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コロナ対策最前線から①「先が見えないのが一番つらい」緊急事態宣言出すなら生活保障を!


1■ちょっと待った!感染症法&特措法ダブル改正!!このままでは国民が干上がってしまう


感染症法改正案やコロナ特措法改正案を読んで、「現場からこれだけは言わせてくれ!!」と、慌てて書き始めました。

なんで国は感染者の生活を保障しないんですか?
「生活保障するから安心して療養してください!」「入院中は出歩かなくていいようにしますから!」って国の方からお願いするべきじゃないですか??感染者の中には、自宅療養や入院したら即、収入減で生活できなくなる人もいるんですよ。

私は社会福祉協議会(略して社協)という公的な福祉団体の職員です。国の新型コロナ緊急対策の一環である特例貸付「緊急小口資金」「総合支援資金」の相談窓口にいる、いわゆるエッセンシャルワーカーです。前回2020年4月の緊急事態宣言前後、どんなに不要不急の外出を控えるよう呼びかけられても金策に奔走せざるを得ない人たちの悲痛な声を、現場で毎日聞いてきました。感染した人も含め相談者の人たちが異口同音に訴えていたのは、「先が見えないのが一番つらい」ということでした。

しがないヒラのポンコツ職員がどうしても黙っていられなくなったのは、そういう人達のことが改正案で全然考慮されていないからです。

コロナ入院拒否に100万円以下の罰金検討 感染症法改正案の政府原案が判明 毎日新聞 1/8(金) 17:51配信

スルー出来ないのはこの箇所です↓

”軽症・無症状者で自治体による宿泊・自宅療養の要請に応じない人に、都道府県知事が入院を勧告できるようにする。”
”入院の勧告や、強制入院させる措置にも従わない場合は罰金を科す。罰金は「100万円以下」とする案を軸に検討”
”新型コロナ患者の医療費などは現在、公費で負担しているが、療養に応じず入院勧告の対象となった人は自己負担とする方向”

感染者が療養や追跡に非協力的なために感染が拡大するのは防がねばならないというのはわかります。だからこそ、ちゃんと療養できる環境を整える必要があるはずです。現在入院費は国から保障されていますが、生活費が無かったらどうやって生きていくんですか。

だから緊急事態宣言出すなら、感染症法や特措法を改正するなら、感染者や減収者の生活を保障してください!
このままでは、国民は干上がってしまう。
自粛要請に応じても生活に何の保障もないから、金策に駆けずり回らなくてはならない。不要不急じゃない「必要で緊急」な用事が増えてしまうんです。
これはむしろ感染症対策にも逆行しているのではないでしょうか??


2■安心して療養できない緊急対策って何??

私の職場が窓口となっている特例貸付「緊急小口資金」「総合支援資金」は、政府の緊急対策の号令のもと2020年3月末に突貫工事で新設された制度で、新型コロナウイルス感染症の影響で減収したり失業した個人の方が対象です。

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詳しくはコチラにまとまっています →厚生労働省HP 生活支援特設ページ 生活福祉資金の特例貸付

問題なのは、感染して治療が必要な人や回復した人・無症状の人・濃厚接触者、そして咳などの症状が出ていて感染の疑いのある人達までもが貸付対象ということです。

回復するかどうかわからない・或いは感染しているかもしれない人たち、本人も家族も先行きの見えない不安と闘っている最中なのに、申請書類書いて、住民票とか必要書類揃えて提出が必要なんです。(申請手順参照)。審査結果が出る頃にはどうなってるかもわからないのに。療養が必要なのに!

考えてもみてください。
申請は郵送で可能ですが、必要書類(住民票原本や本人確認書類コピーなど)を揃える時にどうするか。住基カードを持っていたとしても、住民票をコンビニ等で取得しないといけない。実際には住基カードを持ってる方はまだ少なくて、役所で発行してくる方が殆どでした。もちろん住民票は郵送請求できますが、そんなの待ってられないくらい切羽詰まってるから申請する訳です。役所が自宅のすぐ近くという方どれくらいいますか。電車とかバスとか公共交通を使わないと行けない場合もあるでしょう。家族が代わりに動くしても濃厚接触者である場合が多い。代行を頼める家族等がいない場合は感染者本人が動かざるを得ない。感染対策に逆行していませんか? 感染者や濃厚接触者をわざわざ人の集まるところへ外出させて、なぜ本人も周囲も危険に晒すのですか?? 


