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日本の近代政治と政策起業家(前編)

元佐賀県武雄市長の樋渡啓祐さん主催の「政策起業塾」が始まったようです^^

樋渡さんは私が住む陸前高田市にも震災直後から多くのご支援をいただいているのでご縁を感じて嬉しく思います。
5月8日、5月15日に無料企画があるようですので、ご興味ある方はぜひご参加ください。
樋渡さんのバックグラウンドからだと思いますが、政治家の人々が登壇されます。こういう動きが各方面から起こっていくのが今の日本にとっては良いのだろうと思います。


政策を考える前提として外部環境の変化は非常に重要であり、相互作用によって必要な政策や政策の決まり方が変わってみます。
その中で現代日本においてなぜ政策起業家が重要なのかを理解するため、日本の近代政治史を概説していきたいと思います。

「日本の経済社会の発展に関して、明治時代以降、60年サイクルの構造的変化が生じているとする公文俊平の『近代化の三局面』」の要約をもとに書いていきたいと思います。

第一の局面は、19世紀末期から20世紀前半の明治・大正・昭和初期の時代に生じたものであり、すなわち『威』をコアとする軍事力を柱とした主権国家の流れであり、文明開化や富国強兵などの言葉に象徴される時代である」とされています。近代国家の形成に向け、「政策情報や政策過程も軍事力の統制の中で画一的に展開された時代」だと言えます。

 第二の局面は、「20世紀中頃、戦後から全体を通じて発生した『富』をコアとした産業化の流れであり、民主国家の形成と経済発展の重視に政策の視点が移行した時代」とされています。この時代の特徴は、「軍事力を背景にした画一化の時代から、経済成長による大量生産・大量流通・大量消費の中での経済の効率化を重視する画一化への移行」と言えます。
これらにより、「人間行動や組織に『標準化』と『階層化』を基本としつつ、『専門化』と『細分化』を進める構図」が強まりました。つまり、「上位下達を基本とする縦型ネットワークや官民を問わない官僚体質、ピラミッド組織を形成」することとなり、「情報格差が生まれることで、上位階層が持つ寡占的情報を下位階層にいかに分配するかで権力を形成し、維持する構造」が生まれました。このような中で情報を持っている官僚主導主義が日本の中では構築されていくこととなります。

官僚主導主義をもう少し詳しく見ていくと、「ある制度や政策を作るときに、中間組織と官僚が議論し、議員が承認をするという流れ」であり、中間組織とは「いわゆる国民と政策決定者の中間に存在して両者のコミュニケーションを円滑にする役割を果たす団体であり、労働組合や商工会のような団体を指した」とされています。
これは日本においては、「旧ロビー活動」を基本としていたとも捉えられます。「旧ロビー活動」は、「不公平」「不透明」「閉鎖的」「意思決定の場に一握りの人間しか関与できない」「マスコミを避ける」「公益性がない」「一企業の利益や便宜獲得を目的とする」「ロビー対象は政府、政治家」というイメージであり、日本でも同様の状況となり、1980年代に「官僚主導国家の限界が各方面から指摘されるようになった」とされています。

ロビーイングについてはこちらの記事をご参照ください。

さらに、1990年以降になると、中間組織の組織率(加入率)が下がっていきました。そうすると中間組織が意見を代表する機関ではなくなっていきます。これまでのプロセスのように決まったとしても世の中から異論が出ることにつながっていきました。
また世の中はインターネット時代が到来し、各方面から情報が入り、また発信できるようになったことも異論が多く生まれることの原因の一つと考えられます。
こうした中で政治の役割も変わってきます。
「経済が低成長となり、『利益の分配』から『負の利益の分配』に課題が変化した」と言われています。政治的課題の変化、政治家の意思決定の質の変化がこの後大きく影響してきます。

さて、日本の政治はこのような情勢の中、どのように変化していったのか、また公文俊平の『近代化の三局面』の第3の局面は何なのかについて、そしてなぜ現代政治に政策起業家が注目されるのかについて、書いていきたいと思います。

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参考

千正康裕(2021)『官邸は今日も間違える』新潮社

松永佳甫(2015)『公共経営学入門』大阪大学出版会

宮脇淳・若生幸也(2016)『地域を創る!「政策思考力」入門編』ぎょうせい

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これまでの政策起業家に関する記事はこちらから見ることができます。

また、政策起業家の行動原理など、海外の30年間の研究蓄積がまとまっている書籍の翻訳本の出版を行います。30年分の差を、この1冊で埋められるとは思っていませんが、少しでも日本で早く「政策起業」が拡がればという思いでいます。

また、2022年4月21日にABEMAニュースにて、書籍の紹介をしていただきました!12分にまとめっていて非常にわかりやすいのでよければぜひご覧ください。

最後までお読みいただきありがとうございます。
日本では「政策起業家」に関する研究が非常に遅れています。
研究を応援いただける場合には、
「サポート」していただけますと大変嬉しく思います。
サポート資金は全額、「博士後期課程」への進学資金にさせていただき、
更なる政策起業家研究に使わせていただければと思います。
どうぞよろしくお願いします。

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