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私が認知症になっても♫

【ことしもまた、新たなえにしを結ぶ会'16】
 第2部 「認知症になっても精神病院に入れないで!」

                      2016年5月14日

2016年4月16日土曜日に開催された「ことしもまた、新たなえにしを結ぶ会'16」、私、高木が登壇した第2部の発言をテープ起こししてもらいました。それに少し手を加えて読みやすくしましたので、ノートに掲載します。
もとの動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=TkqcF6NHhbo&feature=youtu.be

「白雪姫の毒リンゴ、知らぬが仏の毒みかん」はこっち。
http://www.yuki-enishi.com/ninchi/ninchi-35.pdf
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【私が認知症になっても ♫ 】

 私は老人医療や認知症の方々のサポートについては、ちっとも専門ではありません。その私が、なぜ今日ここに呼ばれたかというと、新オレンジプランに非常に腹が立って、こいつをとことん批判した文章を書いたんです。それがゆきさんの目にとまりまして、呼ばれたんだと思います。
 今日はそのオレンジプラン批判の話したらいいのでしょうが、ちゃんと話すと時間がなくなって、もっと皆さんに訴えたいことが言えなくなってしまいます。ですから、もし詳しい内容に興味がありましたら、えにしの部屋にアップされていてすぐに読めます。 この文章、題名が「白雪姫の毒リンゴ・知らぬが仏の毒みかん」、オレンジプランなんでみかんです。ネットで、「ゆき 毒りんご」と入れて検索Go!、これですぐ出てきます。「ゆき 毒リンゴ」検索Go!、大熊のゆきさんが毒リンゴ持っているところ想像したら、すぐに覚えられて、すぐできますね。
  それとお願い。今現在、私、本業の方が診療報酬の改定でちょっと大変なことになっとるんです。そんなときにこんなことしゃべりにやってきましたんで、哀れと思ったら本は買ってくださいね。(会場笑い)
  皆さんはあまり精神医療のことって知らない方が多いと思います。それで、日本の精神病院の状況についてひろっちゃんに解説してもらっていますけども、ちょっと付け加えます。 どうして日本だけ、こんなに精神病院が多いのか。精神病床数35万床ですが、これって、皆さんが骨折したりして普通に入院したりする日本の病院ベッド全部の4つに1つですよ。ベッドの4つに1つが精神科のベッド。病院の数にしたら1200ぐらい。なぜこんなことになったのか。どこにそんなにあるんじゃ?と思うでしょうね。たいがいが山の中、人目につかないところにあります。
 なぜそんなにつくられたかというと、高度成長を起こすための政策なんです。高度成長を日本で起こすために、人口の移動を起こさないといけなかったんですね。人口を移動させるためには障害者を閉じ込めないといけなかった。だから高度成長を起こそうとした1960年から1970年までの間に、日本の精神病院は一気に30万床も増えたんです。 それだけいっぺんにたくさんつくるために、医者と看護の数は少なくてよい、国からは簡単に資金が貸してもらえるなど、とことん安上がりにつくれるようにしました。その当時、実は日本って規制緩和の先進国だったわけです。それで、病院ではなくて収容所みたいなモノがたくさんできてしまいました。

