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おいしいの正体とは。チョコレートケーキの魔法。

おいしいとはどういうことか。

どうもShunです。
フードクリエイターとして活動をしています。やっていることは料理研究家のようなレシピ開発や、食にまつわるビジネスやクリエイティブな活動など、さまざま。
だからほとんど毎日、新メニューを作っていて「これは美味しい」「これはあまり美味しくできなかった」なんて思いながら、「おいしい」という感情に寄り添う機会が多くあります。

そういえば、僕はどうしてこんなにも「おいしい」という感情に特別な思いを持っているのか。

おいしいには、正解がない

おいしいには正解がない。日々料理をする中で色々な味や感想を持つ。ここに、自分自身の「おいしい」が迷子にならないよう、しっかりと記しておこうと思う。

もうあの時のように、自分に迷わないように。

Shunの活動は、2023年の9月、Instagramから始まった。味をダイレクトに伝えられない「SNS」を通じて日々料理を発信している。本当にありがたいことに、さまざまなコメントや反応をいただくようになり、いいことも、少し胸がチクッとする言葉をいただくこともある。

そんな中で、正解がない「おいしい」に答えを見つけた気がした。

おいしいとは、食べている本人が「自分は今、満たされている」というのに気がつくこと。

チョコレートケーキ、出会いと再会

僕は小さい頃、チョコレートケーキがたまらなく好きだった。カカオの香りがふわっとして、口溶けがいいチョコレートクリームと、上質できめ細かいスポンジ…ではなくて。京都の田舎(地元)にある、小さなケーキ屋さんの普通のチョコレートケーキだ。

決して裕福ではなかった僕の実家は、家族の誰かが誕生日なら、決まってケーキを買ってくる。うちは5人家族。だから年に5回。クリスマスをのぞいてケーキを食べられる日があった。当時ひとつ315円とかだったかな。地元の小さいケーキ屋さんの、普通のチョコレートケーキ。

夕食の買い物帰りにケーキ屋さんで買うのがお決まりのコース。この日ばかりは、夕食の買い物にも喜んでついて行っていた。もちろん目当てはチョコレートケーキ。家族みんなで夕食を食べた後、冷蔵庫から出てくるチョコレートケーキは格別だった。
ケーキの周りについてる、透明のピロピロまで舐めながら食べていたっけ。

少し時間が進んで、僕が大人になってから。 

ちょうど料理人として働いていたころ、左手を麻痺して自分の人生に絶望していた。仕事もロクに出来ず、何気なくスーパーをぶらついていたら、チョコレートケーキが目にとまった。

当時食べていたものと同じものではなかったけど、あの頃を思い出す、透明のピロピロが巻かれた三角形の定番のやつ。

何も特別じゃない普通のチョコレートケーキに惹かれ、ひとつ手に取っていた。食欲すらあまりなかった当時、僕が久しぶりに食べたいなと思ったのがこの普通のチョコレートケーキだったのだ。

当時はレストランで働いていたから、小学生の頃には絶対食卓に出てこなかった有名なパティシエが作るケーキやフィナンシェ、マカロンなども沢山食べていた。だけど、そんなのより全然食べたいと思った。

一口食べると、久しぶりに心からの「おいしい」を感じた。料理を仕事にしてから感じていなかった感情だった。
だけだ、一言懐かしいから、というのとは少し違う。

どんなに辛いことがあっても、あの時と変わらない素朴な味に心が満たされた。

張り詰めていた糸が切れて、頬が濡れた。手を拭いた後のおしぼりをそっと頬に当てたのを覚えている。

満たされていることを、知ることで

おいしいの先には、満たされている自分がいる。どんなに悔しくても、辛くても、食べ物を口に入れた時「おいしい」と思えたら、その瞬間に、今自分が満たされていることを知る。

当時の僕は、足りないものばかりに心を奪われて、自分を肯定する余裕なんてどこにもなかった。

これ自体を否定的には思わない。生きていれば、思うようにいかないことの方が多い。そんな時は落ち込んで当然。こういう弱さがとても人間らしいとすら思う。でもだからこそ僕らは、意識的に外から入る情報と距離をとって、自分と向き合う時間が必要なんだと思う。

このモノと情報に溢れかえる現代社会においては、特に。

食事は、そのきっかけになる。

チョコレートケーキの魔法を

本当に大切なものは気づかないうちに、もう持っていることが多い。

「おいしい」と感じたとき、嫌なことや不安などの前提を全てとっぱらって、無条件に今の自分を受け入れてくれる。

これは時に、どんな都合のいい言葉をよりも深く心に染みる。

満たされていることを知ることで、明日の生きる力に変わっていく。
Shunではこれを「おいしい」の正体だと捉えている。

Shunは、お客さんにお金を払ってもらい料理を振る舞う、いわゆる「プロの料理人」ではない。だからShunの「おいしい」は特別感より、もっと日常に寄り添ったものでありたいと思っている。

実体験から、毎日の豊かさに気が付くのは、特別な日にお金を払って食べる料理ではなくて、日常の料理にあると考えているからだ。

かつて憧れた、世界を驚かせる料理にはできない、毎日頑張って生きる人を肯定する「食」を作りたい。まるで、あの日食べたチョコレートケーキのように。

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