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百点満点の笑顔(SS;1,800文字/エレクトロニック・ショート・ショート・カタログ)

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「ねえ、最近の子供って、なんだか変なのよ」
 小学校教師を20年近くも務めている私が、ここ3,4年ずっと気になっていたこと ── 夫に話したのはたぶん、その夜が初めてだった。
「こら、廊下走っちゃダメでしょ、と叱ったり、今度の国語の試験、よく頑張ったねえ、と誉めたりするわよね? 子供って元来、表現が自然で豊かなはずじゃない? でも、叱られても誉められても、表情をあまり変えない子供が増えてきたのよ」
 だから以前のように、子供の顔色を見ながら話し方を微調整する教師のテクニックが使いにくくなってきたのだ。
 夫もうなずいた。
「ウチの会社でも、若い社員で無表情な奴が増えたなあ。部下の仕事に注文を付けても、大抵は、はあ、とか言ってほんのわずかにうなずくだけだ。反応が鈍いから、わかったのかわからんのか、一体何を考えているのか、さっぱりわからん」
「自然に表情を作ることができない人が増えているかもしれないわね。感情をあまり持たないから、表情を作れない、なんて人も中にはいるんでしょうけど、表情を作るのが苦手な人がほとんどだと思うわ。でも、そのために他人に誤解を与えやすい子が結構いるのよ」
「子供や学生のうちはまだいいが、社会人になるとそういった行き違いが大きな問題になる。実際、得意先で不幸があった時、いわゆる『お悔やみ顔』ができずに相手の不興をかった奴がいたよ」
 夫の言葉に、私に中でひらめくものがあった。
「ねえ、あなたの会社で、こんな商品作ってみたらどうかしら?」

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