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移住日誌 / 一ヶ月

最近の近況を残しておこうと思い立つ。

このところ慌ただしい日々を過ごしているので、言葉にして残しておきたい。僕の文章を読んでくれている人たちには、きっと素直な気持ちで言葉にできるような気がするのだ。


まちづくり

移住をしてからというもの、まちや人との交流がたくさん増えるようになった。もともと社交的な人間ではないので、まちの人たちは温かく迎え入れてくれて感謝する一方で、少し疲れてしまう部分も多くあった。

知らない人と出会うのはとても苦手だけど、バリスタとして接客業をずっと行ってきたからか、かなり上手に話をすることができるようになったと思う。それでもこの一ヶ月の間に多くの人と出会い過ぎたので、少しだけ休憩しようと思っている。

移住をしてから、つい先日初めてのイベントを開催した。これから新しくリノベーションを行うビルがあって、そこのオーナーと一緒に家財の搬出を行うイベントだった。もともとそのビルは50年以上前から賑わう割烹料理屋で、一階にはお寿司屋もあった。けれど時代の流れによって閉店され、管理もままならなくなってしまったので、その娘さんがビルごと売却を行うことになったのだ。

そうして新しく建築会社として独立される方が買い取り、リノベーションを行う前に家財や古材などを全て処分するため、お手伝いをすることになった。一階にはテナントとして飲食店が入る予定をしている。ビルのものは全ていらないと言うので、その際にいただいた本棚は我が家で使うことにした。コップなどの食器もかわいいのでお気に入り。


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もらった本棚
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かわいい食器


最近ずっと小津安二郎監督の作品を観ていたこともあって、戦後の昭和時代の雰囲気がとても好きなのだ。古道具にはじまり、古本に昔の映画。少しずつ好みの年代が遡っているのかもしれない。

イベントには午前と午後合わせると、15人ほど集まった。東京や愛知からもお越しくださって、かなり大変な作業もあったのだけど、賑やかに楽しく行うことができて何よりだった。日中は晴れて気候も良く、そして暑かった。埃を被りながら、お宝探しのように掘り出し物を見つけては、欲しい方は持ち帰ったりした。


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屋上の倉庫に眠っていた古いミシン台があって、それがとてもかわいかったので、ぼくも持って帰ることにした。中に入っているミシンがとても重たかったから、分解してミシンだけを取り出した。

レールにかかっていた皮紐?も捨てて、簡素な状態に。足台を踏むと、小気味よい音を慣らしながら、レールだけが回転するのだ。このミシン台に我が家の焙煎機を置こうと思っている。あとは、醤油差しや爪楊枝入れもとてもかわいい。


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来週には駅の展示スペースを活用して風景展を開催しようと思っている。市役所などから古い写真をお借りして、その風景といまの様子を自分で撮影した。それらを比較することで街の移り変わりを知り、歴史からいまを生きる繋がりを感じられるような展示会にしようと思っている。

半光沢の紙に写真を印刷し、スチレンボードを切り出して、展示用のパネルに。展示に必要な壁などは自分で古材を用いてビスを打ち込んで板を作り、塗料を使って白く塗り、ピクチャーレールから吊すことにした。いま市にまつわる歴史書物を読みあさっていて、写真に関連するストーリーの構想を練っているところだ。

来月の末には、東京から移住されて、新しくお店をはじめるピザ屋の塗装作業をイベントにしてしまおうと企画している。壁の塗装を手伝ってくれた方には、お店がはじまったらピザを一枚プレゼントして貰う予定だ。

そのあとは、8月末ごろに街の夜市を開催することに。コロナの影響もあって、2年くらい開催されていなかったから、とても期待されているお祭りだ。この街ではかなり規模の大きな夜市なのだけど、今年はその実行委員長となってしまったので、頑張りたいと思う。自分も出店しようかと考えているので、もしよかったら遊びにきてください。


