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月刊 編プロのケーハク

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シュッパン前夜メンバー、編プロのケーハクの記事まとめ。出版界のあるある、新人ライター&編集者向けのスキル解説、出版界の問題や課題について。
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#編集者の仕事

発信者目線で「面白いだろう」と捻り出した本は売れず、こんな本が「必要だよね?」とユーザー目線でふんわり生まれた本ほど売れる問題

今宵、本の深みへ。 編プロのケーハクです。 主に実用のジャンルですが、これまでたくさんの本を企画したり、つくったりしてきました。 出版社からのオーダーを受け、企画立案から制作までマルっと一式請け負うわけですが、最近は「とにかくヒットする本をよろしく!」的な恐るべき依頼が増えてきました……。 特にはじめて取引をする出版社の場合は期待が大いに膨らんでいるようで、「すでに成功する気満々」で依頼してくることがほとんど。 こちらも継続的な受注がかかっているため、失敗が許されない

出版編集の「売れる感覚が狂い始めている」問題

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 本が売れなくなってきた……! もう何十年も言われてきたことです。 とはいえ、「正直、そこそこ売れてたし」などと、こっそり他人事っぽく思っていた編集者も少なからずいたと思います。 重版に恵まれた幸せな編集者たちが……。 実際、出版社所属の編集者の多くは、年間の新刊ノルマ●冊をリリースするわけで、一冊も当たらないということは、あまり見かけたことがありません。まあ、たしかにハズレも多いということで、担当本がヒットしてもあまり吹聴せず、

出版社の「冒険しない」問題

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 今回は、本の顔「カバーデザイン」の話です。シュッパン前夜chでも、ブックデザイナーの鈴木大輔さんをゲストに、いろいろと意見を交わしたのですが、その中で意気投合した話題が「出版社は冒険を避けがち」ということでした。 私のような編プロの編集者や、デザイナーさんは、提案するけれど、決定権がありません。カバーデザインは、最終的に出版社の意向で決まっていくのが普通です。 で、我々のような作り手側としては、ライバルである類書に勝ちたいし、面

「タイパの時代」の本づくりは、高難度のつくり込みが必要になっていく!?

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 “タイパ”とは、“タイムパフォーマンス”のことらしいです。 最近、よく聞きませんか? 「映画を2倍速で観る」とか、「音楽はサビから始まらないとヒットしない」とか。 全般的に人々の情報処理がめっちゃ速い!? SNS、動画配信、音楽配信、ゲーム、その他の趣味etc. ここ数年で気付かぬうちに個人で楽しめる多様なコンテンツが激増していたわけです。 つまり、やることがたくさん! 仕事だけでなく、自由に使える可処分時間も熾烈なタイムマネ