サプライパートナーサクセスと製造業構造変革への挑戦
こんにちは。キャディ株式会社でサプライパートナーサクセス部門(SCM本部)本部長の宮武です。
今回シリーズBのタイミングで改めてキャディのサプライサイドの今後の展開や日々の業務の中での製造業の構造変革に対する思いをまとめてみましたので、少しお付き合いください。
はじめに
8/24にプレスリリースをさせていただきましたが、この度シリーズBで80.3億円の資金調達を実施いたしました。
製造業のDXを推進し、「製造業のポテンシャル解放」をミッションとして4年前の2017年に代表の加藤を含めて3名で起業したキャディにとって、今回のシリーズBは次の事業拡大フェーズに移行するマイルストーンになると考えています。現在も事業成長に伴い毎月約20名の新しい仲間が増えています。今後も既存事業拡大×事業ドメイン拡大×地域拡大(グローバル展開)により更なる成長加速を目指しており、一緒に事業成長を実現する仲間を募集しています。この投稿を読んでいただき「面白そう!」と感じた方がいましたら、webイベントを開催していますので気軽にご参加ください。全チーム(職種)で採用強化中です。
自己紹介
私自身の自己紹介から。
元々メカエンジニアとして新卒で精密位置決めモーターのメーカーに入社し、ステッピングモーターの新商品開発/特注品設計を14年間経験しました。そこから事業運営に興味を持ちレーザー部品のメーカーで10億規模の事業責任者として初めて設計、製造、営業の事業をワンセット持ち事業運営を行いました。その後、機械部品の株式会社ミスミで100億規模のリニアモーション事業のグローバル責任者、欧州事業責任者を務めた後にキャディの事業に参画しました。
SCM本部のキャディ事業における役割
SCMはサプライチェーンマネージメント(供給連鎖管理)の略で、キャディの現在の事業フェーズにおいては急拡大する需要(顧客注文)に対して、如何に強いQCD(品質/価格/納期)を実現しつつ、安定的で強固な供給ネットワークを構築/ 拡大していく役割です。
ファブレスメーカーであるキャディでは自社で製造工場を保有していないため、製造を担って頂ける加工パートナー会社と協力して実際の「モノづくり」を行っています。そのため、優良な加工パートナー会社の皆さんと如何に強固なパートナーシップを組んで「強い供給体制(製造)」を実現するかが事業成長のカギになります。
その中でSCMのメインの業務は、加工パートナー会社の開拓や生産/プロセス改善です。新規カテゴリーや既存カテゴリーの供給拡大の為に、新規取引候補の加工パートナー会社を訪問、工場監査や評価プロセス後に取引を開始します。取引開始後は、加工パートナー会社で検査/出荷の後、キャディの東京、大阪の自社物流拠点に部品を集結/検査を行います。つまりキャディが最終品質保証を行いお客様に製品納品を行います。既に取引のある加工パートナー会社に対しては、取引金額の拡大やQCD改善のための分析、アクション実行など日々全国の加工パートナー会社と一緒にカテゴリー強化を行い、キャディ事業成長の供給サイドを支えています。
中小製造業が抱える課題
会社の規模や事業構成によって異なりますが、毎月の売上の増減が激しい(不安定)、利益性が低いなど各社の課題は様々です。多くは下請けピラミッド構造による「買い手」と「売り手」の力関係によるところが大きく、末端の中小製造業に負担が集まりやすい業界構造になっています。
中小製造業は人数規模も小さく営業組織も脆弱なことが多いことから、古くから付き合いのある限定された業界、顧客とのみ長年取引をしており、業界/顧客の業績影響が強く作用して売上変動が起きやすい傾向にあります。また実製造においても自社の得意領域があるにもかかわらず顧客関係性の中で不得意領域を多く受注した結果、無理な値引きで事業の収益性が低かったりと加工パートナー会社のポテンシャルが活かしきれていないケースも多く見受けられます。
そこでキャディがプラットフォーマーとして介在し、多様な業界・複数顧客の需要の中から加工パートナー会社の強みのあるカテゴリを集約して発注することにより顧客/加工パートナ会社の双方にメリットが出せる仕組みを目指しています。
サプライサイドのこれまでのチャレンジ
キャディのフォーカスしているマーケットは、データハンドルのみではなくリアルに部品を扱う製造業界です。その中で需要先行か供給準備先行かという鶏卵問題に対してキャディは顧客需要を先行拡大させることで事業を急成長させてきました。
