躓きは減らせるのか?
歩行は加齢の影響を受ける。
高齢者は歩幅の短縮、股関節屈曲・伸展角度の減少、踵接地時の足背屈角度減少、踵離地時の足底屈角度の減少がある。
Toe clearance(TC)は立脚中期におけるつま先の最も低い高さと定義されている。
やはり転倒経験者は、非転倒経験者に比べ、TCが低下しているとの報告有。
しかし、障害物を跨ぐ際のTCは加齢の影響について統一した経験が得られていない。
遊脚期の下肢筋活動
平地歩行のTCは股・膝・足関節の複雑な相互作用でつくられる。
前遊脚期でフォアフットロッカーの作用により、脛骨が前方に移動し、底屈と膝屈曲が同時に起きる。
ほぼ同時に長内転筋の作用で股関節屈曲が生じる。この長内転筋の作用により受動的に膝屈曲が生じていく。
この運動は遊脚初期でも維持され、同時に縫工筋や腸骨筋、薄筋の作用で股関節が屈曲するのに伴い、膝が受動的に屈曲し、大腿二頭筋短頭も協同的に作用し、屈曲角度を増す。
その後、下腿部の重さを利用した振子用の動きにより、足部が前方に移動し、これがTCとなる。
TC確保のために前脛骨筋や長趾伸筋、長母趾伸筋が作用する。
なぜ高齢者は躓いて転ぶのか?
TC時に高齢者では意図的に足背屈を行っていることが示唆されている。
つまり、躓きやすい高齢者はTCが常に低下しているわけではなく、TCが高い歩行周期と低い歩行周期があり、TCが低い歩行周期に偶発的に躓きによる転倒をしていると考えられる。
TCのばらつきを軽減させるためには、
前遊脚期の下腿三頭筋や遊脚初期で作用する縫工筋や腸骨筋、薄筋、大腿二頭筋およびTCを確保するための前脛骨筋の筋活動の再現性が重要になる。
参考文献 歩行時のToe clearanceと足趾把持力について 相馬 正之
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