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マレーシア、フェーズ3へ移行した州の基準達成状況

概要

■マレーシアは国家復興計画に沿って、活動制限の緩和を進めている
■ペルリス州、サラワク州、ラブアンがフェーズ3への移行を発表
■サラワク州とラブアンは移行に関する症例者数の条件(7日平均2,000人相当未満)を満たしていない
■移行基準(新規症例者数、ICU利用率、ワクチン接種進捗度)のうち、新規症例者数の条件は実質的に廃止されたと思われる

はじめに

マレーシアは、国家復興計画を6/15に発表して、それに沿って今後活動制限を緩和していくと表明していました。

今日は、ペルリス州、サラワク州、ラブアンがフェーズ3への移行が決定しました(こちら)。8/4からです。「3州とも必要な基準を満たした」とされています。

 まず、その基準をおさらいしておきましょう。

国家復興計画規制緩和の基準

基準は

1.新規症例者数(7日平均)
2.ICUの利用度
3.ワクチン2回目の進捗

で、フェーズ3の場合は

1.新規症例者数2,000以下
2.ICU利用度 十分な水準
3.ワクチン2回目接種 人口の40%

というもの(こちら)で、マレーシア全土で満たす必要がありました。

しかし、その後、基準は微妙に緩められ、ワクチン2回接種者は全人口でなく、成人人口になり、マレーシアの各州・準州で、基準を満たせば満たした州・準州から先に規制緩和することになりました。

今回フェーズ3に移行した各州の基準達成状況を見て、今後の規制緩和の行方がどうなりそうか見てみましょう。

1.新規症例者数基準を満たすのはペルリス州のみ

7日平均の症例者数はマレーシア全土で2,000人未満というものですが、現在は、州ごとの基準になっています。

 各州の人口で違うわけですが、人口100万人あたりで考えると、どの州も61.2人(=2000/3270万×100万)というのが基準になりますので、それで考えてみます。

この3州について調べてみると、

ラブアン  166人
サラワク州 151人
ペルリス州 24人

となりました(7/25-8/1の7日平均)。症例者数基準を満たしているのはベルリス州のみということがわかります。GitHubのデータを利用しました(こちら

図も示しておきます(追記)。

画像3

赤の点線がフェーズ3の新規症例者数の基準です。ペルリス州(茶)は8/1時点で赤点線を下回っており、基準を満たしていることがわかりますが、ラブアン(灰色)とサラワク州(青)は満たしていないことがわかります。

 7/24に、国家復興計画統括大臣のザルフル氏が「国家復興計画の基準は、ワクチン接種率が上がるにつれて変更も」と言っており(こちら)、「フェーズ3では、症例数だけに焦点を当てるのではなく、国のワクチン接種率が高くなると予想される場合、国家復興評議会は基準指標をICU容量または死亡にさえ変更することも提案した」と具体案を示していましたが、まさに症例者数は考慮されていないことがわかりました。

つまりは、今回、新規症例者数基準は実質的に外れたと思っていいのではないでしょうか。

2.ICUの利用度は3州とも余裕あり

次にICUの利用度です。ICUの基準は「十分」(快適な負荷)というものですが、3州のICU利用率は、GitHubのデータ(こちら)の新型コロナ用ICUベッドと新型コロナICU患者の比から得られます。

ラブアン  20%
サラワク州 28%
ペルリス州 55%

ペルリス州はずっと症例者の少ない優等生という印象を持っていたので、そのICU利用率が高いのが意外ですが、まあ「十分」と言えなくはありません。

7/7時点で、ノール・ヒシャム保健局長がICU利用率などを発表しています(こちら)。

画像1

これによると、7/7当時

ラブアン  127%
サラワク州 77%
ペルリス州 5%

で、ペルリス州はICUがガラガラでした。

3.ワクチン接種率は3州とも成人人口40%の基準を満たす

さて、最後になりましたが、ワクチン2回目接種率を見てみます(こちら)。

画像2

3州のワクチン成人人口に対する接種比率は(一番右の列の青が濃い列)

ラブアン  81.5%
サラワク州 65.7%
ペルリス州 42.7%

いずれも基準の40%を達成しています。

ワクチンの進捗を見ると、成人人口に対する接種比率の高い州が上から3つ選ばれたという感じです。

おわりに

以上、新規症例者数の基準が実質的に廃止されたのを見てきました。

医療の逼迫は当然考慮されると思いますが、今後はワクチン接種率を重視した規制緩和になっていくことがさらに確認されたように思います。

なんとしても、規制緩和できるところは緩和していくという意気込みが感じられます。 

 厳しい規制が続くことに対する不満の解消に向けて、医療の逼迫を勘案しつつもワクチン接種率をあげて規制緩和できる州から規制緩和していくという強い考えがあると思われます。

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