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虚無である

わが家の給湯器の操作パネルの上の今日の主役です。
まあ見てお分かりでしょうガチャのフィギュアです。

年寄りの一人暮らしの部屋に、
こんなかわいいフィギュアは不思議でしょうね。
私も不思議です。

これまでフィギュアだけでなく、可愛らしいものとはまったく
無縁で過ごしてきた身にはまさに青天の霹靂。
実はガチャ自体もこの二回の経験しかないのですから、
このフィギュアとの出会いは間違いなく「特別」だったと思いますし、
実際このふたりは殺風景な部屋に柔らかな空気を放ってくれています。

彼らについて軽く説明すると、
左の猫は、どうやら「へこむわ寝」というシリーズの猫だそうで、
そう言われてみると納得のへこみっぷり。
先生に怒られ、しょげてた同級生を思い出します。

右の立っているウサギは、先週やってきました。
「虚無。」というシリーズのウサギです。
この虚無シリーズに付けられたコピーが、「ただ、そこに居る・・・」。
ただここに居るウサギの佇まいが虚無かどうかは分かりませんが、
「へこんだ」猫と「ただ、そこに居る」ウサギのコンビは、
なかなかバランスのとれたコンビになりました。

私にとって「虚無」と言えば、カムカムエブリバディの
松重豊さん演じる伴虚無蔵なので、虚無というガチャを見つけたとき、
並ぶフィギュアの中に虚無蔵の枯れ木のような姿を探しました。
が、大人の問題か、はたまたガチャを愛する人に虚無蔵は人気ナシなのか、
残念ながらその姿はありませんでした。

でもこの虚無ウサギの佇む姿を見たら欲しくなったのです。
今の心持ちが求めたとでも言うのでしょうか、
もし夜、私の傍に彼がいたら・・・、
きっと「キミも大変だね」と思わず肩を組みながら言いそうですし、
(このすぐ肩を組むのはまさに昭和のおじさんですが)
「この後一杯どう?」と思わず誘ってしまうでしょう。
(すぐ一杯誘うのもまさにTHE昭和です)
そして一杯やりながらウサギが語る人生の苦悩に「分かるワ-」と
大きくうなずいている気がするのです。
(こうして酒場で人生を語り合う人、昭和にいっぱいいました)
ましてや意気投合した二人の横に、へこんでいる猫がいようものなら、
しょぼくれた三人の男が、年代は違えど地味な酒場で愚痴をこぼしながら、
溜まりに溜まったうさを晴らしている。
そんなThis is SHOWAな光景が展開されそうです。

この2つのフィギュアとの出会いは、
フィギュアというものに、知識も理解も同情もなかった私に、
これだけガチャが愛されている理由を教えてくれました。

一人暮らしの身ながら、
私は寂しいという思いを抱くことはそうありません。
でも、自分では気づかなくても、心には隙間とか傷が出来ていて、
それが思わず乾いたり、崩れたときに、
空虚な所を埋めてくれたり、痛みを緩和してくれる、
まさに「分かってる」心の友となってくれたのです。

ふと横にいる友として、
テーブルの上にちょこっといる、
ほんの数センチのフィギュアと目が合ったとき、
「ニコッ」と笑ったり、
「オイ」と話しかけたりする瞬間は、
まさに癒やされ気分の頂点です。
(ただし他の人にその姿は見られたくはないですが)

男女、年代を問わず、幾枚かの百円玉を投入し、
誰を引き当てるか、ドキドキ気分で、ガチャガチャ回し、
その先に待つ至福の時に心を膨らませるのは、
わずかな贅沢が許される至福の時といえるでしょう。

70を過ぎて父母が小型犬を飼い、赤ちゃん言葉で話しかける姿は
わが家の終末を感じたものでしたが、孫を持つことのなかった両親の
あの情けない姿さえも、理解できるようになったのも、
すべて「へこむわ寝」と「虚無。」のおかげです。

わが家の親友たちも今日も給湯器の操作盤パネルの上で、
虚無ったり、へこんでい続けています。

でもやはりどうしても物足りない。
やっぱ、伴虚無蔵ないかな?と念じ続けたら、
なんと、新しいメンバーが参入しました。

「合掌」というシリーズの犬。
こいつはデカイです。

新参者ながら、これもなかなかの心を打つ姿です。

深い!と叫んでしまうガチャの世界です。

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