股関節が痛いのか、腰椎が痛いのか見極めろ
①可動域
それぞれの関節運動の最初に痛みが誘発される場合には、その関節に起因する痛みである可能性が高い。
痛みやこわばりにより正常可動域の半分以下に制限されている場合にはその関節の病理が疑われる。
②エンドフィール
股関節の他動運動にて骨性のエンドフィールによって制限されている運動方向があればそれは股関節の問題が示唆される。
他動運動がスパズムにより制限されている場合には、股関節と腰椎どちらに起因するスパズムかを判別するのは難しい。
③制限の方向
股関節の反対の動き、例えば屈曲・伸展で疼痛が再現されたときは股関節に原因を疑う。
鑑別運動の実際
立位での検査
①回旋
立位、あるいは患側片脚立位で上体を回旋させる。この時腰椎と股関節の両方が回旋する。その後他動で骨盤の回旋増加あるいは軽減を行う。骨盤の回旋を増加すると股関節の回旋はいっそう増加し、逆に骨盤の回旋を減少させると股関節の回旋が減少する。このとき腰椎は逆の影響が及ぶ。
つまり、骨盤の回旋を増加させたことにより疼痛が増加した際は股関節の問題が考えられる。
②側屈
骨盤を固定することにより運動を腰椎に限局できる。
腰椎の動きを最小限に支持し股関節の内外転を増強するように介助することで股関節に運動を限局できる。
③屈曲(しゃがみ込み)
腰椎を動かさないでしゃがみ込み動作をすることによって鼠径部痛が軽減すれば原因は腰椎にあり、痛みに変化がない場合には股関節に原因がある。
④伸展
体幹伸展に伴い、腰椎、股関節の伸展が生じる。この動作で一側の鼠径部痛が生じたとき、その側の股関節の荷重を除き、股関節の伸展を促した時の反応を見る。股関節のポジションにより症状が軽減すれば股関節の問題、なければ腰椎の問題である。
股関節の組み合わせ運動
屈曲ー外転ー外旋(Faber test)
この肢位でエンドフィールが骨性で、最終可動域での小さな振幅運動で鋭い痛みが生じた場合は股関節の問題が考えられる。
特に痛みが後ー外側にみられる場合は股関節の問題である場合が高い。
股関節の屈曲ー内転
股関節屈曲90°で内転動作を行い、大腿骨長軸方向に圧を加えながら弧を描くような運動を行う。
股関節に異常があると弧がうまく描けない。
この弧を描く運動に内旋動作を加え疼痛が増悪した場合、股関節に由来する場合が多い。
アクセサリー運動
股関節
①尾側方向への運動
股関節膝関節軽度屈曲位で長軸方向への軽い牽引。
②頭側方向への運動
長軸方向への圧迫。
③腹側方向への運動
股関節内外旋中間位。大転子の後面上に両側の母指の指先が向かい合うように置く。両母指の指腹を通して腹側方向への反復運動を行う。
④背側方向への運動
股関節内外旋中間位。大転子の前面上に両側の母指の指先が向かい合うように置く。両母指の指腹を通して背側方向への反復運動を行う。
⑤外側方向への運動
腰椎
①正中後前方向の運動
棘突起上をセラピストの豆状骨で圧迫する。
②一側後前方向の運動
棘突起より数センチ外側に両母指を置いて圧迫する。
③横断方向の運動
棘突起の外側面に両母指を置き、横断方向の圧を加える。
以上のアクセサリー運動で検査した場合、その影響は動かした関節に限局して現れる。
参考文献 股関節由来の痛みと腰椎由来の痛みの鑑別 斎藤 昭彦 理学療法学 1997
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