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街で声かけてきた人が思い出せなかった時の話(思い出の神様ストーリー)

僕の名前は大森峻太。
外国人向けのツアー会社を経営していたり、観光庁や東京都のアドバイザーをやっていたりする。
これがnote初めての記事である。

年間5千人以上の前で講演

僕は2014年に外国人旅行者向けのサービスを展開しているビジネスを立ち上げた。
いろんな挑戦を続けていくうちにインバウンド(訪日外国人)の専門家としてメディアに取り上げられたり、講演会や研修などに呼ばれるようになった。

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今となってはメディアの取材を毎週のように受け、年間5000人以上の人が僕の話を聞きにきてくれるようになり、そして自分がつくったガイド向けサービスもガイドさんが数千人も登録してくれていたりする。最近は複数の大学の客員講師なんかもやっている。

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そうなると何が起きるかと言うと”知り合い”が多くなり、街でよく声をかけられる。自分が有名人だと言う話ではなく、ただ単に毎日新しい人と出会う人数が人より何十倍もあるわけだ。

よく街で「大森さん!」「大森先生!」などと声をかけられる。

あだ名は”思い出の神様”

僕は勉強ができなかったのに、人の顔を覚えることや小さい頃からの思い出に関する記憶力が突出しており、仲の良い友人の間では”思い出の神様”というあだ名がつけられているほどの記憶力の持ち主なので、大抵はすぐに思い出す。幼稚園の同級生が何が得意だったとか、小学校の遠足で誰が泣いたとか、小学校の時に行ったUSJで並んでいる時に前の人が何を話していたかとか、中学校の時に塾の帰りに誰といつ何を話していたかとかそういうのをすぐ思い出せる。
3歳くらいからの記憶はほとんどある。場所と人と出来事(音楽が流れていれば音楽も)がセットで記憶されているので、友人に当時の話を聞かれるとすぐに思い出せる。
※一方で人の名前を覚えるのは大の苦手で、毎日のように遊んでいる友人の名前もど忘れするレベル。記憶力にもいろいろあるのである。

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ただ、僕は1回数百人を相手に講演や講義などをしていたりするので、毎日「初めまして」の繰り返し。そうなると声をかけられても、僕は相手のことをすぐに思い出せなかったりする。

「大森さん!覚えてますか?」
と声をかけられて、「もちろんですよ!」と答えたら、
「え!すごい!この前の講演会で前から二番目に座ってたんです!」
とか言われることもある(いや、さすがにそれは思い出の神様でも思い出せない、、思い出になってないから。。)

ただ、一度話したことある方なら大抵はすぐに思い出す。

で、僕は声をかけられてすぐに思い出せないと、とある”魔法の言葉”を使う。

「おーーーお久しぶりです!あれ?最後に会ったのいつでしたっけ?」

これを言うと大抵の場合、相手は「〇〇ぶりですね!」とか「〇〇のイベントなので一年ぶりですね!」とか言ってくれるので、そこで脳をフル回転させて思い出す。大抵の場合はこれで思い出す。
経験値がありすぎて、びっくりするくらい自然に対応できる。

ただ、この前”とある事件”が起きた。

思い出の神様 VS 親しげに話しかけてくる女性

渋谷駅を歩いていたところ、肩を叩かれた。
振り向くと「あれ!なにやってるの?」と同い年(30歳)くらいの女性が声をかけてきた。僕は声をかけてきた人を一瞬で思い出すプロなので、声をかけられた瞬間(約1秒間)に「年代、性別、相手の話し方(親しい感じかどうか)」などを考慮して、どこで出会ったのか可能性を何十パターンも出す。

