第1回:はじまり編:2022年3月

息子の妻は台湾人である。本名は日本では使わない難しい字だし、名前の読み方も、聞いても頭に入らない。日本語の近い音によって彼女のことはQちゃん(きゅうちゃん)と呼んでいる。


私たち夫婦は二人暮らし。一人息子は隣の区に一人暮らししていた。月に1,2回ほどこちらに帰ってくる。夜帰って来て、翌日は夕方まで寝ており、ご飯食べて風呂に入って自分の家に帰るというのがだいたいのパターンである。


2022年3月のある日、我が家に来た息子に言われた。「彼女と20日、食事をしよう。」


「あれ、お前、彼女いたのか」。夫婦で大拍手である。それはよかった。息子の一人暮らしの家に行ってもまったく女っ気を感じなかったので、寂しい夜を過ごしているんじゃあるまいなと思っていたのだった。
息子が続けていわく、「台湾人、俺の2歳下の28歳」。
こちらは「あ、そうなのか」と言っただけ。息子が選んだ相手なんだからそれでよし。
台湾人ねえ。そう言えば中国語(台湾で使う繁体字)勉強してたしなあ。台湾料理も好きそうだったし、台湾にも旅行したし。台湾が先かQちゃんが先か、どっちだろ。


どうやって知り合ったのか聞くと、ネットで中国語と日本語を教え合うというマッチングがあって、そこで知り合ったとのこと。最初は遠隔の画面越し。しかも2人の共通言語である英語でばっかり話してたんだそうな。そのうち、息子から「メシを食いにいきませんか」と誘って付き合い開始。


その台湾の子の写真を見せろと息子に言う。息子はスマホに入っている写真を選び選び何枚か見せてくれた。壁の前に立っている写真とか、浴衣を着ている写真とか。なんと言えばいいのか、私には顔がよく分からなかった。「こういう顔」って特定できなかったのだ。息子にそう言うと「うん、毎日顔が違うから」とのこと。


20日に会うのが楽しみ。会食の場所は銀座の台湾料理店、鼎泰豊(ディンタイフォン)。この日に納車される息子の新車Mazda CX-30で我が家に迎えに来てくれるという。


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