認知症にならんと思っていても、そりゃムリ 

 こうやって人口を都市に移動させて賃金労働者にする。それで産業を起こして高度成長させる。どんどん成長していくためには、賃金労働者が常に資本の自由に使えるようにプールしておかなくてはならない。これはマルクスの言葉で言うと「産業予備軍の創出」なんです。「産業予備軍の創出」という資本の働きの結果がそのままあらわれたのが、今の精神病院の多さなんですね。資本のための労働力プールということでは、現代の非正規雇用といっしょです。
  そういうプールをつくるために、障害者を閉じ込めて、人口が都市部に移動しやすくする、家族が働きに出やすくする。その成果として、日本は高度成長を成し遂げています。 そうやって成し遂げた高度成長ですから、その結果、何が起こったかというと、障害者、ことに精神障害者が社会の中にいなくなりました。高度成長の実現は、イコール、精神障害者が目の前にいない社会です。
  精神障害者が目の前にいなくなって、私たちの今の社会はそのことでしっぺ返しを受けています。どんなしっぺ返しかというと、1つは自殺の多さ。精神障害を持った人、うつになった人にどう対応していいかわからないから、死ぬに任せちゃった。
  もう一つあります。それが今日の話題です。 認知症の精神病院への入院です。認知症になると、ごく普通に幻覚や妄想が出ます。 私は認知症にはならんと思っていても、ムリです。皆さん、脳トレとかやってないですか? でお脳みそ、筋肉じゃありません、ムリ。そして認知症になると幻覚や妄想がすぐに出てきます。
  私はとても整理整頓が得意でものなくすようないいかげんな人ではない、そう思っていても、認知症になったらすぐにものの場所がわからなくなります。自分がなくしたと思うとプライドが保てませんから、誰かが盗ったんだと思い込む。息子も孫も最近冷たい、ちっとも来てくれないと悩んだあげく、あれ、今日はそこに来ているじゃない、何を遠慮してるのよ、出てきなさいよ、ちゃんと見えているわよ、って幻覚になったりする。お父ちゃんと早く別れたい、こんな父ちゃんと一緒にいるのはイヤだと思ってても、そのお父ちゃんにかわいらしい女の子が介護についたりすると、「キーッ、夫が浮気してる」なんて妄想もありますね。私たちの生活や思いの中には、いくらでも幻覚妄想の種があります。ちょっとしたきっかけ、それが認知症という脳の機能の一部の衰えであっても、すぐに幻覚や妄想が育ってきます。
 でも、いったん幻覚妄想として出てきてしまうと、幻覚や妄想とどうお付き合いしていいかわからない社会をつくっちゃった私たちは、お手上げです。ケアマネさんもお手上げ、内科医もお手上げします。 そうしたら精神病院に行けになります。 人口移動を起こして高度成長をするために、日本は精神病院大国になった。その結果がこういうことなんです。 

 そうして今現在、高度成長の時代なんて終わりました。終わると何が残るか。インフラの老朽化です。トンネルも橋も修繕が大変ですよね。 老朽化がモノだけだったらいいんですよ、モノだけだったら。実は、労働力商品も経年劣化してきました。皆さんは自分の労働力を資本に売って生活しているんです。それを労働力商品といいます。その商品の保持者が高齢化すると、その商品も老朽化、劣化します。 これをごく普通の言葉で言うと、「高齢化社会が来た」ということなんです。 資本主義の言葉で言うと、「労働力商品が経年劣化した」ということ。
 商品としてのモノが経年劣化しちゃうと何が必要になるかというと、産業廃棄物処理です。産廃処理。皆さんが今現在直面している問題、皆さんがこれから自分自身の身に受けることは、産業廃棄物処理なんです。

産廃業者のゴミ分別で新オレンジプラン

  その産業廃棄物処理の中でも、特殊なものがあります。精神障害という今の世間や医療の中で特殊なものとされているカテゴリーから生まれるものです。この障害が高齢になってから現れると、特殊産業廃棄物になります。 そういう廃棄物をいろいろ扱うためにはね、産廃物分別業者が要るの。産廃物分別業者。 この産廃物分別業者の代表が精神医療、そしてその分別された特別の廃棄物を受け入れる処理場が精神病院なんだわ、これが。
  彼ら特殊産業廃棄物業者にとって幸いなことに、日本はそうやって精神病院が精神障害を隠してしまった社会だから、何か問題があれば、とにかく精神病院に入れればいいんだということに人々の認識が一致している。それが認知症であろうが、人格の問題であろうが、トラウマの問題であろうが、精神病院に入れときゃいいんだということになっている。発達障害であろうがそうです。精神病院に入れればすべてが解決すると考えて疑わない。そういう仕組みになっちゃっているんですね。 だから産廃業者は大もうけ。
  産廃業者にとって都合のよいことに、とにかく精神病院に入れるためのゴミ分別の理由は事欠かない。今回はさらに、新オレンジプランというやつができました。精神病院が認知症治療の司令塔になる、つまり中心になってやれって堂々と言っているんですね。
  この新オレンジプランというやつは、自民党が最初に情報をキャッチして、公式なものになる数日のうちに書き換えさせました。それどの議員が書き換えさせたかとか、そういうこともちゃんと最初に紹介しました「毒みかん」論文に書いておきました。「ゆき 毒りんご」Go! です。ぜひ読んでください。
 その中にも書いたのですが、日本の精神病院の集まり、産廃分別業者の親分である日本精神病院協会の会長がしっかり計算しています。認知症は800万人、そのうちの5%が今の日本では精神病院に入れないとやっていけないだろうと見積もっています。それが45万人。精神病院は今35万床です。 35万床の精神病院しかないところに、これから45万のゴミ袋が持ち込まれてきます来ます。
  そうしたら、ただでさえ、これから焼き場が足りない、病院のベッド、死ぬためのベッドが足りない、そういう時代なんだけど、認知症を入れるベッドが足りなくなるじゃないかということになりますよね。もちろん今のままのケアの考え方をしていると、です。 今、厚生労働省は海外の様子も気にしていて、精神科のベッドはどんどん減らさなければならないと、これはまともなことを言っています。
 しかし、あと5年耐えろ、と日精協は言っています。ベッドは減らさずに、あと5年耐えたら団塊の世代という大顧客が来ると。 すごいですね、団塊の世代。 そもそも35万床というベッドが60~70年代に団塊の世代に合わせてつくったサイズなんですよ。精神病の発病好発年齢というのは二十歳台ですから、二十歳になった団塊の世代が当時次々と発病しました。それを入るためにつくられたの、多くの精神病院は。