そこからいつもの質問をすることで、消去法で正解にたどり着く。

完全にプロの仕事。天才。

この日も一気に考え得る可能性を全て出し、魔法の言葉を使った。

「おーーーお久しぶりです!あれ?最後に会ったのいつでしたっけ?」

あなたの答えによって、一瞬で思い出す。冷静に答えを待つ。

「何言ってんのよ!」

僕の腕を軽く叩きながら女性は答えた。

、、、予想外の答えがきてしまった、、
焦るな。冷静に冷静に。
すかさず僕は自然な雰囲気でこう言い返した。

「あれ、でも意外と久しぶりですよね?」

「この前会ったばかりでしょ!」

笑いながら親しげに話しかけてくる女性。

やばい、、全く思い出せない、、ただ、年齢的にうちのサービスの会員さんな気がする。

「いや、でもあれ意外と日にち経ってるじゃないですか!日々飛び回っている僕にとってはあれはもう昔ですよ!てか、最近どうですか?」

自分の中の演技力をフルに活用したお陰でその女性は怪しむこともなく、普通に会話がスタートした。電車を待ちながら、その人の最近の仕事事情をひたすら聞く。

「えー、そうなんですね!」

ひたすらうなずく僕。

どれだけその人の話を聞いても、全くヒントが得られぬまま5分ほど経ってしまった。

やばい、、やばすぎる、、おれは相手に悟られずに相手を思い出すプロなのに、生まれて初めて全く思い出せない、、

さすがに僕も焦った顔をしてしまったのか、反応が悪かったのか、相手の女性が顔をまじまじと見てくる。

「田中くん、、だよね?」

田中くん?!誰や!おれは大森や!(僕の心の声)

「いえ、違います」

「あ、、すみませんでした!」

顔を真っ赤にした女性は駅のホームの反対側にオリンピック選手ばりに競歩して消えて行った。

気づいたら僕も顔が真っ赤になっていた。5分間も会話をして知ったかぶりをした相手が本当に知らない人というパターンは初めてだからだ。今頃あの女性は僕が知ったかぶって親しげに話してしまったことを思い出しているだろう。顔から火が出るほど恥ずかしかった。

よくわからないけど、僕もその女性と反対向きにホームを歩いて次の電車に乗った。

知り合いでもない2人がお互いに知った気になって5分も話し続けたシチュエーションを冷静に思い出すと、恥ずかしさよりも笑いが込み上げてきた。
1人なのに電車の中で笑いを堪えきれず10分以上ニヤニヤし続けた。

ふと我に帰り目の前を見ると、前の席に座っている人が怪訝そうな顔で僕の顔を見ていた。

そこにはずっと1人で笑いを堪えられずニヤニヤしている30歳の男、そう僕がいたのだ。相当気持ち悪いだろう。

恥ずかしくなり、特に用もないのにiPhoneを見つめた。

「この世には自分にそっくりな人が3人はいる」と言われている。

”田中さん”はどんな顔をしているのだろう。どんな雰囲気なのだろう。

そんなことを考えながら僕は次のアポに向かった。

久しぶりに知り合いに会う時の心遣い

僕は普段このように声をかけられるので、逆に「相手が自分のことを覚えているかな?」と不安な時は、

「お久しぶりです!覚えてないかもしれませんが、〇〇で会った時以来ですね!あの時は〇〇さんと一緒にいて、〇〇の話をさせて頂きました。」

という感じで前回会った時の詳細を挨拶の冒頭に入れて声をかけるようにしている。
そこまで言えば相手も自分のことを思い出すことがほとんどだし、思い出せなくても相手はどこであったかだけでもわかれば覚えている”フリ”ができる。

皆さんも覚えているか覚えていないかレベルの人に声をかける時には、ぜひ「どこで出会ったか」など詳細を最初に話してあげてほしい。

そうすればお互いに余計な探り合いを入れずに済む。

間違っても「覚えてます?」というクイズはやめたほうがいい。聞いた割に相手が覚えていない場合傷つく人が多い。

そういうわけで、今後僕に声をかけた時に

「おーーーお久しぶりです!あれ?最後に会ったのいつでしたっけ?」

と僕が言ったらその瞬間は思い出していない可能性が大なのだが、そこは優しく気づかないふりをして、わかりやすく詳細を教えて欲しい。

くだらないと思う人も多いと思うが、世の中にはくだらないことが多いのである。




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