3■2020年4月緊急事態宣言下の声「息するだけでお金が出てゆく」 

そして感染者・濃厚接触者でなくても、金策や手続きが必要だと人の流れが止まらず、むしろ激増します。実際に2020年3月以降、外出自粛要請が出てからハローワークには求職者が長蛇の列を成し、定額給付金申請で役所が満杯となったのは報道された通りです。社協にも特例貸付の申請が通常件数の100倍以上殺到しました※注1


2020年3月末、この特例貸付制度が始まってから現場に次々と寄せられた相談は、待ったなしの内容ばかりでした。
「飲食業です。コロナで外出自粛以降は休業状態となり、収入ゼロです」
「タクシー運転手なんですが、お客が減ってしまって月収が半分以下に…」
「フリーランスで、イベントのキャンセル・延期で全く見通しが立たなくて…」
「派遣の仕事が当面無いと言われてしまいました。家賃が払えなくて、どうしたらいいのか…」
「求職活動しても、コロナで採用が控えられてしまって…」

「休業補償が出なくて給料ゼロで、でも会社に籍は有るので求職活動ができないんです…」

そして4月7日の緊急事態宣言で、事態は更に深刻になっていきます。

「休業補償が6割出てもそれだけでは生活が苦しい、住宅確保給付金(家賃補助)は少額しか入らない、総合支援資金は決定まで時間がかかる、頼りは定額給付金だけ…」

「光熱費とか年金とかいろんな支払いの減免とか延納も頼んだ。企業向けの給付金も申し込んだけど、1か月かかる。定額給付金も受け取れる日がまだわからない。出来ることは全部やった。なんでもいい、ひとつでもいいから、決まってくれれば…」

「息しているだけでお金が出てゆく。家賃延納したけど3か月が限度で、ずっとは待ってはもらえない。もうすぐ次の支払日が来てしまう。このままではここにも居られなくなる…」といった悲痛な声。

5月連休明けに非常事態宣言が延長されると、相談内容は更に切羽詰まっていきました。
「失業して家賃滞納でアパートを追い出されて、今日寝る場所がもうありません…」


4■中途半端な緊急対策は、感染拡大防止に逆効果!

多くの相談者が制度を掛け持ちして、必死に家計を回そうとしていました。既存制度と今回制定された緊急対策を合わせると膨大なメニューがありました↓

総務省HPより【政府の対応(取組)(他省庁関連ページ)】

だけど、制度単体では生活をカバーできない。定額給付金10万円だって首都圏だったら家賃1・2か月分払ったら終わりです。相談者にとっては制度がそれぞれ中途半端で全然生活が立ち行かなかったから、少しでも収入を確実にするために片っ端から可能性があるものに懸けるしかなかった。そして似たような書類(住民票原本など)が必要なために、その都度、役所の戸籍窓口とか申請窓口に人流が集中することになったのです。

政策的に、わざわざ、密と人流を増やしてしまってきたのではないですか?? こんな下策が有りますか。

何より、「どれだけ策を講じても先行き安心できない」という底なしの不安感が人流を生み、事態を更に悪化させてきたのだと思います。だから政府は、「生活費は国が充分保障するから、いろんな制度申請や金策に駆けずり回らなくてもいいから、お店を開けたり仕事に行かなくていいから、お願いだから家にいて下さい」って明確なメッセージを出すべきなのではないでしょうか。


5■返済免除するなら、最初から給付でいいじゃないですか

コロナ対策の特例貸付について言えば、これまでに当初予算311億円をはるかに上回る5,540億円が貸し付けられました。これ全部、借受者の負債ですよ。物凄い金と労力をかけて国民の借金を増やしてるんですよ。緊急対策と言いながら、国民の借金で支えて先延ばししてるだけじゃないですか。

去年3月末の制度開始直後に申込んで貸付決定した人は、もう3か月後の今年4月から返済が始まります。一般的な月々の返済額は、2人以上世帯で緊急小口20万円(返済:2年以内)・総合支援資金120万円※(返済:10年以内)をフルに借りた場合、最初の2年間は月々18,333円、小口資金返済が2年間で終了した後の8年間は月々10,000円ずつとなります(総合支援資金は延長され最大6か月借り受け可能となったため)

タダでさえ減収の中で月々2万近く支出増って、相当キツい方も多いと思います。ましてやこの状況下で返せると思いますか??

