IT稟議を通しやすくする10個のコツを完全解説!
こんにちは、DeepApex株式会社(ディープエイペックス)代表取締役の市川 駿です。
今回の記事では、企業内部でのIT稟議をどうしたら通しやすくなるのか?について記載していきます。経営層が判断する際に必要な情報を十分に集めているか、事前説明を行っているかなどポイントとなることも交えつつ解説していきます。
なぜIT稟議は通らないのか?原因を探る
IT稟議がなかなか通らない、という経験は多くの方が抱えているのではないでしょうか。その原因は様々ですが、大きく分けて以下の3つが考えられます。
経営層の理解不足:経営層は、ITの専門知識を持っていないことが多く、提案内容が具体的に理解できていないことがあります。そのため、導入の必要性やメリットが伝わりにくく、決裁が遅れてしまうケースがよく見られます。
費用対効果の不明確さ:導入に要する費用や、導入後の効果が明確に示されていない場合、経営層は投資に対する不安を感じ、決裁を躊躇することがあります。
他の優先事項との競合:ITシステムの導入は、多くの場合、他の部署やプロジェクトとの競合になります。優先順位が低いと判断され、稟議が後回しになってしまうこともあります。
下記にIT稟議を通りやすくするための10個のコツを記載していきます。
1. 経営層の視点を理解する
まず、IT稟議を通すためには、経営層の視点を理解することが重要です。IT部門としての視点は「技術的な最適解」を求めがちですが、経営層は「ビジネスへの影響」や「費用対効果」を最優先に考えます。したがって、提案するプロジェクトや技術が会社の収益にどう貢献するのか、業務効率や競争力向上につながるのかといった点を明確に示すことが必要です。
具体的には、次のような情報を事前にまとめておくとよいでしょう。
投資対効果(ROI)の算出:どのくらいの投資で、どのくらいの利益が期待できるのかを数値で示す。
コスト削減のシナリオ:新しいシステム導入によって、どの業務がどのように効率化され、結果的にどのようにコストが削減されるかを明確にする。
市場における競争優位性の強化:導入によって、競合他社に対してどのような差別化が図れるか、業界全体のトレンドとも照らし合わせて説明する。
このように、ビジネスの観点から説明できるかどうかが、稟議の可否を左右する大きなポイントになります。定量的に示せない場合も多いと思いますが、論理的に説明できることが重要です。
2. リスクと対策を明示する
どんなITプロジェクトにもリスクが伴います。システムのダウンタイムやデータ移行に伴う問題、導入後の運用コストの増加など、経営層が不安に思う要素は多岐にわたります。そのため、リスクを軽視するのではなく、むしろ積極的に指摘し、その対策を提案することが重要です。
例えば次のようなリスクとその対応策をあらかじめ提示しておくと、稟議の通過率は格段に上がります。
システム停止リスク:システム導入時のダウンタイムが発生する可能性を示し、その影響を最小限に抑えるための対策(例えば、夜間や週末に導入作業を行うなど)を説明する。
データ移行リスク:データ移行に伴う整合性の問題やデータ損失のリスクを考慮し、適切なバックアップや検証プロセスを提示する。
運用コストの増加:新システムの運用に伴う人員やコストの増加が見込まれる場合、その対策としての効率化プランや段階的なスキル移行の計画を示す。
これらのリスクを経営層が事前に理解し、対応策が整っていることを確認できれば、稟議の通過がスムーズになります。
3. ステークホルダーとの事前調整を怠らない
稟議のプロセスにおいては、単に経営層を説得するだけではなく、他の部門や関連部署の意見も取り入れることが重要です。特に、システム導入が他部署に影響を与える場合や、複数の部署が関連するプロジェクトでは、事前にステークホルダーとの調整が不可欠です。
次の点を意識して、関連部署とのコミュニケーションを進めることが重要です。
部署ごとのニーズをヒアリングする:各部署が抱える課題や期待を把握し、それを提案内容に反映することで、より説得力のある稟議書が作成できます。
各部署との協力体制を確立する:プロジェクト実行時に必要となる協力体制を事前に整えておくことで、導入後のトラブルを未然に防ぐことができます。
異なる視点を取り入れる:IT部門とは異なる観点でのフィードバックを取り入れることで、提案の精度を高め、稟議書の質を向上させることができます。
このように、関係者の理解と協力を得ることが、稟議をスムーズに進めるための重要なステップです。
4. 分かりやすい資料を作成する
経営層は日々、多くの稟議書や報告書に目を通すため、資料が複雑だと理解するのに時間がかかり、判断が遅れる可能性があります。そのため、稟議書や提案資料はできるだけシンプルかつ明確にまとめることがポイントです。
具体的な資料作成のポイントは以下の通りです。
要点を簡潔にまとめる:長い説明は避け、必要な情報を一目で理解できるように、箇条書きやグラフを活用しましょう。特に、経営層に伝えたいメッセージは冒頭に明確に記載することが重要です。
ビジュアルを活用する:文字だけではなく、図やチャート、ビジュアルエイドを活用することで、視覚的にも分かりやすい資料を作成しましょう。たとえば、投資対効果をグラフで示したり、システム導入後のプロセス改善効果をフローチャートで表すことが効果的です。
専門用語を避ける:IT用語や技術的な専門用語を多用すると、経営層にとって理解しづらくなります。できるだけ平易な言葉で説明し、必要があれば専門用語の定義を簡単に添えると良いでしょう。
最初のページにサマリを記載する:資料の最初のページにサマリが書かれていることで、結論が何であるかが分かりやすくなり、その後の詳細な内容を確認しやすくなります。
5. タイミングと戦略を考慮する
