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【ブルベ走行録】24時間走り続けろ!チームで走るブルベ~Flèch Japon 2024

少し前のことだが、2024年3月30日から31日にかけて、フレッシュという少し変わったブルベに参加してきたので、その走行録を書いていく。


フレッシュとは?

フレッシュの起源

フレッシュ(Flèche)とは、フランス語で「矢」という意味を持つ単語で、本場フランスのフレッシュ・ベロシオは、毎年復活祭の週末に、Concentration Pascale(コンサントラシオン・パスカール)に合わせて開催されています。
コンサントラシオンとはサイクリングにおいては全国各地のサイクリストが一箇所に集合して楽しむという形式のイベントであり、フレッシュ・ベロシオはコンサントラシオン・パスカールの開催地(プロバンス地方の町で、毎年変わります)を最終目的地として、各地のサイクリング・チームが集合する過程で行われます。
1つの目標に向かって各地から集まってくる様子を、「的に向かって飛んでくる矢」に例えてフレッシュと名付けられました。
なお、ベロシオとはフランスで「シクロツーリスムの父」として崇められている Paul de Vivie(ポール・ド・ビビ:1853-1930)のペンネームです。
ベロシオは毎年復活祭にプロバンス地方にある彼の生地Pernes Les Fontaines(ペルネ・レ・フォンテーネ)へのサイクリングを楽しんでいました。コンサントラシオン・パスカールはフランスのサイクリング連盟(FFCT)が、偉大なベロシオへの追悼のために、このベロシオの年中行事をイベントに昇華させたものです。
フランスの Audax Club Parisien(オダックス・クラブ・パリジャン:ACP)の定める規定に則った Flèche Nationale(フレッシュ・ナショナール)の日本版、Flèche Japon(フレッシュ・ジャポン)を実施します。
フレッシュ・ナショナールは ACP の主催によりフランスで行われている Flèche Veloscio(フレッシュ・ベロシオ)をモデルとしており、フレッシュ・ベロシオ同様の内容のイベントをフランス以外の各国でも開催できるように認められたものです。
フレッシュ・ナショナールは、共通の最終目的地に向かって 24時間で 360km 以上のできるだけ長い距離を走るチーム・ライドです。1 チームは 3-5 台の自転車で編成され、最低でも 3 台の自転車が一緒に 24 時間走り抜くことが要求されています。
(AJ 宇都宮 初代代表 齋藤喜康氏 記)

ランドヌール熊本ホームページより

フレッシュの走行ルール

フレッシュの走行ルール・認定条件はざっとこんな感じ。

  1. 3台以上5台以下でエントリー可能。最低でも3台の車両がフィニッシュすること

  2. 走行距離は24時間で360km以上であり、かつ事前申告の距離より±20%以内であること

  3. 22時間目から24時間目の間に、25km以上を走行すること。

  4. 1回の休憩が2時間を超えないこと

この他にもルート設定において制限があったりするが、走行中に直結しないルールなので割愛する。
特徴的なのは、最後の2時間は25km以上の走行が必須な点と、休憩が2時間以内である点だよね。要は「24時間とにかく走り続けろ!」ということ。
一方で360km以上だったらどこまでも走っていいのかと言うとそうじゃなくて、事前申告距離の±20%に収めなければならないというルールがある。
つまり、そもそもの事前申告距離の妥当性、そして実際の走行ペースや休憩のとり方、はたまた突発的なトラブルも含めてあらゆる面でタイムマネジメントが要求されるのだ。

どう走る?

一般的な戦略として、まず距離設定は、確実な完走を目指す場合は360kmに限りなく近づけ、かつ何かトラブルが起こった場合に挽回がきくように平坦なルート設定にすることらしい。
(ただしフレッシュの理念としてはあくまでも「24時間でできるだけ長い距離を走る」なので、チームの実力によっては360kmを上回る距離設定をするべきだし、実際にそのようなチームもいる)

また、BRMとは違い速く走れば早く終わるわけではなく、フィニッシュは必ず24時間後になるので、仮眠も考えておく必要がある。

ちなみに、フレッシュ経験者曰く「必ずケンカする」らしい😅
そんな話を聞くと一気に不安になったが・・・

コントロールポイントの設定次第ではこのようなルートも可能

スタート地点までの移動

スタートは佐賀県のJR鳥栖駅。集合時刻は少しゆっくりめの10:00。前乗りしなくても間に合う。西九州新幹線とリレーかもめを乗り継いでいく選択肢もあったけど、新幹線代を節約したくて普通列車で行くことにした。

