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ひとりの女オタクは2.5次元から舞台を知った

筆者は2.5次元から初めて舞台に触れた女オタクである。
一月前に投稿したエントリ「刀ミュで人生がめちゃくちゃになった」では過分な評価を頂き、noteさんの公式Twitterアカウントで紹介されるに至ってしまった。

なんで?????
本当にアレ紹介して大丈夫?????
そこそこ整えたとはいえ、オタクの語彙丸出しの文章が全く埒外の方向と視点から見分されると言うのはなんとも言えずむずむずした。
今もちょっとしてる。Pixiv(*1)でも文章でこんなにブクマついたことなかったから……

要らない前書きだが、筆者が精神安定を図るための情緒の整理だ。ユルシテ……ユルシテ……
ではその前書きを書いた上で何を綴るか。
今回のメインは、 初めて鑑賞したオリジナルのストレート舞台 についてだ。
またも備忘録と言う名の自分語りであり、その半分ほどが今現在における嘆きである。

▽そもそもどうしてオリジナルの舞台を観に行ったか

先ほどの記事をご覧下さった方はご存知のことと思う。
ざっくり言うと、2.5次元ミュージカルで推しキャラを演じていた俳優さんに魅了され、自分はその方のファンになった。
ガチで人生を変えられてしまったのだ。
この過程については記事をご覧頂くとわかりやすいが、何分5000字ほどもあり個人的な感情に振り回された文章しか連なっていない。
気が向いた時にチラ見してくれたら嬉しい。あわよくば刀ミュ(*2)を始め、2.5次元作品に興味を持ってくれれば幸いです。

このエントリのメインはその文中にある、


舞台のぶの字すら頭になかった地方在住の女オタクが刀ミュから役者さんに惚れ込み、情報をかき集めるにとどまらず、とうとうストレートの舞台を東京の現地で鑑賞するに至った

の部分だ。

さて、本題である。そもそもどうしてオリジナルの舞台を観に行ったか。
結論から言えば、推し俳優の初主演舞台だからだ。

その名も、"TXT(テキスト) vol.1 SLANG(スラング)"

ビジュアルからして"""好き"""しかない

かの仮面ライダーエグゼイドで脚本を手がけた高橋悠也氏東映がタッグを組んだシアタープロジェクト、その先駆けたる第一弾である。
推し俳優の初主演舞台。推しを得た女がこれを観ずして何を観るや。
刀ミュを知り、推し俳優を知り、推す楽しさを知った。

女は歓喜した。必ず、かの素晴らしき推しのプロポーションを目に焼き付けなければならぬと決意した。
女には舞台がわからぬ。女は、田舎に住むオタクである。
絵や文章を綴り、家事をこなして暮らして来た。けれども推しに関しては、人一倍敏感であった。

ありがとう、ミュージカル刀剣乱舞。
ありがとう、2.5次元舞台たち。
わたしは新たなる世界に足を踏み入れる。

▽舞台への敷居

役者さんたちや美術さんなどを初めとし、舞台作品に関わるさまざまな人にとって大変、大変申し訳ない話をすると、舞台というものは地方在住の一般人(と名指した筆者個人)にとってめちゃくちゃ敷居が高い。
イヤあの 本当に……マジで……語彙を尽くそうにも難しい感覚だが、本当に大きく上がった敷居の上にある感覚なのだ。
先立って「2.5次元は舞台文化への大きな糸口である」といった旨の話をしたが、その糸口に触れて実際にその先を辿る勇気というものは意外とそう出ない。実際出なかった。
というのも、地方在住の人間が目にする機会がある舞台の類といえば

 ○ミュージカル
 ○宝塚
 ○出演者に地方出身の俳優・女優が並ぶ舞台作品

の、地方公演。
大凡この内のどれかなのだ。落語や漫才、ライブなどは含めずにである。
この"地方"と言うのは、首都圏や主要都市に数えられる所在地の方に正確な位置がほとんどわからず、名前もパッとは口に上らない程度のものを指す。
目的の舞台に触れるためには東京などへの大移動が不可欠で、情報へのアクセスが悪い。
昨今の高度情報社会においても距離は弊害である。

地方プレイガイドでチケットを発売しています、というCMを公演直前までよく見かける程に、地方人の大半は舞台作品へ触れにいかない。そのうちの幾らかは、筆者のように敷居の高さを感じている事だろう。
オリジナル脚本の舞台は、あらすじを見ても内容が読めないことも多い。
判断材料が少ない、と言ってもいい。(もちろん読み取る力が筆者に足りていないことも大いに考えられる)
そしてこの上に最低数千円、場合によっては万単位に届くチケット代が乗る。ギャンブルか? 実際わりとギャンブル的側面はある。
純粋に、越えるべきハードルがバリ高なのだ。