稟議を提出するタイミングや戦略も重要な要素です。例えば、年度末や四半期末は多くのプロジェクトが集中する時期であり、経営層も忙しくなります。この時期に重要な稟議を提出しても、じっくり検討してもらえない可能性が高いです。逆に、会社全体が成長を目指しているタイミングや、業績が良好な時期に稟議を提出する方が、前向きに検討されやすいでしょう。
また、稟議の内容によっては、一度に全ての予算を要求するのではなく、段階的にプロジェクトを進める計画を提案することも効果的です。たとえば、まずは試験導入を行い、成功した段階で本格的な導入を進めるといったアプローチです。これにより、経営層はリスクを軽減しつつ、プロジェクトの進行を見守ることができます。
6. 事前にフィードバックを受ける
稟議を提出する前に、上司や関連部署のメンバーからフィードバックを受けることも非常に有効です。特に、経営層に近い立場の人や、過去に稟議を通した経験のある人からのアドバイスは貴重です。彼らの視点から見た改善点や懸念点を事前に洗い出しておくことで、稟議が通りやすくなります。
フィードバックを受ける際には、次の点を意識しましょう。
具体的な改善案をもらう:単に意見を聞くだけでなく、具体的な改善提案を求めることで、稟議書の質を向上させることができます。
リハーサルを行う:稟議のプレゼンテーションや説明が必要な場合は、事前にリハーサルを行い、話の流れや資料の理解度を確認しましょう。リハーサルを行うことで、自信を持って説明できるようになりますし、聞き手の疑問や反応を事前に知ることができるため、本番での対応力も向上します。
7. 実績や他社事例を活用する
経営層は、稟議を通すにあたって「リスク回避」が大きな関心事です。そのため、提案するプロジェクトの信頼性を高めるために、過去の成功事例や他社の導入事例を示すことが有効です。特に、同業他社が同様のシステムを導入して成功している場合や、具体的な効果がデータで示されている場合、経営層はそのプロジェクトをより安心して検討することができます。
自社内での過去の実績:もし自社内で過去に似たようなプロジェクトを成功させた経験があれば、その結果や効果を提示しましょう。特に、投資対効果や効率化の度合いが具体的に示せる場合は説得力が増します。
他社の成功事例:業界のベンチマークや競合他社が同様の技術を導入して成功したケーススタディを紹介することで、経営層に安心感を与えることができます。市場のトレンドを示しながら、リスクが低いことを証明することが重要です。
これにより、経営層はリスクを最小限に抑えながら新しい技術やプロジェクトに取り組むことができるという認識を持ち、稟議が通りやすくなります。
8. 短期と長期の利益を強調する
ITプロジェクトは、導入時にコストがかかるだけでなく、運用や保守にも予算が必要です。そのため、経営層が短期的なコストを嫌う場合も少なくありません。しかし、短期的なコスト削減だけでなく、長期的な利益や成長を示すことで、稟議の通過がスムーズになることがあります。
短期的な効果:新システム導入による業務効率の向上や、現在抱えている問題点の迅速な解決など、短期間で得られる具体的なメリットを説明しましょう。たとえば、現行の業務フローでどれだけの時間やリソースが無駄になっているかを示し、その改善がどれほど早く効果を発揮するかを強調します。
長期的な効果:新しい技術やシステムが、将来的なコスト削減や成長にどのように貢献するかを説明します。特に、今後の事業拡大に対応できる柔軟なシステムや、未来の競争力強化につながる要素がある場合、その点を強く打ち出しましょう。長期的な視点での利益を説明することで、経営層が将来を見据えた判断をしやすくなります。
9. 対話を重視する
稟議は一方通行のプロセスではありません。稟議書を提出して終わりではなく、その後の対話や交渉が重要です。経営層は当然ながら質問や懸念を持つことが多いので、その対応を柔軟かつ迅速に行うことが必要です。
質問には迅速に対応する:稟議書を提出した後、経営層からの質問や追加の資料請求が来た際には、できるだけ早く対応しましょう。迅速な対応は、プロジェクトに対する信頼感を高める効果があります。
オープンなコミュニケーションを維持する:提案内容に関して議論や調整が必要な場合は、相手の意見や要望を積極的に聞き、柔軟に対応する姿勢が求められます。必要であれば、稟議内容を調整したり、補足資料を提出したりして、経営層との信頼関係を築くことが重要です。
10. 稟議通過後もフォローアップを忘れずに
稟議が通った後も、プロジェクトの進行状況や結果について経営層に適切に報告し、フォローアップを行うことが重要です。特に、初期の段階で予算が承認された場合、その後の段階で追加の予算やリソースが必要になることもあります。その際、しっかりとした報告体制を整えておくことで、経営層との信頼関係を強化し、次の稟議にもプラスに働きます。
進捗報告を定期的に行う:プロジェクトの進捗状況や成果を定期的に報告し、経営層がプロジェクトの進展を把握できるようにします。これにより、次回の稟議でもよりスムーズに承認を得やすくなります。
予想外の問題に対処する:稟議通過後に予想外の問題が発生した場合も、迅速に対応し、その状況を経営層に報告しましょう。問題解決のための具体的な対応策を提示し、プロジェクトを軌道に乗せることが重要です。
まとめ
IT稟議を通しやすくするためには、経営層の視点を理解し、リスクと対策を明確にし、関係者との調整や分かりやすい資料作成を心がけることが大切です。また、タイミングや戦略を考慮し、事前にフィードバックを受けることも有効です。実績や他社事例を活用し、短期・長期の利益を強調することで、より説得力のある稟議書を作成できます。そして、稟議通過後もフォローアップをしっかり行い、次の稟議に備えることが成功の鍵となります。
これらのポイントを押さえて、稟議プロセスを円滑に進め、ITプロジェクトを成功に導いてください。
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