創業時、板金(薄い金属の板を折り曲げた部品加工領域)という限定された一部品カテゴリーから事業を始め、獲得した顧客需要の新たな要求に全社一丸で不足部分を充足させるアクションを継続することで対象部品カテゴリーを急速に拡大し、自動化装置やプラントを一式で納入可能な加工バリエーションを提供可能な供給ネットワークを構築することが出来ました。こうやって書くと、非常にスムーズに事業拡大しているように聞こえると思いますが、全くそんなことはありませんでした。装置一式を受注したものの、ある部品が既存の加工パートナー会社では製造出来ないことが納期直前で発覚し、受注後に製造可能な新規加工パートナー会社をチーム全員で1日で開拓したこともありました。また、納入した製品に問題があることが分かり、急遽部品の再作製のために特殊な金属材料を航空便で送って空港からレンタカーで加工パートナー会社に持ち込み、一晩中加工機を動かしていただき翌朝再度ハンドキャリーで空港に持ち込んで空港からチャーターで顧客納品したこともありました。
(ちなみに私がハンドキャリーやったのですが:笑)
外から見るとキャディがキラキラしたテックカンパニーの様に見えてるかもしれませんが、キャディの市場は加工品を扱うリアルな事業であり、泥臭く製造現場の皆さんと協力してお客様の納期を守っています。
色々な問題を解決しながら、昨年は対前年比で6倍の事業の急成長を実現することが出来ました。まさに創業以来、需要側のニーズ起点で事業を回しながら「バリエーション拡大」×「製造キャパ拡大」との戦いで供給ネットワークを急速に拡充してきました。
キャディが目指すサプライパートナーサクセスとは?
「こんなに自分達の事業成長を一緒に考えてくれたお客様はいない。」
先日、実際に加工パートナー会社の社長さんが取引拡大のためのブレスト中に何回も仰っていた言葉です。
加工パートナー会社からするとキャディは「注文を出すお客様」の一社です。一般的な取引においては「買い手」である発注者の力が圧倒的に強く、厳しいQ(品質向上)C(価格低減)D(納期短縮)の要求は一方通行で来るが、「長期的に需要側と供給側がどの様に事業成長を実現できるか?」「そのためにどの様な協力が両社で可能か?」というような双方向のやり取りがないことが多いのが実情です。そこでキャディでは製造改善のために加工パートナー会社に入り込んで現場の方と一緒に改善を行って両社の事業拡大を行っています。
ある加工パートナー会社では、製造遅延に対して1カ月間SCMのメンバーが常駐して、現状の生産管理プロセスの課題把握、新たなプロセス設計と現場導入まで行ってキャディ向けの生産だけではなく工場全体の納期遵守率の改善を行いました。
また別の加工パートナー会社では、取引事務プロセスがネックで取引拡大ができない状態でした。そのため、2週間SCMメンバーが工場に常駐して、現状の加工パートナー会社の営業を含めた社内プロセスを分析し、ボトルネック部分に対して社内の担当業務の変更やモノと情報の流し方を提案し、プロセス変更を行いました。
何故ここまでやるのか?
「製造業のポテンシャルを解放する」というキャディのミッションに基づいて「共に事業成長していきたい」と考えているからです。
キャディでは加工会社の皆さんを、サプライ加工パートナーと呼んでいます。それは加工会社の皆様がキャディの事業拡大を実現するパートナー(伴走者)であり、キャディも加工パートナー会社の事業拡大を実現するパートナーであるという理念からです。そのために単に発注書をだして終わりではなく、共に事業成長を実現したいと考えています。
「事業成長したい」「会社を大きくしたい」「日本の製造業を盛り上げたい」という熱い思いを持って日々研鑽し、努力を続けている製造業の皆さんが正当な評価をされ、事業的に適正な利益を確保できる仕組みを作りたいと考えています。その上で加工パートナー会社が事業成長できることが、キャディの考えるサプライパートナーサクセスです。
とはいえキャディは創業4期目の会社でまだまだ志高い加工パートナー会社の皆さんと共に事業モデルを磨き込んでいる段階です。
完成されたビジネスモデルを持つ企業のように決められたプロセスをお互いに回していくだけではなく、全体プロセス最適化の為に、自社のプロセスを変えたり、お客様や加工パートナー会社のプロセスを変えて頂く事もあります。成長の為には、変化し続けなくてはなりません。
従来のやり方から「変化」する事でお互いに痛みも伴います。しかしその痛みを恐れず「変化」し続けていくことで今までにないような成長を実現することが出来ると考えています。
