しいことを易しくというのは、文章表現、ひいては他者に伝えることにおける基本のキだろう。

私が見てきた中で最もわかりやすい伝え方をしていた人は、とにかく言い換えのバリエーションが多かった。最初の説明で相手が理解できていないとみるや、「じゃあこう考えましょう」とか、注釈を加えるとか、あらゆるテクニックで伝えることに腐心していた。わからない人を放っておけないのだ。易しくできるのは、優しかったからなのかもしれない。

難しいことを難しいまま理解できる人は確かに一流だが、そういう人が易しく伝えられるかは別の話だ。難しいことを易しく変換できる人こそが、超一流なのである。

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