色々と地方人たる筆者から見た舞台へのネガティブな部分を綴ったが、つまる所全容がわからず、公演会場が都会で莫大な交通費がかかるとしても。
推しを得たひとりの女オタクはこのハードルを薙ぎ倒し、全く止まらなかった、という話なのだ。

待ってろよ東京、待ってろよ劇場。
推しの初主演舞台、絶対に拝んでやるからな。
その日女は故郷を出発し、野を越え山越え、百里以上はなれた東京の劇場へ辿り着いた。

▽現場における"生"の衝撃とカタルシス、その共有

6月某日、炎天の下、東京都に筆者は降り立った。実に400km超の大移動である。数時間で首都圏にアクセスできるようになった近年、専らの悩みは交通費の高騰だ。
飛行機の距離ほどにガチ遠方ではなくても、やっぱり片道一万数千円は財布に痛い。アラサーにふさわしい年輪を刻んだ体、体力を取るか金銭を取るかならばもはや前者なのだ。悲しいなあ……
この日筆者は、Twitterで仲良くなった同担女子と初めて会って共に会場へ向かい、舞台を観劇した。
人生初、オリジナル舞台の生(ナマ)観劇である。

具体的な詳細は作品の内容に関わるため差し控えるが、純粋に感じたのは

「これが推しの初主演舞台で良かった」

という喜びである。

語彙と大人の理性を同時に失った筆者

テーマにある現実と虚構の交錯と対比、そこに横たわる真実と事実を知り、筆者の前に開かれた物語を諾々と受け止めた。
オープニングで流れた曲を歌っているのが今までに聞いた事のない推しの声だと分かった時、鼓動が体中に響くようだった。
読み終えた本を閉じるように舞台の幕が降りた時、背骨を駆け上がった震えと全身に広がった鳥肌の感覚をわたしは未だに覚えている。

この表現に正しく、あの"世界"は閉じたのだ。

物語を綴じた一冊の世界から、登場人物も、わたしたちも、みな現実に立ち戻った。わたしにとってその心地は箱から解き放たれるようでもあり、夢から覚めるようでもあった。
カーテンコールでキャストが現れ、推しがお辞儀をした瞬間、「この光景をもう忘れられない」と考えた。
舞台装置と演出の妙、これを直接目で見て体験する事の鮮烈な衝撃は、やはり映像のみのそれとは種類が違う。
斯くして、ひとりの女オタクがオリジナル舞台処女を卒業した。

とんでもないものを浴びたぜ……と歴戦の勇士が如き佇まいでホテルへの帰路についた我々はチューハイで祝杯を挙げ、作品の余韻を感じながら推しの出演するDVDを流し続けた。
一人きりで楽しむこともきっと出来た筈だ。でもそうじゃなかった。
初めて生で観るオリジナルの舞台にすこし臆病だったわたしは、作品に対するエクスタシーとカタルシスをひとりきりで受け止めずに済んだ。これはまぎれもない幸運だ。
共有する楽しみは、ひとりでも打ち震えるほどの感動をより濃くする。

思い返せば、刀ミュを観劇するときも筆者は常に友人たちと感動を共にした。
そして友人のみならず会場の参加者とも一体になり、果てには作品の一端となった。
そこにあるのは快感であり、喜びである。
全てを共に噛み締める誰かが傍に居るだけで、胸が割れそうなほどの気持ちを分け合えるのは奇跡に近い。
だってさ~~~情報と感情で脳のキャパシティがあっぷあっぷするわあんなの……無理でしょ……ひとりで耐えられないわよあんなの……
共有の快感も含めてやっぱ現ナマ舞台ってシャブなんだよな~~~!!!!

このシャブをバチバチに効かされた脳が、今の孤独と度重なる舞台の中止を前にして禁断症状を起こしはじめているのは言うまでもない事である。
先月末頃の刀ミュ無料配信でフォロワーたちと同じ時間を共有し、その楽しい日々を終えたとき、これまでにないロスを感じてしまった。
今現在も刀ステの無料配信が始まり、いろいろな界隈の人たちと時間を共にしているが、このさみしさだけは後から絶対に襲ってくるのだ。
はやく"""""ガンギマリ"""""になりたい。タスケテ……タスケテ……