お客様は団塊の世代

 その時代、さんざん精神障害者を野放しにするななどといって、自分たちの仲間を精神病院に放り込んできたんだけど、次は自分の番。団塊世代がそうやって、これからどんどん精神病院に入っていきます。 そういうことを今、精神病院は、ちゃんと言ってます、やってます。ちゃんと計画してます。
 そして皆さんが産業予備軍として創出されて、この都会に集まってきた皆さんが、これから産業廃棄物になるというのは、これは歴史の必然ですから、変えようがありません。 だから皆さん、絶望が足りないんです。 全然絶望が足りない。この必然のなりゆきに対して。
 じゃあどうしたらいいのかということです。 半世紀前、産業予備軍として、金の卵とかおだてられながら都会の貧困な生活の中にやってきた人たちが、その貧困の中で耐えかねて、「私たちは人間だ」と言いました。そして福祉国家ができたんです。これはイギリスでもどこでも同じです。「私たちは人間だ」と産業予備軍が言ったんです。だから世界中どこでも産業国家は福祉国家を作らざるを得なかった。
 だが、今ではどうなっているか。その福祉国家がもう崩壊しかかってます。だから今、産業廃棄物である皆さんは、「私たちは人間だ」と言わないといけないんです。
  どうやって言ったらいいんだ。それは私にもわかりません。どこに何を言ったらいいんだ。わからないです。 私はない知恵をしぼってただ1つだけ、これはやるに値すると思っていることがあります。今日皆さんに訴えたことはそれです。

私が認知症になっても精神病院に入れないで、リヴィング・ウィル運動 

「私が認知症になっても精神病院に入れないで、リヴィング・ウィル運動」!
 皆さんね、自分の土地財産をどうするとか、そんなこと遺言に書いている場合じゃないですよ。そんなことを銀行に言ってるヒマじゃない。「私が認知症になっても精神病院に入れないでください。」この1行を必ず入れてください、リヴィング・ウィルに。
  この運動を全国的にしましょう。そうしたら精神病院はもたない、つぶれます。そこからゆっくり、何でも簡単に解決してくれるために、誰もがつい頼ってしまってきた精神病院をなくしてからゆっくり、地域で考えましょうね。そうすることでしかできないです。
 そんな運動、できるのか? できます。もうテーマ曲も考えました。 高森千里(※注)という人が「私がおばさんになっても」という曲を歌っています。これね、うまいこと変えれるんですよ。
 「私が認知症になっても家にいさせてね」と。 次のフレーズは「とても心配だわ、あなたは精神医療知らないもの」です。皆さんの資料にこの替え歌の歌詞を書きましたので、帰ったらYouTubeで探して、一緒につぶやいてください。歌ってください。
  さっきもう1つ作っちゃいまいた。 「私が認知症になったら、どうせあなたも認知症。(会場笑い)かっこいいこと言っていても、どうせみんな忘れるわ」
 こういうテーマ曲をつくること、無理だと思わんでください。高森千里(注1)もね、もうすぐ認知症になります。おばさんですから。そしたらだまして安いギャラで歌ってもらえますから。
 頑張りましょう、えにしの皆さん。
 はい、終わらせていただきます。(会場拍手) 

※注1:「高森千里」、実は「森高千里」。私は気づかずに覚え違いをして高森と呼び続けていたが、このあとの討論で認知症をにんずる中村成信さんに訂正され、会場の爆笑をかった。

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