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Unity 1週間ゲームジャム お題「つたえる」に参加した話

今回もUnity1週間ゲームジャム(以下u1w)に参加しました!
今回作ったゲームはこちら。

ハンマーで荷物と一緒に気持ちを伝える、物理演算アクションです。今回ドット絵イラストレーターの鈍器さんと共同制作しました!

これまでの共同制作では親交のあったゲーム制作者の方と組んできましたが、鈍器さんとは初対面での制作となりました。チームを組んだ経緯や制作の進め方について参考になることを書ければと思います。

共同制作の経緯

今回のu1w開催前、ゲーム開発者コミュニティ「Unityゲーム開発者ギルド」にてメンバーであるMetaFormerさんからunity1week Team-Up!!(以下u1wTeamUp)という企画へのお誘いがありました。

端的に言うとu1wでイラストレーターとゲーム開発者が組んでなんか作ってみよう!という企画です。Metaさんが主催となり、イラストレーションとゲーム制作という分断されがちな界隈の架け橋となることを目指して立ち上げようとしているとのこと。
今回お声がけいただいたのはこの企画のテストモデルとして、エンジニア側での参加をしてもらえないかとのことでした。
個人的に企画について素晴らしいと感じ、お声がけくださったことにとてもうれしく思いつつも、コミュニケーション能力に不安のある自分がうまくやっていけるのだろうか……という気持ちもありました。とはいえ相手方も同じ気持ちではあるでしょうし、うまくいかなくても最悪数週間のお付き合い……ということで、参加することに決めました。

u1wTeamUpはどんな感じ?

u1wTeamUpの活動の場はDiscordです。

いくつかのパブリックチャンネルがあり、イラストレーターやエンジニアが自己紹介できる場やチーム結成所といった場も。
そのほか個人TIMESという少し変わった運用があり、これは各参加者がそれぞれ作成して自分用につぶやいたり、進捗を共有したりする専用のチャンネルです。

このように他の参加者が雑談に入ったり時には技術的なアドバイスもありますが、基本的には自分専用のつぶやき場としてTwitterのような運用をすることになります。(TIMESの作成は必須ではありません)
この仕組みはUnityゲーム開発者ギルドでも採用されていますが、自己紹介だけでは伝わらない人となりや作品作りの方向性なども見えて個人的にはとても良い!と思いました。
今回エンジニア勢はTIMES運用に慣れているのもあって活発に発言されていましたが、イラストレーター勢はなかなか参加がしづらかった様子。確かに自分も最初TIMES制度にはなかなか慣れなかった記憶……。何を書けばいいのか?とか、コミュニティの空気感みたいなものもありそうです。この辺りは人が増えていったときにうまいことできるとよいですね。

さて、今回は企画のテストモデルとして、あらかじめMetaさんからお声がけされたであろうイラストレーターの方とエンジニアの方が少数名すでにいらっしゃる状態でした。見学の方も何名かいましたが、おそらくこの中で組を作ることになるんだろうなという雰囲気。といってもMetaさんがチームを決めるという感じでもなく、これは積極的にアピールしてかなきゃいかんぞ……と感じました。
集まっているイラストレーターの方はどなたもレベルが高く、ご自身の作風をしっかり持っている印象。自分と組むことでその方の魅力を高められるだろうか?というのは考えたポイントです。
その中で鈍器さんのドット絵スタイルやかわいい雰囲気のアートは個人的にとても好きで、普段自分が作っている作風とも無理なく合わせられるのではないかと感じました。そういったわけで思い切って一緒に組んでみたい旨を書き込み。