長崎で乗車し諫早で降りて江北こうほく行きに乗り換える。
発車まで時間がありそうだったので、こんな感じで写真撮影して遊んでいると・・・

あれ?なんだかやたらに待ち時間長いな~と思い、スマホで列車検索してみる。
なんと、乗るはずだった列車は既に発車していて、いま自分はその次の列車に乗っていたことがわかった💦
初っぱなからやってしまった。諫早で降車した時、ちょうど同じホームに江北行きが停車してたから何も考えずにそのまま乗ったけど、ちゃんと発車時刻確認すればよかった。

幸い、集合時間には間に合いそうだったが、その代わり乗る予定がなかった特急列車にのるハメになった。安く済ませようと思ってたのに!

さて気を取り直して、鳥栖駅に着くと既に2人揃っていた。
今回5人でのチーム編成だったが、私以外はパリ~ブレスト~パリ(PBP)を含む1000km超のブルベ完走者ばかりで、私はまだまだブルベ初級者だ。
残りの3人も揃ったのでメンバー紹介をしよう(Xのアカウント併記)

~チーム SAKURA EXPRESS~

Kyosukeさん(@gios_kyousuke)★
今回のリーダー。PBP完走者。明るいキャラクターと冷静なタイムマネジメントでチームを引っ張る。

FUJIさん(@Relax_Slowly)
長崎のBRMで度々お会いする。平地の鬼引きが凄まじく、ついて行くだけで精一杯💦

いのけ~さん(@inokey77)
AJ長崎スタッフ(ご本人は認めてない 笑)。PBP含め1000km超のブルベをいくつも完走している。

Kissyさん(@hinamopapa)
岡山からの参加!全国各地をロングライドされていて、平地も坂道も難なくこなす。エベレスティング達成者。

そんな中、まだ最長400kmしか走ってない私は明らかに実績が足りない!けれど、せっかく誘って頂いたんだし、楽しまなきゃ!とすぐに切り替えてスタートできた。

鳥栖駅前で反射ベストのオジサン5人組で
意気込みの記念撮影

スタート~フィニッシュ

鳥栖▶武雄(0km-60km)~向かい風に抗う

本コース上ではコントロールは13箇所。いずれも時間制限はなく通過の証明でよい。モニュメントの場合は写真撮影、コンビニはレシートでエビデンスとする。
最初の目標となるのは武雄市内の御船山楽園。57km地点だ。その近辺で昼食も予定しているという。
が、この区間まあまあの向かい風。私1人なら25km/hも出せないところを、KyosukeさんとFUJIさん、Kissyさんの引きでゴリゴリ進む。後ろについているから少し楽ができるが、とても前になんかは出られない。
この区間筆頭に、今回のブルベは向かい風との闘いだった。往復ルートに近いとはいえ、ワンウェイブルベはやはり風が味方にも敵にもなるよね。

佐賀県庁前。早速ソメイヨシノがお出迎え

武雄に到着した頃は1時間以上のマージンがあったので、予定どおりラーメン店に入る。
国道34号沿いにあり目立つラーメン店だけど、入店したのは初めて。
とんこつスープと生卵が旨い。
客が次々入ってきてたので、繁盛しているんだろう。
せっかくチームで走っているんだから、グルメを楽しむのも大事だよね!

武雄▶小浜温泉(60-140km)~桜を巡る

ラーメンでお腹を満たして、武雄からは国道34号・長崎街道をひたすら進む。ここから向かい風は更に強くなる。長崎・佐賀県境の俵坂峠の登りは、勾配は緩いが激烈な向かい風のせいで全然進まない。峠って普通は風が弱まるんだけどね・・・
この区間でかなり消耗してしまったので、たまらず峠を越えてすぐのコンビニで休憩。

串団子3本をその場で全部食べた

一旦落ち着いたあとは次のPCがある大村市へ進む。
日本の桜100選の大村公園で少し花見。
ソメイヨシノは三分咲きだったけど、その割には結構良かった。
走行距離この辺りでおよそ100km。案外稼げてないんだな~と思ったけど、決して遅れているわけではない。

