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米は禁止検討...揺れ動くTikTokの海外展開に日本はどうする?

インド政府がTikTokの使用禁止を発表

インド政府は6月29日に59のモバイルアプリの使用禁止を発表しました。その中に、中国発の人気アプリTikTokも含まれていたことから、大きな話題になりました。名指しこそはしてないものの、59のアプリが全て中国アプリであったことから、中国を意識しているのは間違い無さそうです。「ユーザデータを盗み、インド以外の国に送信している」という報告があったことをインド政府が禁止の理由にしています。元々、インドのアプリ市場は中国発のアプリがランキング上位を独占するなどかなり勢いがあったのですが、このところインド国産のアプリもかなり力を付けてきており、インドと中国のアプリ競争は激化しています。
また、政治面では6月15日に両国の国境地帯で、両国軍が衝突し、インド兵が20人以上の死亡したことから、緊張状態が続いています。

バイトダンスは2019年4月、インドに向こう3年間で10億ドル(約1075億円)を投資すると発表しており、現在、インド法人の社員数は2000人を超える。

インド「中国製アプリ禁止」でTikTokに大打撃

TikTokは中国のみならず、海外展開に積極的でとりわけ、インドは海外市場でも最も力を入れていただけに影響は大きいようです。昨年の時点でインドでのMAUが2億人に達していたと言うからかなりの規模です。人口の差があるので比較対象としては、あれですが日本で最もMAUが高いと言われるLINEのMAUが8000万なので、非常に大きい規模だということがわかると思います。

アメリカ政府もTikTokの禁止を検討

7月6日にアメリカのポンペオ国務長官がアメリカ国内でのTikTok使用禁止を検討していると述べたと報じられました。実はアメリカではしばしば、TikTokの個人情報が取りざたされています。昨年2月に13歳未満の子どもの個人情報を違法に収集していたとして、米連邦取引委員会(FTC)との和解に応じて、570万ドルをTikTokがFTCに支払ったとも言われています。COPPAと言われる児童オンラインプライバシー保護法では13未満の子どもの情報を収集する際には親の同意を義務化しているのですが、TikTokが保護者の同意なく、メールアドレスなどの個人情報を取得していたようです。
また、アメリカ軍で公務中の使用や配布端末でのTikTok使用の禁止が通達されるなど、アメリカ政府がTikTokをかなり警戒している様子が昨年の動きから見て取れます。
個人情報とはあまり関係ないですが、6月に行われたトランプ大統領の大統領選に向けた大規模集会の参加者が予想より遥かに少なかったのは、TikTokで「予約だけして、参加しない」ムーブメントが起きたことが原因とも言われています。

「クリップボードの内容を取得している?」と話題に

最近、大きく話題になったのが、クリップボードの内容をTIkTokアプリが取得しているではないかというものです。クリップボードとはテキストをコピーした時に一時的に保存される場所のことを指します。つまり、コピーしたパスワードや住所や電話番号などの秘匿性の高い情報も、クリップボードから、アプリ側でも取得できてしまうということです。そういう情報って乱数字だったりするので、コピペしている人は多いのではないでしょうか。

クリップボードの内容をリアルタイムで取得していることを可視化した動画が海外で話題になりました。「TikTok pasted from Instagram」というメッセージバナーが画面上部から度々現れます。今秋のアップデートを予定しているiOS14の機能で、プライバシー保護の観点からアプリがクリップボードの内容を取得している時には通知が出るようになりました。なお、TikTok側はこれらの挙動はスパム検知のために起こる挙動で、すでに修正したバージョンを申請したと報告しています。正直、こちらの真偽のほどは分かりませんが、このようなことが話題になることから、欧米諸国の人たちがユーザレベルでも、TikTokにかなりセンシティブになっていることの現れかもしれません。

日本でTikTokはどうなる

アメリカに引き続き、オーストラリアも禁止を検討、香港では香港国家安全維持法(国安法)の施行を受けて、TikTok側が自主撤退など中国国外で大きく揺れ動いていますが、日本はどうなるでしょうか。

2018年第四半期のMAU(月間アクティブユーザー)が950万となり、順調にユーザー数・ユーザー層ともに拡大しています。

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日本でも、中高生から人気に火が付き2018年末の時点でMAUが950万にたっしていたことを考えると、今はさらに成長していそうです。TikTokの最初のイメージだった「高校生が教室で踊っている」ような動画だけでなく、How Toやお役立ち動画なども増えてきているので、リーチ層も大きく拡大していそうです。
日本では海外の動きとはある意味、対局的です。自治体との連携を積極的に図っています。横浜市とは防災分野の連携協定を結び、防災啓発動画の共同制作を行ったり、栃木県はTikTokでのPR動画「#Tochigitok」を制作してPRに活用しています。今のところ、行政とTikTokは良好な関係にも見えますし、TikTokの日本法人も積極的に人材を採用しているので、TikTok側が日本市場からすぐに撤退という状況でも無さそうです。インド、アメリカという大きな市場を失ってしまうTikTokは、さらに日本にリソースを投入していく可能性もあるかもしれません。
TikTokはマーケティング戦力が非常に上手な会社で、中国企業では珍しく海外展開に積極的な企業なので今後、どういう海外展開を取っていくかは注目です。