朝のおしっこ

 小さいころに小児ネフローゼに罹っていて入院していた時におしっこを尿瓶に取り更にそれを尿タンクに貯めて看護師さんが毎日その貯めたタンクで蛋白やその他、尿で今の自分の体の状態を調べることが出来ることは検査してくれていた。大体午後3時4時くらいにタンクは空になりまたそれに尿瓶でおしっこを取ったら貯めていた。病院での生活は一般的な家庭生活とは違うがそれに遜色ない感じで過ごしていたように思う。食事、睡眠、入浴、娯楽(将棋、カードゲーム、ゲームボーイ、テレビ、漫画など)院内学級もあった。
 自分には何とも言えない楽しみがあり、他の自分と同じようなネフローゼの患者さんはわからないが、透明で綺麗なおしっこを大量にタンクに貯めるということに没頭していたことがあった。 自動お茶マシーンは冷たいものであったが、給湯室ではお湯も確保できた。大量の水分を摂取して沢山タンクに自分のおしっこを貯めた。24時間中におよそそのタンクは容量が3リットルとかでいっぱいになるのでそれ以上になる時があるほどおしっこをしたりした、しかもかなり透明な。もったいないが入りきらないおしっこは小便器に流してしまうほかなかった。入りきらない場合はどうするのか、看護師さんに聞いたこともあった。30代後半の今いくら大量に摂取してもあれ程綺麗な透明なおしっこはもう自分から出てこないと思うと少し寂しい。今考えると何でも楽しんでいた自分がいたことが懐かしい。秘かな楽しみ。
 おしっこに蛋白が混じっているとおしっこがなんだか泡立ち易くその泡がずっと残って消えない。病気にかかってしまってその習慣がついたせいかおしっこをする時に泡立っていない余り濁っていないかなど今もかなり気にしている。それは朝一番のおしっこだと尚更だ。今現在少し茶色い泡が残る自分のおしっこはそれ相応のおしっこであると思っているし、もうあの頃のような薄いレモン水のような綺麗で透明なおしっこは出てこないと思うと何とも言えないが、だからといって無理やり水分を取りまくってそれに近づけようとも思わない。あの頃は冷たいお茶も沢山飲んでいたが、途中でしんどくなり止めた。幾分かは楽しめた。タンクに綺麗で透明なおしっこを貯めて、今日はこれくらい貯めているなあ、と静かに眺めている時の朝のあの気持ちはなんとも誇らしくあったのを今更ながら思い出している。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?