大村公園で花見の後は、鈴田峠を越えて、諫早の中心部を抜ける。
風はやや弱くなってきたものの、交通量の多い道を走るのでそれなりに神経を使う。

この間もずっと前を牽いて頂いた。申し訳ないので前に出たくなるが、ここで無理してしまうと完走できない可能性が高まるので、心の中で謝りながらついて行く。

諫早市の森山図書館付近はかなり咲いていた
森山図書館からさらに進んだところにある桜並木。
隠れた名所。ここも咲いていてよかった。
(Photo by Kissy氏)

128km地点の橘神社(雲仙市千々石ちぢわ町)。
ここも少し満開にはまだ早かったけれど、十分に堪能できた。
森山以降はアップダウンが多かったが、補給はまだ足りている。大丈夫。

橘神社入口正面から

橘神社で花見をしていると日没が迫り、補給・食事の相談をする。
この先10km弱で小浜温泉があり、コンビニや食事処があるが、その先は20km以上何も無い。
「せっかくなので小浜ちゃんぽん食べたいね~」と意見がまとまり、1つ峠を越えて小浜温泉へ。

小浜温泉に近づく頃には日が落ちる直前だった

温泉街に到着して食事処を探すも、どこも営業終了になってて心折れかけたが、そんな中「ちゃんぽん」と幟があるお店を見つけ、迷わず入店。
なんとその店は居酒屋だったが、料理はすぐに提供されたし、味も美味しかった。(ビール飲みたかった)
個別会計まで応じてくれて、至れり尽くせりだった。

私は皿うどん(太麺)を注文。美味しかった

小浜温泉▶小城(140km-277km)~闇夜をひたすら走る

お店を出たらすっかり日が暮れていて、ここから本格的な夜間走行に。
よって写真も少ないが、コントロールでは写真を撮るのでそれを載せてゆく。

口之津港のベイカ船長
幸せの黄色いハンカチといえば大三東駅。
真っ暗な中でも海風に揺れていた。

ここまで千々石から島原半島を反時計回りに進んできて、口之津以降は追い風に変わり気持ちにゆとりができたけれど、多比良港をすぎたあたりから再度向かい風になった。
しかもかなりの強風だ。FUJIさんが先頭でゴリゴリ引いて行くが、ついて行くだけで精一杯。補給もままならない状況だったので、少し頭がぼーっとしてきた。
堤防道路の通過後は再び追い風に変わったけど・・・マジでキツかった💦

小長井のセブンイレブンで日付を跨ぎ、その後もたんたんと進み2時半頃、コントロールに設定していた小城市のデイリーヤマザキで休憩。
店内の照明は点いていたが2時から3時までは閉めていると張り紙があった。しかし店主のご厚意により営業してくれた。

てか、反射ベスト着用したサイクリングの5人組が深夜2時にコンビニに押しかけるなんて・・・相手からしたら情報量多すぎて困るよね。ゴメンなさい!

パンなど買って食べてると、なんと5人組のブルベライダーが!
どうやら、チーム「脊振登坂愛好会」ご一行のようだ。
ん・・・んん?ブルベなのにブロンプトンに乗ってる方もおられるではないですか😅
いやはや、なんという猛者だ・・・
お互い気をつけて、またナイスプレイスで会いましょう!
ナイスプレイスを目指す矢が一瞬交わった瞬間だった。

佐賀県内ではこのような橋がたくさんある

小城▶熊本(277km-363km)~最後まで冷静に

さて、そのデイリーヤマザキで277km地点。フィニッシュ予定は363kmなので、もう100kmを切っている。
あと7時間で96km走行すれば認定・・・ではあるけれど、終盤になればなるほどフレッシュ独特のルールに気をつけなければならない。

  1. 3台以上5台以下でエントリー可能。最低でも3台の車両がフィニッシュすること

  2. 走行距離は24時間で360km以上であり、かつ事前申告の距離より±20%以内であること

  3. 22時間目から24時間目の間に、25km以上を走行すること。

  4. 1回の休憩が2時間を超えないこと

特に気をつけたいのが3と4だ。
3に関しては、2時間で25km以上の走行は決して難しくは無いが、やはり懸念は事故や機材トラブルだ。もしくは睡魔に襲われて余計な休憩をしてしまう可能性もある。
いずれも、起こってしまったら仕方がないものの、3名以上が継続できれば、別れてフィニッシュを目指すことになりそうだ。

