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ぬ 『ヌガー』


ぬ。あいうえ大喜利の「超難関」だ。「ぬ」で始まる単語なんて、温水洋一とぬらりひょんぐらいしかないだろ!って思う。あとヌートバーとぬか漬け。野球ファンでも妖怪ファンでもない僕にとっては、特に語ることがない。

「ヌガー」はどうだろう。もっと語ることねーよ!と思われるかもしれないが、今挙げた中ではヌガーが一番何かありそうだったので見切り発車で書き始めてみる。ヌガーとは砂糖のねっちょりしたやつのことで、ヌガーとキャラメルの何が違うのかすら僕には分からない。分からないが、「スニッカーズ」-「チョコレート」-「ピーナッツ」=「ヌガー」としておこう。大体間違ってはいないはずだ。

この「チョコレートのかさ増し」としてのヌガーが僕は嫌いではない。いや、好きだ。中高生のころやたらスニッカーズが好きだった時期があった。当時倉敷市連島町連島っていうところに住んでいて、自宅は丘の上にあった。丘から下ったところに「スーパーいしはら」というのがあった。一つ学年が下のソフトボールチームのエース、石原君のお父さんが経営していた。ここで僕はときおり少年ジャンプを立ち読みし、小学校高学年ではおやつを買い、中学の部活帰りにカレーパンや肉まんを買い、高校の頃にここでH-Jungle with T の『Wow-War Tonight』を初めて聞いた。店内にこだまする「ヘイ!ヘイ!ヘイ!時には起こせよムーヴメント!」と叫ぶ浜ちゃんの声を聞きながら、スーパーいしはらで僕は何も変われそうにない自分に絶望していた。

そんな僕の心と胃袋を当時慰めてくれていたのがスニッカーズだった。「お腹が空いたらスニッカーズ♪」というCMソングが当時はよく流れていて、登山で遭難したときにバッグに入っていたら一番良いものの代表みたいなあの「カロリーのおばけ」みたいなぎっしり感が、食べても食べても身長が伸びるだけでまったく太らない、ブラックホール胃袋の中高生の僕には最高の食べものに思えた。

大人になってすっかりスニッカーズを食べなくなった。最後に食べたのがいつだったかもう思い出せない。下手をすると10年ぐらい食べてない恐れもある。もはや胃袋はブラックホールではなく、高カロリーは味方ではなく敵になった。あと、歯の健康に悪そうな要素がすべてそろっている。何一つ食べる理由がない。でも、スニッカーズってなんか「ロマン」がある。なんか、「馬鹿っぽい」のだ。良い意味で。「良い意味で馬鹿っぽいもの」が、僕は好きなのだ。

多分僕は「アメリカにある馬鹿っぽいもの」がすごーく好きだ。なんでそんな色にした!!!とか、なんでそんな大きさにした!!とか、そういうものがアメリカには溢れていて、そういう底抜けの明るさというか、てらいのなさというか、良い意味の馬鹿っぽさが、アメリカの最大の魅力だと思うのだ。「それを食べる意味とは?」とか、1ナノも考えたことがない人々によるコトやモノ、というか。芸人のマキタスポーツが『一億総ツッコミ時代』という書物を著している。今の時代、みんなが「ツッコミ目線」ゆえに世の中がつまらなくなっている。もっとみんな「ボケ」ようぜ!!!というのがその本の「超ウルトラざっくり要約」になる。

アメリカは「一億総ボケ社会」みたいなところがあって、それゆえに底抜けに明るい。スニッカーズという(アメリカの皆さん許してください)バカみたいな食べものも、そんなアメリカの象徴のように思えてならない。僕はスニッカーズとアメリカを愛している。ヌガー、フォーエバー。


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