今後のサプライパートナーサクセスに向けて
創業から現在までは短期間で事業成長のベースとなる「需要規模拡大」と「供給ネットワーク構築」実現のために、「パワープレイ」と「テクノロジー/ プロセス化」で考えると、どんな手段を使っても顧客需要を充足させるという「パワープレイ」の比重が高かったと思います。その結果、失敗経験も沢山しましたが、その分社内で経験知の蓄積も進み、「何をやるべきか」「何をやってはならないか」が明確になってきました。今後、この経験を活かして事業を回しながら、更なるエクスポネンシャルな事業成長に対応するために、「テクノロジー/プロセス化」の比重を上げる方向にシフトしていきます。
キャディが考えるサプライパートナーサクセス実現に向けて今後以下の様な取り組みを行い、キャディの事業成長と加工パートナー会社の売上安定化、収益改善の同時達成を行う予定です。
更なる顧客需要先行での規模拡大により、以下の項目が可能になります。
・顧客数拡大による取引金額のフォーキャスト精度向上と金額安定化
・図面数増加によるメインカテゴリーの需要予測と金額安定化
・絶対図面数の増加に伴うロングテール部品のカテゴリ拡大のROI向上
その結果、製造効率化として以下の項目に取り組みます。
・多品種少量品の未来需要フォーキャスト精度向上及び生産予約化
・取引金額拡大におけるキャディ専用加工装置/加工ライン化での効率化
・実案件発注と連動した得意加工領域に特化集中生産による効率化
また加工パートナー会社の業務効率化支援として以下の様なテクノロジー活用を行う予定です。
・見積工程削減のための、原価計算システムのロジック改定加速
・加工パートナー会社の受発注業務効率化のためのシステム開発/提供
・加工パートナー会社の生産管理支援システムの開発/提供
・顧客暗黙知の分解と情報伝達のデータベース構築とシステム支援
まだまだキャディのチャレンジは始まったばかりですが、事業拡大を通して加工パートナー会社の皆さんが事業成長・拡大していく姿を見ていると私たちも負けていられないですし、それ以上の成長をしなくてはいけないと改めて思わされます。「製造業のポテンシャルを解放する」という大きなミッションに向かって、目の前のお客様や加工パートナー会社、ひいては製造業の未来を変える。リアルな事業の現場でこんなにも熱くなれる仕事は無いと考えています。
メンバーのバックグラウンド
ここまで読んでいただくと「製造業未経験だと入社しても難しそう……」と思われた方、そんなことはありません!
現在のSCM本部のメンバーバックグラウンドは様々です。製造業出身もいますが、元コンサル、リクルート営業、不動産業など様々で、製造業と関係のないバックグラウンドのメンバーも活躍しています。ちなみに、前期で社内の成果表彰されたSCMメンバーは、製造業未経験の元銀行員です。
求める人材像
求める人材像の共通点としては、製造業の長いサプライチェーンを俯瞰して、自分の役割だけでなく全体プロセスまで広げて、広い視野で考えられる方が適していると思います。もうひとつは、顕在・潜在の両面から課題を見つけて、仮説検証を回せること。SCMは、加工パートナー会社の1社1社に向き合い、そのサプライパートナーサクセスを果たすために自分の頭で考え仮説検証/実行していく仕事です。前職の業界に関係なくPDCAを自分主導で回した経験を持っている方は活躍できると思います。また、非常に大きな業界全体の課題を自身の手で変革する気概を持つことも重要です。
最後まで読んでいただいた皆様へ
最後まで読んでいただきありがとうございました。
各種メディアの記事を読んで「キャディの事業もう出来上がっていますか?」とお会いする方からよく聞かれます。その時は、「やりたいことの10%にも到達出来ていません」とお答えしています。
現在の事業状況は未成熟な部分も多く、日々仮説検証を回してプロセスを変更/再構築をしており、現在、更なる事業成長のために採用を強化しています。
もう少し事業の話を聞いてみたいという方がいましたらカジュアル面談を気軽に申し込みください。また9/2の20時からwebイベントでサプライヤーサクセスのセッションを私とメンバーの原田の2名で開催します。サプライサイドのリアルなお話をお伝えが出来ればと思いますので皆様の参加をお待ちしています。(以下のリンクから申し込みください)
是非、エクスポネンシャルな事業成長の過程を一緒に楽しみましょう!
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