やった~~~

こうしてチームも決まり、共同開発に向けての準備をすることになりました。

開発準備

今回鈍器さんとはお互い初対面だったため、事前に制作の流れの説明や雑談などでイメージの共有を図ることを意識しました。エンジニア側としてはスケジュールや必要そうな素材数、フォーマットなどをあらかじめ共有しておくのがスムーズかな、と思います。
また、やはりせっかくこのような機会をいただいたので普段自分ではできないようなアートを前面に押し出したゲームがよいのでは、と大まかな方向性もここで決めました。鈍器さんの固定ファンも多いため、あまりゲームジャムに触れない層にもリーチするような見た目に楽しい2Dアクションがよいだろうか……というあたりまではお題発表前になんとなく思っていたところです。

制作

お題発表後、さっそく打ち合わせすることに。今回鈍器さんはアート担当としての参加ですが、できれば一緒にゲームそのものを作っていきたいという気持ちからアイデア出しもご協力いただきました。「つたえる」というお題からキャラクターを活かす、という方向でいくつか考え、衝撃を伝える・情報を伝えるといった要素からキャラクターデザインの案を出していただきました。今回のハンマーっ娘の他にも魔女っ娘、ロボっ娘といった案があり、こちらも見てみたかった……!
最終的にハンマーで衝撃を伝えることをメインテーマとして、現在のキャラクターの原型を打ち合わせ中に描いていただくという超スピードでの進行。

めっちゃかわいい

この時点でゲーム性は決まりきっていなかったのですが、イメージイラストをもとにその日のうちに現在のゲーム性にすることを決めました。この辺りはイラスト先行でのゲームデザインという、u1wTeamUpならではの進め方で楽しかったです。

その後unityroom上にテスト用のプロジェクトを作成し、仮素材を当てはめて鈍器さんのほうでも動作確認をできるようにしたり。今回イラストレーター側はUnityを使うわけではないので、実際にゲーム上でどのように素材が使われるかを共有するのは重要に感じました。制作中の進捗共有はもちろん、手触りを見てアニメーションの修正を行ったりという作業も自然に行えるように思います。

素材が来るたびに超クオリティに喜んでいた
ゲーム画面を踏まえた必要素材の指定をしていたつもり…なのですが、今思うとだいぶぶん投げている気がする

また、普段のu1wではしょっちゅう遅刻していたのですが、今回は共同制作・しかも初対面の方ということでいつもより締め切りにはシビアに取り組むことができました。(と言っても3時間遅刻しているのですが……ゆるして……)

最終的に鈍器さんに描いてもらった素材は約20点、特にメインで使われるスマッシュアニメーションは1素材で18コマという脅威の作業量となりました。

あまりによすぎる

しかもその後のアップデートで必要な素材を追加で描き下ろしてもらえたり。クオリティもさることながらゲームをよりよくしたいというお気持ちに感謝の念が絶えません……!終始鈍器さんとは楽しく制作を続けられ、とてもありがたく思いました。

振り返り

総合的に、今回u1wTeamUpにお声がけいただき求められていた成果は出せたのではないかと思います!初対面のチームながらも当初の見積もりを大きく外すことなく、(ほぼ)期間内の完成に持って行けたというのは喜ばしい限りです。また鈍器さんのアートのおかげで普段ゲームジャムに触れない層まで届けられたのではという実感があり、企画の大きな目標であるイラストレーション界隈とゲーム開発界隈の架け橋という点でも一助となれたのではないかと思います。(普段自分のゲームではあまりない海外からの反応がいくつかあり、急遽英語ローカライズを入れるなどもしました)

一方で、鈍器さんの素晴らしい仕事に対し自分のゲームデザインが追い付いてない……と自省する点があり、この辺りは力不足を大いに感じました。追加のアップデートでいくつか改善を行ったのですが、やはり個人的にはもっと面白いものが作れたのでは、と反省しきり。次にこのような機会があれば相手の魅力に負けない良いものを作るぞ……!という気持ちです。

遊んだゲーム紹介

さて、振り返り記事ではいつも書いている他の方のu1wゲーム紹介です。「今回のu1wはクオリティが高い!」という感想をよく聞きましたが、自分も同じくうならされるような作品ばかりで驚きました。その中でも個人的なお気に入りを少しだけ紹介します。