また4に関しては、仮眠時の寝坊に気をつけたい。24時間走行するので仮眠は必須だが、寝すぎはタイムアウトに直結する。

したがって、22時間目までに仮眠や補給などを全て済ませ、最後の2時間をどれだけ万全な状態で走れるかが鍵になる!しかもできるだけ5人全員が、だ。
そう、フレッシュとはいかにして22時間目を迎えるか。そこが最も大事になるんだと思い知った。

このルール、めちゃくちゃ面白い!
スタートからの徹底したタイムマネジメント、時に起こるトラブルへの対処、それにより失った時間を挽回できる走力、仮眠・休憩のタイミングと時間配分・・・これら全てが大事。ただ早く走れるだけではダメなんだな。
フレッシュがPBPより難しいといわれるのは、こういうところにあるようだ。

上記の内容をチームでも再確認し、22時間目までにどこかのジョイフルで食事と仮眠を取ろうという結論に至った。

ジョイフルがあったが、次のジョイフルまで引っ張るかどうか再度検討中の様子(Photo by FUJI氏)

結論、大牟田のジョイフルで1.5時半ほど食事と仮眠をとり、その後22時間目の地点まで進もうということになった。

しらす丼定食。数あるメニューの中から、炭水化物が多くて脂質が少ないものを選んだ。

食事を取り、わずかだが仮眠して少しはスッキリした。また睡魔がくるかもしれないけど、その時はその時だ。
店を出ると日が昇っていて明るい。いくつかコントロールポイントを消化しながら確実に進んでゆく。

早朝でも大牟田の市街地は信号ストップが多い
フィニッシュが近づき嬉しくなっている顔

そして午前8時、コントロール兼22時間地点となるコンビニを出発し27km先のフィニッシュ地点へ進み始める。

いきなり登りが始まり、結構長いが脚は十分残っている。熊本市に入り、国道3号に合流。これまたアップダウンのあるバイパス(自転車走行可)を走り抜けると、フィニッシュ地点のファミリーマート武蔵塚駅前店はすぐそこだ。懸念していたトラブルなどなく、無事にフィニッシュ!

フィニッシュ後~ナイスプレイスの打ち上げ

そして数km離れたナイスプレイスへと移動。
フィニッシュ手続きを無事に終えて、無事認定になりそうだ。

各地から矢のごとく集まったランドヌールたちとバーベキューで打ち上げ!
各チームの紹介も行われ、大変な盛り上がりだった。
このバーベキューではランドヌール同士の交流ができて本当に良かった。

結構ワイルドな焼肉だ。ノンアルビールで乾杯🍺
参加者のなかに馬刺し屋の社長がいらっしゃり、
阿蘇のあか牛を差し入れて頂いた。
この肉うますぎる
ナイスプレイスは桜が咲き誇っていた
完走記録のブルベカード

バーベキューの後は併設されている風呂に入り、在来線とフェリーを乗り継いで長崎まで帰り着いた。(武蔵塚駅までクソ激坂があった💦)
輪行中はさすがに寝ていることが多かったが、心はホクホクだ。本当に楽しかった。
そして数日フレッシュロスになった・・・

おわりに

今回フレッシュという、ブルベの中でも特殊なカテゴリーに参加したが、参加して本当に良かったと思う。
まだまだブルベ自体の経験は少ないので、経験豊富な方々と話すことで得られるものが多かった。
また、自分自身のレベル感もなんとなく分かってきた。

また、何よりナイスプレイスに集まって喜びを分かち合う瞬間がたまらない。
機会があればまた参加したい!と思えた。

おそらくそれは、今回トラブルらしいトラブルが全くなく、ほぼ計画通りに進むことができたからだと思う。
なんならしっかり3食を飲食店でとる余裕すらあったし、何よりチームのみんながとても優しく、「絶対喧嘩する」と聞いていたのが嘘のようだった。

最後に、
チームのメンバー、ランドヌール熊本のスタッフの方々、お会いした全てのランドヌールへ・・・
ありがとうございました😊!

-おわり-

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