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いわき、アウェイで引き分け

近藤が同点弾、大きな勝ち点1
明治安田J2リーグ 第5節

 サッカーのいわきFCは20日、アウェイのJITリサイクルインクスタジアムでヴァンフォーレ甲府と1対1で引き分け、勝ち点1を積み重ねた。いわきは前半、アジアチャンピオンズリーグの決勝ラウンドにまで進出した甲府に、押され気味の展開。13分には帰陣が遅れて甲府にスペースを与え、先制点を許した。それでも25分、ゴール中央を谷村、山下、近藤とパスワークで崩して同点。その後は風上を活かして、試合を優位に進めた。後半は両チームが強風に悩まされる展開。57分からは突風の影響で、試合が約40分中断した。再開後は中盤での競り合いが続き、お互いに決定機を作り出せないままタイムアップ。2勝2分1敗で勝ち点を8としたいわきは、24日の次節、ホームのハワイアンズスタジアムいわきにモンテディオ山形を迎える。

遺恨ぬぐうサポーター、ゴール裏も浜照らす

 サッカー経験のあるいわきサポーターが「選手としては、中断してからの入りはムズイ」と評したように、後半はともすれば凡戦に映る内容だった。しかし言い換えれば、前節までの時点でリーグ2位につけ、実力のある甲府と互角に渡り合った証拠。失点シーンで西川が全力で戻っていれば、あるいは50分の決定機を有馬が決めていれば、勝ち点3すら手にしていたかもしれない。ただ、総合的にはドロー決着が妥当な試合内容だっただろう。

 今節のハイライトは何と言っても、強風による試合中断。IWAKI PITで70~80人のサポーターとともにパブリックビューイングを楽しんだという男性も、試合開始前から天気が気になっていたという。一方、現地のサポーターは甲府の地でもいわきらしさを表現。中断のアナウンス直後にはゴール裏のサポーターでさえ速やかにスタンド外へ退避し、13年前の教訓から、人命を最優先する意識を徹底していることが窺えた。

 そして雨が止み、試合再開までの暖機時間にいわきサポーターが歌った「Allez Allez Allez」。アルファベットの「I」「W」「K」をジェスチャーで示す、今季から導入した人気チャントは、サッカーを楽しむ心意気にあふれていた。そんな雰囲気とコールリーダーからの呼びかけに応じて、ボールパーソンの高校生がいわきサポーターとともに踊り始め、メインスタンドの甲府サポーターまでも巻き込む展開に。試合後にも甲府のユニフォームを着た子どもが「I!WA!KI!」と楽しそうにはしゃぐ姿が見られた。

いわきサポーターとボールパーソン

 昨年は甲府の三浦(現川崎)が負傷した際、いわきサポーターが不適切な発言を飛ばし、甲府のみならずサッカー界に悪い印象を与えてしまったアウェイ戦。しかし試合後に必ず相手サポーターに一礼するクラブや、時にはエール交換さえするサポーターの紳士的な姿勢が次第に理解され、その遺恨も払しょくされつつあった。そこに加えて、今回の敵味方を超えたチャントは、いわきが目指す社会的価値、人と人との繋がりを体現した瞬間でもあった。

 20代の甲府サポーターは、6月に行われるいわきでの試合を観戦する予定だという。「コンパクトで、雰囲気があっていいですよね」(同)。その空気感を醸成しているのは、間違いなくサポーターたちの応援だろう。いまやいわきのゴール裏も、浜を照らす光だ。

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