読書・文章

5月はたくさん読書をした。本を読みたい気分であったというのもあるが、やっぱり本屋をやっていくなか、もっと勉強しなければならないと感じた。知らない本が多すぎるので、きちんと読んで伝えられるようにしたい。

そして、伝える上で大切なのはやはり文章力だろう。きちんとその内容について理解できているか。時代背景や作者の略歴についても押さえて作品を紹介できるか。そういう能力も培いたいと思った。

また読書感想文だけでなく、自分で物語を書く練習も続けたいので、今年もちいさな新人賞に応募はしようと思っている。今年は何次選考まで進むことができるだろうか。いつかは作家になる予定なので、楽しみにしていて欲しい。

5月の読書は、かなり多い。感想文として書いたものは少ないけれど、実は書いて下書きに残しているものも多かった。なんとなく、納得できない文章を出すのはよろしくないと思って、下書きのまま眠っている。


<5月の読書>

・『山の独創曲』 / 串田孫一
・『柿の種』 / 寺田寅彦
・『サラサーテの盤』 / 内田百閒
・『偉いぞ!立ち食いそば』 / 東海林さだお
・『にんじん』 / ジュール・ルナール
・『貝に続く場所にて』 / 石沢麻依
・『コモンの再生』 / 内田樹
・『街場の教育論』 / 内田樹
・『人新世の「資本論」』 / 斎藤 幸平
・『青葱を切る』 / 藤本徹
・『あまいへだたり』 / 藤本徹
・『今かくあれども』 / メイ・サートン(6月)
・『海がきこえる』 / 氷室 冴子(6月)


『山の独奏曲』、『偉いぞ!立ち食いそば』、『にんじん』については感想文を書いた。そしてデビュー作にて群像新人文学賞、芥川賞を受賞された石沢麻依さんの『貝に続く場所にて』も書いたのだけど、これがとても難しかった。内容も難しくなってしまったので、なんとなく下書きのままでいる。

門下生であった内田百閒や寺田寅彦からはじめ、夏目漱石の著書を今月はたくさん読みたいと思っている。次に読書感想文を書くとしたら、みすず書房さんからでているメイ・サートン著書『今かくあれども』だろうか。いまG・バタイユの『有罪者』を読んでいるので、それでも良さそうだ。けれど、今後はnoteには残さずに、お店のブログに書いていくかもしれない。

『海がきこえる』はとても大好きな作品だ。ぼくの生まれた時代の、古き良き青春が詰まっているように思うし、この作品から"海"について漠然とした憧れを抱いていた。また『海がきこえるⅡ アイがあるから』も再読しようと思っている。



詩人である藤本徹さんの詩集二冊『青葱を切る』、『あまいへだたり』は、siecaでも取り扱う予定にしている。藤本さんは日常の淡い風景に、そこに映る緩やかな感情の水面を描くのがとても上手だと思う。少ない言葉のなかから、ぼくたちの想像に委ねる余白と、その道筋を差し伸べるバランスがとても心地よく揺られていく。

寺田寅彦の『柿の種』もそうであるけれど、ゆっくりと立ち止まって味わいたい一冊である。もしよかったら、手に取ってみてくださったら嬉しいです。



焙煎

いろんなことをしていると、自分がバリスタであることをすっかりと忘れてしまう。本業はやっぱりコーヒーなので、これからも続けていきたい。

オンラインストアを新しくして、お店を再開するために焙煎の調整をしていたのだけど、なぜか焙煎機の調子が悪い。自分で調べてみてもうまくいかないので、焙煎機を購入したノルウェーの会社とやり取りをする。こういう時、まだ日本の代理店がないので英語での会話となり、修理が難しいことがとても不安だ。

以前も熱処理を行う部品が壊れてしまい、動画を送って貰いつつ自分で修理を行ったので、大変だったことがあった。今回はいろいろと調べてみると、温度の設定とモーターの回転比率に問題があったようなので、自分で直せるといいなと思っている。



