春辣

94年3月生まれ、ずっとどこかに帰りたい。

春辣

94年3月生まれ、ずっとどこかに帰りたい。

最近の記事

闇雲ネットサーフィンと真夜中散歩

 突然、なにもできなくなるときがある。そうなるとわたしはベットに逃げ込んで、時間が解決してくれるまでネットサーフィンをしていた。そうして朝日が昇り始めたころ、ようやく動けるようになって、垢まみれのからだをシャワーを洗い流し、そっと眠りにつく。  闇雲なネットサーフィンで心が安らいだことはなかった。頭のごちゃごちゃを片付ける方法、正体不明の不安や焦燥感を癒す術はインターネットのどこにもなかった。本当はわかっている。抱えてしまった物事の優先順位が付けられず頭がパンクし、逃げてい

    • ホットケーキ

       集団は苦手だ。とある相談会に相談員として参加しながら、苦々しく思う。相談会の目的は相談業務よりは他業種との横の繋がりを作ることらしい。初回から参加しているにも関わらず、いつも誰とも交流することなく時間を潰しているわたしを、恐らく主催者はあまりよろしく思っていないだろう。特に今回新しく相談員として参加した同業者の村瀬さんは、参加していた他業種に知り合いがいたこともあり、ロビーで様々な参加者と話が弾んでいた。その姿は理想そのものだろう。一方のわたしはというと、今回も専門分野の相

      • Y談

         新年早々、懐かしい人からメッセージが届いた。その人は小学校3年生の頃、転校してまだ学校に馴染めなかった私を何かと気に掛けてくれた男の子の彼だった。自惚れの記憶でなければ、お互いに好意を寄せていたと思う。ところが翌年、今度は彼が転校してしまい、疎遠になってしまう。けれど、手紙のやり取りから、互いに携帯を持つようになってからは電話番号やメールアドレスを交換し、今日まで連絡手段が保たれていたのだった。  本来なら久しぶりの思い出の彼からの連絡に心が弾むはずなのに、何故だか嫌な予

        • 初詣

           三連休の最終日、いつも通り夕方ごろに布団から抜け出し、身支度もそこそこに、近所の神社へ初詣に向かった。Googleで確認した営業時間ギリギリでの到着となったが、境内にはまだ多くの参拝者がいて安心した。  神様には新年のご挨拶と、抱負をお伝えして、それから少しのお願いごとをした。  帰りにおみくじを引いた。おみくじを引くようになったのはあの人の影響だと思う。あまりよいくじを引いた手ごたえは感じなかったけれど、大吉だった。  どうか、今年は少しでも孤独が癒されますように。

        闇雲ネットサーフィンと真夜中散歩

          切傷

           きっと限界は当の昔にきていたと思う。以前より起き上がれない日が多くなっていった。まだ誰にも気づかれていないのは、テレワークによって出社しない日が増えたからだろう。  起き上がれない日は毛布に包まってじっとしている。身体は健康だろうけど、心がぱっと切り裂かれていて、そこからじわじわと血が溢れているのだ。だから、傷口が閉じるまでは安静にして耐えしのいでいる。  どんなにスマホをスクロールしても、私の欲している情報は出てこなかった。どんなにモノで囲んだって満たされることはなか

          憧れは憎しみに

           彼女から「あなたのことが大好き」と書かれた手紙を受け取った。これまでに何度も電話や手紙を受け取っているけれども、億劫で、何一つ返事を出せないでいた。彼女のことは大切な友人であり、憧れであった。けれども、私は彼女のことをひどく憎んでいる。  初めて彼女と出会ったとき、私は大学生であった。会ったこともない知り合いの恋人だった彼女と、その知り合いより先に会うという何とも奇妙な出会い方であった。そもそも、どうして会うことになったのかもさえいまは忘れてしまった。ともかく、初めて待ち

          憧れは憎しみに

          孤独で息の根が止まればいいのに

           土曜日は深い眠りにつく。昔から眠る時間は長かった。大人になれば治るかと思っていたけれど、寧ろ悪化して、寝たり起きたりを繰り返しながら、20時間は眠るようになっていた。そのため、目が覚めればすっかり夜、おひさまを見ることなく1日が過ぎ去ってしまうことは珍しくはなかった。また、そんなに眠るものだから、体は重く、頭は痛い。おまけに冷蔵庫には何もないため、けだるいからだをうごかし、仕方なく外に食べ物を買いに出かける。スーパーやコンビニで、食べたいものだけを手にする。お菓子やアイスも

          孤独で息の根が止まればいいのに

          きらめくパスタ

          kriくんへ  この間、お昼にエクセルシオールカフェでペスカトーレを頼んで、二階席の窓側で食べたのだけど、梅雨時にもかかわらず日差しが降り注いでいて、ペスカトーレがきらめいていたの。そんなきらめくパスタをみて、あなたと箱根を訪れた日のことを思い出したわ。確か、お昼にガラスの森美術館のテラス席でパスタを食べたよね。あのときも日差しが降り注いでいて、テーブルのパスタやフォーク、ガラスの破片をまとった木々といった何もかもがきらめいていて、かがやいていて、穏やかな時間が流れていたわ

          きらめくパスタ

          ドロドロの化粧

           深夜3時半、不快感で目が覚めた。部屋には2割引きだったチキンとアルコールの混ざり合った空気が漂い、化粧はドロドロに崩れ、頭が重かった。まだ明日も仕事があるのに、どうしようもない夜を過ごしてしまった。せめて今からでもこの不快を取り除こうと、食卓を片付け、空気を入れ替え、歯を磨く。あとは化粧を落とすだけとシャワー室へ向かおうとしたとき、彼女からの電話が鳴った。  最近、彼女からの電話の時間が夜から朝へとずれ込んでいた。私も比較的夜に活動している人間ではあるが、ここ最近の電話に

          ドロドロの化粧