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「制作会社」のAD vs 「TV局」のAD

 「テレビ番組の制作会社の倒産が加速している」…というニュースが流てきた。

2023年1-9月のテレビ番組制作会社の倒産は14件に達し、前年同期(6件)の2.3倍のペースで増加している。
業態では、特に旅番組やグルメ番組、街歩きなど、比較的少額予算の番組をメインに請け負う会社の倒産が散発している。

 う〜ん…。
 個人レベルで「@@ディレクターがバックレた!」というのはわりと聞くが、会社が倒産するという話はそれほど聞かないし、潰れているのはほんとに小さな会社なのだろう。
 【テレビマンユニオン】や【イースト】レベルの会社が潰れたってんならわりと大事件となるが…社長と数人の社員みたいな規模の会社が「14件も倒産」と言われてもな…という感じがする。


 で、このニュースを発端に、制作会社の悲惨な現状を解説しているのが以下の動画。

 MCを務めている(チャンネルを運営している)のは…

 『長谷川良品(長谷川大雲)』さんという…わりと有名(優秀)な放送作家の方。
 現在はYouTuberへと転身し、時事ニュースを斬りまくっているようで。
 プロフィール(概要)には

放送作家歴26年。大病をきっかけに50半ばでセミリタイア。 毎日をユーモラスにのんびり過ごしています 。マスゴミ、オワコンと揶揄されるテレビ界に未来はあるのか。テレビマンならではのテレビの裏読み…(略)

 と書かれたりしているが…。
 そんなベテラン作家さんが、動画の中で理路騒然と話をされている。


 ただ!!
 この動画の内容に1つだけ…個人的に「反論」を挙げるとすれば。
 【TV局の社員(AD)】と【制作会社の派遣AD】の待遇を比較していたが、俺的には「そりゃそうだろう!」と思った。
 そもそも「過去に頑張ったかどうか」が抜けている気がした。

 というのも、制作会社で派遣ADをやっている人は、高卒 or 専門学校卒が大半を締めているはずだ。(中には大卒もいるが…)
 じゃあ、その”会社”への「入社条件」ってのがそれぞれ何なのかを考えてみようか。

 人材不足・働き手不足のテレビ業界…。
 制作会社は新入社員(AD)をかき集めて、人員をテレビ局に派遣すればするほど「マネジメント料」が儲かる。
 例えば、テレビ局から制作会社に35万支払われ、ADには手取り20万円支払われたとすれば…制作会社としては1人につき月15万円の儲けとなる。
 ゆえに、入社試験の面接で応募者の「質」を問う面接官(社長)はあまりいない。
 テレビの「番組制作会社」というか…むしろ「人材派遣業」として、とにかくADをテレビ局に派遣しまくって中抜きすればウハウハ儲かる状態なのだ。
 応募してきた人材にある程度の社交性さえあれば、問題なく現場に派遣が出来る(=儲かる)ということで…。
 本人が持っている「将来性」や「能力」などは全くスルーされている。

 一方のテレビ局員は…!
 そこそこ良い大学に合格し、そこからテレビ局への就職活動。
 その厳しい倍率をくぐり抜けて合格した、謂わば「エリート」生なのである。
 テレビ局員(AD)にたどり着くまでのハードルが、制作会社に入社した人とは比較にならないほど高い。

 それゆえ…制作会社のADと局員ADを今までたくさん見てきたが、比較すると局員ADの方が圧倒的に「地頭」が良い。
 言ったことを理解するスピードとか、手際の良さとか。
 「さすがいいとこの大学出てるな〜」というのが仕事に如実に現れている気がした。

 上記の動画では同じ「AD」という立場を比較して論じており「局員ばかり好待遇はけしからん!」という立場だが、俺的に見れば「学生時代に頑張ってきたかどうか? その差が待遇の差なんじゃないの?」と思えてしまう。
 「待遇が不満なら制作会社に入らず、テレビ局の試験を受けりゃ良かったのに」と言う意見なわけだ。
 「それが出来なかった…でもテレビを作ってみたいから制作会社に入ったんでしょ?」…と。


 一方で、著作権に関しては確かに「テレビ局さん、分け前をくれませんかね?」とは思ったりもした(苦笑)。
 頑張って作り上げた番組(作品)の著作は、ほぼほぼ放送したテレビ局側の懐に入ってしまうからだ。(タレント事務所は除いて)

 令和で一番売れているのは…『笑ってはいけないシリーズ』のDVDかな?
 あれの売上って半端ないだろうなぁ。

 さすがに「吉本興業」レベルになると契約内容は違うかもしれないが…。
 何の後ろ盾もない、ただのテレビ制作会社だと番組著作権を持たせてもらえることは99%無いと言えるだろう。

 特に放送作家はその最たる例だ。
 いくら番組のDVDが売れようとも、その分のギャラが発生することはまずない。
 (たまに「番販」という形で…海外などで放送された時に1本いくら、みたいなギャラは発生する場合もある。もしくはプロデューサーの温情などでギャラ発生)

 作品のコンテンツ化(DVD・ブルーレイ化)というのは、ある種のボーナスみたいなもんだから、儲かったなら還元して欲しいな…とも思ったり。
 モチベーションにも繋がるしね!


 なので!!
 今、一番気になっているのは…

『筋肉番付』から生まれた「SASUKE」がオリンピック競技に採用予定とのことで、そこで発生する著作権料は制作会社…ひいては作家にも分配されるんだろうか?

 ってこと(笑)。
 今度、局員の方にこっそり聞いてみよう…。




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