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【感想note】グランピング施設 開業・運営 完全マニュアル

Dot Homesの留田さんより「グランピング施設 開業・運営 完全マニュアル」を頂きました。(Twitterで募集してたので自分から手を挙げました)
ぼくもキャンプ場運営という近いドメインで事業をしていることもあり、せっかくなので感想noteという形で「集客」「運営リスク」の2つのトピックについて自分の意見をまとめます。


集客について

利用者層

本書によるとグランピング利用者の6割が20代、30代までを入れると8割強という数字で若年層に支持されていることが分かります。また男性と女性の比率も3:7で、圧倒的に女性が多い結果でした。想像よりずっと多く衝撃的でした。

集客方法

ホテルの予約方法となると、楽天トラベルやじゃらんなどのOTAが一般的です(約8割)。一方、グランピングではOTAと自社サイトからの予約割合は半々とのこと。これは本書でも指摘されているようにグランピングに特化した予約サイトがないことが原因でしょう。
となると、施設の認知~予約までがUGCを活用したSNSでの集客が軸になるの想像に難くありません。ここまでは定石として多くの事業者も取り組んでいるのではないかと思います。

所感

問題なのはその後。メインの利用者が20代×女性となると、リピートを狙うのは厳しそうだなという印象です。若い世代ではリピートの動機となる確実に満足したいという欲求より、新しい経験をしたいという欲求の方が強いと考えられるためですそもそも宿泊業におけるリピートというのはとてもハードルが高い行動だと思います。世の中の大多数の人は同じところに何度も訪れるより、いろいろな土地・施設に訪れたいと考えるからです。

ちなみにキャンプ場でも近しい課題があります。それは「卒業」です。キャンプというアクティビティは6割がファミリー層です。特にお子さんが小学生の頃がピークで、中学進学に伴い部活や塾・思春期などの理由からキャンプに行かなくなる家庭がとても多いです。

両者の例より施設としてはどの層にどれだけ新規で来てもらい、どの層にはさらにリピートまで繋げるのかというポートフォリオ管理が重要だと言えます。キャンプ場ならお子さんの年齢をデータベースに保持しておき、小学生のお子さんを持つ家族に対して予約の優先案内を送付しリピートを促す一方、新規の利用者を必ず◯割は確保する。などです。グランピングの場合もUGCを生産してくれる層、リピートしてくれる層など自施設に合ったユーザー層をいち早く見つける必要がありそうです。

もう一つの対策としては多店舗展開があります。星野リゾートさんは自前で、Dot Homesさんはフランチャイズとしてこの手法を取っています。この場合、利用者のロイヤリティをブランドとして獲得することができれば「今度は別の施設にも泊まってみよう」と広告費ゼロで系列施設の利用を見込むことができます。

これから参入する場合は1施設で利益を上げ続けるのか、複数店舗開設し"面“で利益を出すのかのイメージは持っておいた方がいいでしょう。

運営リスクについて

外部要因
● 市場拡大による競争激化や供給過多
● 台風や洪水などの自然災害、雪や風などへの対応
● 施設の破損、メンテナンス
内部要因
● 
地方部での継続的な採用困難
● 人材教育ができず、サービスや料理提供の低下
● 顧客満足度とレビューが低く、集客ができない

グランピング施設 開業・運営 完全マニュアル

所感

本書で挙げられているリスクについて異論はないのですが、これって結構根深い問題なのでもうちょっと掘り下げたいです。例えば「人手不足」と「施設の破損」。直接は関係無さそうですが、経験上過度に人手が少ないと破損は増えます。

特にベルテントの場合風雨に弱い上に設営・撤収が大変なので台風の直前に撤収し、すぐに設営しお客様を迎えるというのは労力・時間的に厳しいです。金曜の夜から土曜の朝にかけて台風が抜けると、土曜の朝にスタッフ総出で設営作業が必要です。それは無理だと撤収を諦めると当然何かしら破損してやはりお客様に迷惑がかかります。

本書で挙げられているリスク要因は、個々に対応するものではなく施設・事業者としてどれをどこまで受け入れるか、対応する場合はどうやって備えるか(人・金・時間など)など自分たちのリソースに応じて戦略的に決めていく必要があります。資金に余裕があるのならテントではなくコテージやトレーラーハウスにするなどメンテナンス観点から設備にはなるべくお金を掛けることをお勧めします。

「供給過多」についてはここから数年で顕著になってくるのではないかと思っています。グランピングは本当にいろんな事業者が参入していて玉石混交な状態です。ホテル併設のグランピング場など、本業のプラスアルファとして参入した場合ですと、市況が悪化した際に露骨に値下げして市場価格が下落するといったケースに繋がりかねません。短期で資金が回収でき固定費が比較的少額という事業モデルだからこそできる戦法なのですが、これから参入する場合はそういった価格競争に巻き込まれないための戦略は不可欠だと思います。

本書を通して

もともとグランピングにはあまり興味がなかったのですが(笑)、実際のデータを確認することでずっとイメージが湧いてきました。利用者層も直腸があるので施設や部屋ごとにライフスタイルを提案することで、物販と絡めていくこともできそうです。

個人的には富裕層に特化したインバウンド向けのラグジュアリーなグランピングがやりたいですね、運営はめっちゃデジタル化されたやつ。

この1冊でグランピング事業を始められるかというとちょっと厳しいのですが、実際のPLも掲載されているのである程度知見のある方なら事業計画は引けるんじゃないかと思います。グランピングに限らず自然という要素が強い事業はケース・バイ・ケースの要素が多いためなかなか難しいですね。

グランピング施設をフランチャイズで広げていくというのはとても面白い取り組みですし、前述の通り系列施設の周遊が期待できる事業なので加入者側もメリットは大きいんじゃないかと思います。来年から続々と施設も増えるそうなのでDot Homesさんの動きは注目していきたいです。



CAMPWILLという会社でキャンプ場運営をやっています。


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