移住した地域でも早速コーヒーを注文してくださる方も多く、取り扱っていただくお店も決まった。『アメリカヤ』という素敵なお店でsiecaのコーヒー豆を購入できるので、遊びにいらっしゃった際はぜひ。


また、先日は和歌山のensさんのイベント『山の植物屋』にて、友人の文香ちゃんがsiecaのコーヒーを使ってくれた。とても嬉しいことだった。


その時のブレンドを少しだけ販売しようと思っているので、そちらもぜひ楽しみにしていて欲しいです。とってもおいしいので、お楽しみに。


siecaについて

オンラインストアもいま再開をする予定で進めているので、少しだけお話しておこう。以前は城崎という地域も含めてお店のコンセプトにしていたから、改めて移住することを決めて、しばらくお休みをすることにした。

その間に、お店についていろいろと考えていた。自分で作ったものではあるが、あまり納得できていない部分も多く、どういう将来像を持って進めていくべきなのか、とても迷っていた。

コーヒーは、意外にも買ってくださることも多かったが、そこで出た利益は本の購入代に充てられて、利益という利益がでることはなかった。本ももちろん売れたけれど、そこでの利益というのは本当に微々たるもので、とても本屋として続けていくことは難しいように感じたのだ。

そしてもう一つには、自分の好きなコーヒーや本を、お金の対価としての商品と捉えてしまうことの違和感について。自分で取り扱うものでも、全てが自分で面白いと思ったものだけで続けることはできない。けれど、商品として売れるか・売れないかという二軸で考えることは自分には到底できないと思った。本の価値は、そこにはない。

取り扱うべきかどうか、という視点でコーヒーを楽しんだり、本を読むことの退屈さは本来あるべき姿ではないように思う。コーヒーがおいしいからお裾分けしたくなったり、本が面白かったから友達におすすめしたくなったり。そうした感情が根底にあることこそ、とても大切なことのように思うのだ。

もちろん、たくさんの人が行き交うような本屋であれば、その偶有性に委ねた方がいいと思う。それぞれの感性によって必要な本であるかどうかは変わるので、そこに店主の個人的なフィルターを関与させる必要はないけれど、いまのようなオンラインストアの形態であれば、また違った方法を用いるべきなのだと感じた。

さまざまな悩みはあれど、完璧な状態を求めることも難しいので、自分なりの暫定解を更新し続けながら、ゆるっとやっていこうと思っている。


日々

先日、友人の住む新潟県の妙高高原まで遊びに出かけた。関西にいた頃では思わず尻込みをしてしまう距離ではあったけど、いまとなっては意外と気楽に行けてしまう。

もともとバリスタとして京都で活躍していた仲間で、久しぶりの再開にとても楽しい日々を過ごした。昼にはみんなで流しそうめんをして、観光をしたり温泉に入って、その日は友人の経営するペンションに宿泊し、夜には郷土料理であるたけのこ汁を食べたりした。


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冬の時期には雪が大変に積もり、スキーで賑わいのある地域だ。3年ぶりくらいに再会したけれど、何も変わらなかった。会っていない時期も、それぞれの特産品を贈りあったりしていて、以前もギフトボックスを開けるとコーヒー豆とお米がセットになって入っていた。今回は旅のお礼に、本を贈ろうと思っている。

あっという間に過ぎ去った一ヶ月。気づけばすぐに一年も過ぎてしまうことだろう。やるべきことに、やりたいこともたくさんあるけれど、着実に何かが進んでいるようにも実感できた一ヶ月だった。

今月は既に体力がかなり減ってしまっているけど、まずはゆるゆるオンラインストアの再開ができるように頑張りたい。とりあえず、おいしいコーヒーを淹れてのんびり過ごすことにしよう。


ここまで読んでくださってありがとうございます。 楽しんでいただけたなら、とても嬉しいです。