E-999/Seaeeesさん

ドアの向こうの何者かと手紙のやり取りを行うアドベンチャーゲーム。

ゲームジャム内のみならず、大手ゲーム情報サイトや有名配信者にも取り上げられた話題作。驚くようなギミックを活かし、テーマの「つたえる」を見事に回収した素晴らしい作品です。アイデアはもちろんのこと、必要十分にまで削ぎ落したアート・サウンドの作り方が見事だと感じました。制作期間の限られたゲームジャムという場においてこれほど効果的に1つの作品を作り上げる技術にはほれぼれとしてしまいます。これまでのu1w全体を通してもトップクラスに印象に残る作品でした。

つ、たえる!/なさん 十年筆/tethさん

さまざまなフォントの「つ」を積み重ね、数を競う落ちもの(?)パズル。

u1w名物のお題曲解シリーズです。なかなか狙った通りにいかない物理演算の挙動、その上できっちり形がかみ合ったときの気持ちよさは独特の味わいがあります。タイポグラフィとしての「つ」のユニークさ、またフォントをテーマとしてその魅力を伝えてくる画面デザインなど、とてもセンスにあふれ美しいゲームだと思いました。あえてBGMを使っていないのもこだわりを感じられ、完成度の高さに驚愕です。

にゃんふろ/わにさん ねぎさん あるくさん

大衆浴場の温度を調整してお客さんを満足させるアクションゲーム。

ドット絵のキャラクターがかわいく、さりげなく水面や温度の表現が凝っていて絵作りがとてもよいです。効率的な温度調整のための位置取りなども考える必要があり、高い戦略性も楽しめました。特に好きなのがお客さんが入ってくるポイントに焼石を設置することでつぎつぎに「あ゛っづぅ」を誘発させられるところ。狙ったものなのかは不明ですが、こういった仕様によって起こるおもしろ事象がとてもいいなと感じました。

ノワ、これつくって!/うすい しおさん

AI(ChatGPT)を使った、レシピ検索(?)クイズゲーム。

ちょうどu1w時期に高性能なAIが話題となり、そのAPIを使用したゲームがいくつか投稿されていました。その中でもこちらの作品は3つのワードから狙った料理をAIに引き出させる、という少し変わったモチーフのもの。
絶妙にAIに伝えるワードのチョイスが悩ましく、「どうやったらわかりやすく伝えられるか?」「AIはどう推理するだろうか?」といった、AIに逆に思考を支配されているような感覚になりました。AIの回答も面白く、明らかに架空のめちゃくちゃな料理などが出されたりして笑ってしまう。AIを活用したゲームの中でも特に、身構えることなく気軽に楽しめる作品でした。

輝け吟遊詩人 -愛の調べ-/Hagi42さん

クリッカーゲームやタワーディフェンスのような強化要素を持つ音楽ゲーム。

お客さんからの反響をポイントとして消費し、さらに演奏を高めて完奏を目指すという内容。要素一つ一つは他のゲームで見かけるものの、その組み合わせが類を見ない斬新な遊びになっていると感じました。インタラクティブミュージックがきちんとゲーム内容を反映した必然性のある使い方になっていますし、パズル的な要素も適度に頭を使う気持ちいい難易度。コンパクトに1つの体験を与えるために計算されつくされたデザインだと思います。ドット絵調のアートも雰囲気を作っており、ゲームの核でもあるサウンドはなんと作者ご自身の作曲!どこを取ってもハイレベルで、非の打ちどころのない作品でした。

最後に

今回も自分の中で新しい試みにチャレンジできました!機会をいただいたMetaさん、素晴らしいアートを描いてくださった鈍器さんには心から感謝です。また、u1wTeamUpという企画も今後発展の可能性を大いに感じました。より制作の幅が広がったりクリエイターの交流が活発になるのではという期待がふくらみます。次回のu1wに向けてすでに参加の受付もされているようですので興味のある方はぜひチェックしてみてください!

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