▽未曾有の災いを前にして

今年の三月以降、推しの仕事は格段に激減した。
リモート収録や自宅からの配信、動画や写真の公開などは続けてくれているが、本来ある筈だった舞台はすでに2本が公演中止を余儀なくされた。
そのうちでもグランドミュージカルに名高い「ウエストサイドストーリー」の日本版Season3は、開催直前の緊急事態宣言により公演開始を延期し続けた。
そして緊急事態宣言の延長により、ついには誰の目にも映ることなく、全公演中止の決定が下される。

たまらなく悲しかった。べそべそ泣いた。
推しにとって、そしてこのキャスティングをした人にとって、きっとこの上ない挑戦だった筈だ。
筆者の悔しさや悲しみなど、演者さんたちのものに比べればずっとちっぽけだろう。推しの悔しさや悲しみは如何ばかりであろうか。
自分はどこかで期待していたし、甘く見ていた。
まだ冬だった頃、感染対策に追われながらも春にはこのコロナ禍が終息してくれるのでは、と都合よく考えていたのだ。

幻になってしまった推しの初グランドミュージカル
メインビジュアルだけでも見て行ってくれ

もう少しで6月を迎えようというこの頃、出演予定だった"七つの大罪 the STAGE"も全公演中止を発表した。これが2本目である。
筆者の心がひっくり返って嘆いた。うせやろ? 家の廊下でリアルに膝をついた。真っ白に燃え尽きるかと思った。
あと二ヶ月半ほどで訪れる"刀剣乱舞 大演練"(*3)や秋に予定された"幕末天狼傳"の再演とて、場合によっては開催されるかもわからない。
それでもこの状況下でまずは「上演する」と決めてくれた作品と会社に感謝したいし、実情を鑑みて「全公演を中止する」と決めてくれた事を受け入れたいと思う。
イヤ実際受け入れられるかって言われると全然ダメ!!!!
めちゃくちゃ悲しいしつらいしきっと推しにとって飛躍の一年が始まる筈だったのにって思いがちっとも拭えない!!!!!
筆者は長女だから我慢できたけど次女だったら我慢できなかった。多分。

耐えると決めて数ヶ月、状況が好転しているという感覚はまだない。
正直に言うとやっぱつれぇわがずっと続いている。
つらくね???? 筆者はつらいししんどい。
"ウエストサイドストーリー Season3"の中止と"刀剣乱舞 大演練"のキャスト発表は同日の事だったため、情緒がめちゃくちゃになって正と負のぶつかり稽古が起きた。死わよ(死わよ)
推しの収入について勝手に心配してしまうし、直接お金が行くかどうかわからないが、とりあえずブロマイドを新たにポチッたりもした。
直接投げ銭したい……推し……口座を教えてくれ……入金するから……

実は自粛期間に入って漸く、"SLANG"のBlu-ray映像を見た。
本当は友人と推し会と称した上映会をする予定だったのだが、それより先にコロナ禍に襲われ、その予定は立ち消えしたのだ。それから数ヶ月を経て、やっと見る勇気を得た。
期待と少しの恐れを胸にして再生したBlu-ray映像は、会場で観た作品とはまた一線を画していた。

さすがは東映、と思わされた。舞台作品の映像化と一口に言っても、これは全くの映像作品だ。筆者が知らなかった昇華の形を見た。編集の妙である。
あの日見えなかった細かな表情、座席からの角度でわからなかった演技、初めて鮮明に聞こえた歌詞や音楽、どれもこれも新たな視点を拓かれた。
一度会場で観ただけでは捉えきれない話の繋がりやその意味を個人的解釈のもとに悟り、新鮮な感動を覚えた。

それでも体に蘇ってくるのだ。あの日全身に顕われた衝撃への感覚が。
わたしはまた、あのようなカタルシスを肌身と魂に取り戻したいのだ。

日常と喜びをふたたび手に入れるため、このコロナ禍を耐え抜く決意を新たにした。
次元を問わず、現場を失ったファンたちが沢山いる。筆者もそうだ。
わたしはまだ諦めたくないからがんばる!!!!生きるぞ!!!!!生きて推しを目にするんや!!!!!!!
みんなもどうか生きててくれ!!!!!!!!!!!


(*1)…Pixiv(ピクシブ)。イラストや漫画、小説などを投稿する公開SNS。触れたことのないオタクは多分いない。
(*2)…ミュージカル刀剣乱舞。略して刀ミュ。DMM提供のブラウザゲーム「刀剣乱舞」を原作とした2.5次元ミュージカル。筆者にとっての宗教。
(*3)…「刀剣乱舞 大演練」。ゲーム刀剣乱舞の5周年を記念した、ミュージカル刀剣乱舞・舞台刀剣乱舞などから合同でキャストが出演する初のイベント。筆者は発表と共に死んだ。

クリエイター活動費(?)と推しへのBIG LOVEになります😉