ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

ディカプリオとブラピの初共演とか、タランティーノ最高傑作とか、賞レースにいろいろノミネートとか、ポジティブな意見が溢れていた傑作。しかもこれを推す人たちは結構な熱量で推してくる。自分もディカプリオとブラピ大好きだし、二人がスクリーン上で共演してるだけで十分なのに、監督がタランティーノだなんて、贅沢な作品だと思っていた。

鑑賞前のイメージでは、ディカプリオ演じる落ち目の俳優とそのスタントマンの友情がコメディタッチで描かれ、二人がシャロン・テート殺害事件に巻き込まれていく…みたいなストーリー展開だと思っていた。でも実際に見てみると、ストーリーらしいストーリーはほとんどないし、ラストも「あれ、そうなの?」って感じで、すごく拍子抜けした。そりゃ確かに二人のキャラクターは最高だった。自分はブラピの方が好きなので、ブラピ演じるクリフ・ブースはいつも冷静だし、自由で強いし、とにかくかっこいい。ラストのシークエンスもかなりバイオレントだけど痛快だったけども。

マリリン・マンソンの信者みたいな人たちが、妊娠してた女優のシャロン・テートを殺した、彼女はロマン・ポランスキーの奥さんだった、ということくらいしか時代背景の知識がないのが悪かったのかも。そう思って、ネットで情報を漁ってみた。

まずは公式情報

予告編


ハリウッド黄金時代の空気を完全再現!『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』特別映像

キャストのインタビュー映像を切り取りながら、時代背景について簡単にまとめられている。

(日本語字幕)ブラピ&ディカプリオ 二大スター共演 映画“ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド”インタビュー


こちらはディカプリオ、ブラピ、マーゴット・ロビーが三人でインタビューを受けている映像。仲が良さそうで微笑ましい。彼らの見てきた映画の話、「トゥルー・ロマンス」のブラピの役の話、「バーズ・オブ・プレイ」でタランティーノイズムを持ち込もうとしていた話など。

ネタバレなし!映画を観る前にチェックしておくべき情報

ディカプリオ×ブラッド・ピットは「10年で最高のキャスティング」 タランティーノ、新作に自信
LAプレミアでのインタビュー。キャストの今作に対する意気込みが伝わってくる記事。

【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド】見る上で必須な予備知識講座 シャロンテート殺人事件とチャールズマンソンについて

シャロン・テートの事件とチャールズ・マンソンのことについて簡潔に解説されている。

【シャロン・テート殺人事件】ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 予習 復習 補足【ある三部作の最後の作品となる】

こちらでも時代背景について分かりやすく解説されている。他にも、タランティーノ前作の「ヘイトフル・エイト」への言及、ロマン・ポランスキーの監督作への言及、そしてタランティーノのリベンジファンタジー三部作の最後の作品として、他の二作品の簡単な解説もされている。

「THE RIVER」の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」特集

ウェブマガジン「THE RIVER」による映画特集。全ての記事が、すごい熱量で詳細に解説されてる。この映画の情報はこれだけで十分と言っても過言ではない。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』リック・ダルトンを追って ─ 1969年アメリカ、映画と時代がうごめく頃
映画の舞台となる時代背景の中で、アメリカの映画産業と国の情勢について詳細に解説されている。映画の内容そのものにはほとんど触れていないため、予習の読み物としてオススメ。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』徹底予習 ─ シャロン・テート殺人事件とチャールズ・マンソンとは
映画の肝であるシャロン・テート殺人事件とチャールズ・マンソンについて、これでもかというくらい詳しく解説されている。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のためのタランティーノ完全ガイド ─ 渾身の集大成、その軌跡が丸わかり
タランティーノがこの作品にたどり着くまでの軌跡の解説。
ここで書かれている以下の一文は、深く刺さった。

『イングロリアス・バスターズ』で戦争を、『ジャンゴ 繋がれざる者』で奴隷制度を、『ヘイトフル・エイト』でアメリカという国を、それぞれ映画というフィルターを通して見つめたタランティーノは、いよいよ映画を通じて映画を、ハリウッドを、ひいては映画史を語るのである。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』トリビアぎっしり最強ナビ ─ レオ&ブラピ奇跡の共演が象徴するものとは
この作品の製作背景についての解説。

【旅レポ】世界のインフルエンサーと共に『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』巡り ─ THE RIVER編集長のLA紀行
こちらは番外編というか、映画の舞台になったロサンゼルスの旅レポ。読み物として、旅レポとしてかなり面白い。

