【Mr.Bike復刻】みやもと春九堂通信 vol.10

 遂に連載10回目を迎えてしまった。いやはや最初はいつ「次回からいいですからー」と切られてしまうのかと戦々恐々としていたのだが、どうにかこうにかフタケタ台に突入。それもこれも読んで下さっている皆さまのおかげです。

 さて、記念すべき10回目だが、相変わらずぼくは太っている。あまり連載回数と体重は関係ないかも知れないが、やっぱり太っているのだ。

 そんなぼくが愛用しているヘルメットが先日壊れてしまった。といっても事故ったとかそういうことではなく、単純にアゴヒモが取れてしまったのだ。太り過ぎの結果、はち切れんばかりの二重アゴが、アゴヒモをはじき飛ばしたのかと思ったが、どうやら固定していた鋲が錆びたのが原因のようだ。少し安心した。

 早速新しいヘルメットを物色しはじめたのだが、ぼくは太っている上に頭がデカい。実にその頭周囲60cm以上だ。以前、事故で病院に担ぎ込まれ、CTスキャンで頭部を撮影検査したところ、担当医に「いやー立派な頭蓋骨ですねー」とよくわからない誉め方をされたことすらある。つまり太っているから頭がデカいのではなく、そもそも頭がデカい上に太っているという、割と手に負えない頭の持ち主なのだ。

 そんなぼくだからヘルメット選びも一苦労だ。簡単にいえばサイズがない。しかも下ぶくれなので形状を選ぶ。基本的にはジェットタイプか、かぶりの浅いものしか着用出来ないのだ。

 一度など専門店で「これなら大丈夫ですよ!大きめですから!」と自信満々に手渡されたフルフェイスヘルメットを試着したところ、まんまと脱げなくなるというマンガのような出来事が起こった。危うく『クマバン刑事2 デブ男鉄仮面伝説』という緊急ドラマ企画を立てて、ヨーヨーで悪の組織と戦う運命になるところだった。若い人にはわからないだろうなー。

 そもそも今を遡ること十数年前、免許センターに原付の免許を取得しに行ったときにもヒドイ目にあった。学科をなんなくクリアし、午後の乗車講習となったのだが「免許を取るような場所なのだから、さぞかしヘルメットも種類があるのだろう」などと高をくくっていたのが大間違い。

 現場には、いわゆる「おばちゃんヘルメット」が、ずらりと並んでいるだけだったのだ。しかもサイズはいずれもフリー。右を見ても左を見てもフリー。着用を試みてみるも耳までしか被れない。屈強なオールドスタイルプロレスラーによる強烈なヘッドロック並みの激しい締めつけに、無意識にタップしてしまうほどだった。

 二・三試してみたのだが、どれも同じで、指導員に相談したところ、違う種類のヘルメットを持ってきてくれたのだが、これもまたヒドイ締め付けのものであった。ベテランレスラーが若手レスラーに変わったくらいの程度である。締めつけが甘いぞグリーンボーイ! あいたたたたたた。

 しかし着用しなければ講習は受けられない。結局ぼくはそのヘルメットを装着し、一歩進む度に意識が遠のくような痛みの中で乗車講習を受けた。途中指導員が「顔色悪いけど大丈夫?」と尋ねてきたが、ぼくの意識は花が咲き乱れる川の畔に飛んでいたので「へーきへーき、らいろーぶれす」と、全然らいろーぶじゃない感じで力なく応えるのが精一杯だった——。

 そんな経験からも、ヘルメット選びには慎重になってしまう。しかしながら壊れたヘルメットで専門店をいくつも回るのは危険過ぎる。さてどうしたものかと悩んだのだが、インターネットの住人であるぼくは、オンラインショップという選択肢に解答を求めた。

 いくつかのオンラインストアを探すとXLサイズも結構あるもので、予算と相談しつつ数時間の選考の結果、最終的に二つ候補が残った。一つは今まで愛用していたヘルメットと同種同形同サイズのモノ。そしてもう一つは結構オシャレなクラシックのジェット型だった。サイズはともにXL。対応は前者が61~63cm、後者が60~61cmとあった。ここはできればオシャレな方を選びたいところだ。

 しかしオンラインショップなので当たり前のことながら試着は出来ない。購入は一発勝負だ。さりとてバイクは日常の足なのでヘルメットは早急に欲しい。それでも慎重の上に慎重を重ねるに越したことはないので、僕は改めて自分の頭周囲を計ってみることにした。メジャーを探して頭に慎重に巻く。測定の結果は……62cm。

 ぼくがどちらを選んだのかは、最早語るまでもないだろう。こうしてデブはまた一つオシャレの機会を失っていくのだった…ううっ(嗚咽)。


【脚注】

クマバン刑事2 デブ男鉄仮面伝説:元ネタは「スケバン刑事2 少女鉄仮面伝説」。昭和60~61年に放送された、女子高生刑事がヨーヨーで戦う割とアレなドラマ。

おばちゃんヘルメット:何故かラメっぽい赤のヒサシ付きのイヤーガード付き半ヘル。

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