TBSラジオ「アフター6ジャンクション」でのタランティーノインタビューより。
ーこのテーマを取り上げたことについて
・60年代後半から70年代はハリウッドが最も変化した時代であり、そこを掘り下げるのが面白いと思った。それも、変化に取り残された傍観者の視点から描きたかった。それを象徴しているのがこの映画の主人公二人。
・当時、流れに取り残された映画俳優には、テレビ業界に行くか、海外の映画業界に行くかの選択肢があった。ディカプリオ演じるリック・ダルトンもそのようにして仕事を続けている。

ーキャラクター造形について
・リックには「スティーブ・マックイーンになれなかった男」というテーマがある。
・三人のメインキャラクターは、ハリウッドの異なる側面を体現している。シャロンは前途洋々で、夫のロマン・ポランスキーも当時最も成功している映画監督の一人だった。常に可能性が開かれている存在である。リックは自身が思っているよりは上手くやっているが、未来の展望が見えないせいで前向きになれない。クリフはエンタテインメント業界の中でずっと生きてきて、働いているのはハリウッドだけど住んでいるのはそこから高速道路を3つも乗り継いだ郊外のトレーラーハウス。なのに、リックよりもいい環境で生きているように見える。それは、彼が戦争でかなりタフな経験をしてきたということも根底にある。

ーストーリーにあまり起伏がないということの指摘について
・この作品にはキャラクターのユニークさと街並みの美しさという魅力があり、あとは最後にどんなことが起こるかみんな知っている。だから、登場人物がただ3日間を過ごすだけで十分ドラマチックになると考えていた。

ーシャロン・テートの事件を知らない人が見ても楽しめる?
・登場人物が十分に魅力的であれば、たとえ歴史を知らなくてもその映画を楽しめると考えている。

ーこの作品で描きたかったシャロン・テート
・シャロン・テートは事件の被害者という記憶のされ方をしているが、そうではなくて彼女にも素晴らしい人生があり、輝いていた女性だったという側面を描きたかった。自分が出演した映画を見に行って、心の底から楽しそうにしている姿を描いたというのもそのため。

ー農場シーンの分析
・タランティーノの映画には宙吊りになったような、引き伸ばされたシーンがよく出てきて、それが作品の面白さにもなっている。「イングロリアス・バスターズ」の地下のシーンもそう。どれくらい引き延ばすのがちょうどいいのかは監督も分かっていなくて、脚本を書いた時点では自分でも長すぎるとも感じた。輪ゴムを伸ばせば伸ばすほど緊張感が生まれるのと同じ。農場のシーンは、それまでストーリーらしいストーリーがなかったところにいきなり目的地が分かったような感覚になること、そして観客がマンソン・ファミリーを知っていれば、あのタイミングで観客はリックは死なないだろうと思っていても、クリフは死ぬかもしれないと不安になるから、一気に緊張感が高まると考えた。

2020年1月30日追記
公式書き起こしを発見!
宇多丸とタランティーノ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を語る


ネタバレあり!映画を観た後はこちらで復習を。

さて、ここからはレビュー動画を紹介。

【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド】タランティーノ・ディカプリオ・ブラッド・ピッド・サイコー!【チョメチョメクラブオオシマコラボ】【シネマンション】

この中で面白かったのが、タランティーノは「イングロリアス・バスターズ」「ジャンゴ」に続く本作で、映画作りの手法を確立したんじゃないか、という考察と、昔の映画が好きなだけじゃなくて、自分の映画も大好きなんだ、と考察している点。これはすごく分かる!

【ネタバレ】『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』リック・ダルトン、その後どうなったのか ─ タランティーノが語る
がっつりラストについて言及されているので、絶対に映画を観てから読むべき。でもそれ以外は特に特筆すべきことはなかったかなぁ。

まとめ

「ワンス・アポン・ア・タイム…」は「昔々、あるところに…」と訳されるように、おとぎ話の冒頭である。つまり、この映画もそういうことだ。
現実の世界を舞台に、タランティーノ流の映画史のおとぎ話が描かれる。そしてその背景には、シャロン・テートという悲劇の犠牲者である女性の光輝く部分を描き出そうという優しさがある。同時に、マンソンファミリーによる事件は、アメリカ国民の心に暗い影として残っているが、それに対する逆襲というか、せめて映画の中ではやっつけてやろうという意気込みがある。

そう考えると、この作品は大傑作だな。

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