そもそも開始当初から国は、返済困難な場合「償還(返済)免除することができる」と明示してきました。

厚生労働省HPより ”今回の特例措置では、二つの資金とも、償還時において、なお所得の減少が続く住民税非課税世帯の償還を免除することができる取扱いとし、生活に困窮された方にきめ細かく配慮します”
https://corona-support.mhlw.go.jp/seikatsufukushi/index.html

にもかかわらず、現在まで免除要件が示されないまま。これにはさすがに全国の社会福祉協議会も厚生労働大臣宛に連名で緊急要請を行っています。

12月25日/臨時号 緊急小口資金等特例貸付金の償還免除等について(PDF:582KB)

免除要件を明らかにすることや、この非常事態宣言下では返済開始は無理だから条件に合致すれば一括全額免除すること、返済の場合も開始を延期することを求める内容ですが、全社協が返済免除を求めるというのは極めて異例なことです。それほどまでに、貸付という制度が感染拡大という緊急事態に合っていないのです。

大体、返済開始となる1年後に景気が今より良くなって収入も上がるって、そんな保証が出来る人がいるなら、今すぐココに連れてきてほしい。日本中、世界中探したっていないのではないでしょうか。

だからもう即返済免除でいいじゃないですか。貸付によって未来に負債を増やすよりも、いま踏ん張って店や会社や個人事業主や雇用が潰れないように下支えした方が、よっぽど生きたお金の使い方じゃないですか。


6■財源が大モンダイ!だから国会で議論を


「そんなこと言ったって、生活保障の財源はどーするんだ??国債これ以上発行したら国民の負担が増える」ってハナシが毎回出ます。まさにそこなんです。そこをガチで国会で議論して欲しいんです。
じゃあ今のコロナ対策とどっちが金かかるのか?
このまま減収・失業・倒産が増えたら所得税・法人税は減収になるし、貸付の返済が滞れば自治体・国庫へ入る金も減る。生活保護世帯が増えればさらに支出が増える。そうすると自治体は住民サービスを維持するために増税せざるを得なくなる…など等をトータルで収支計算したらどうなるのか?
実際、倒産件数も生活保護受給者数も、リーマンショック時の数字をとうに超えています。家計や企業が持ちこたえれられるように集中的に支えるなら、今しかないのではないですか。

医療は門外漢ですが、例えば同じ感染症である結核の場合、所得に関係なく審査なしで公費で治療費も生活費も全部丸抱えで面倒をみる隔離療養体制を確立したから、感染拡大を抑え込めたのではないでしょうか。患者も、回復すれば社会復帰もできた。感染者が少ないうちに療養できれば、最小限の公費支出で済む。同じ対策でも後手に回れば回るほど支出が嵩み、感染も拡大してしまうのはシロウトでもわかります。どちらを取るのか。

そういうことを、全体パッケージで国会で議論する必要があると思うんです。その場凌ぎでなく抜本的な対策を検討して欲しい。人の生き死にがかかってるんですよ。

このnoteは政権批判が目的ではありません。ぶっちゃけ政権交代とかしなくても、ちゃんと対策してもらえればいいんです。人類が初めて対峙する事態だから大体上手く行かなくて当然なんですから、どこが政権担当していようが誰が首相だろうが関係なく、最も効果が高くて国民にダメージが少ない対応が出来るシステムを手探りしていくしかない。だから野党も与党も政局にしないで、対策を選択できるよう提示して欲しいんです。

7■私たちも、腹を固めて

そして私たちも政策の選択の結果に対して、失敗したとしても罵倒するのではなく、一緒にトライ&エラーを積み重ね、結果を見届ける覚悟をする必要があると思っています。

このコロナ禍の最大の問題は、「イザという時、誰も助けてくれない」という社会への抜きがたい不信感が刻印されてしまったことだと思います。これを拭うのは容易なことではないでしょう。何十年単位かかるかもしれない。だから政治家だけにお任せする問題じゃない。誰のせいでもない、私たち自身が腹を固めて、それぞれの場でそれぞれが向き合うしかない。

手遅れになる前に、国民的議論を。

これから長く続くであろうコロナの時代を一緒に生き抜いていくために、どうか少しでもマシな対策に繋げてください。
あらゆる方々に、本当に伏してお願いします。


注釈 

注1:100倍以上の根拠:
▶ニュースソース:4月24日NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200424/k10012403591000.html
3月25日特例貸付制度開始から4月18日までの全国申請数は7万1922件、1日当たりの申請件数は緊急事態宣言直後の4月18日の週の平日は6300件超え。

▶ニュースソース:週刊福祉新聞4月27日付
東京都社協も「リーマンショック後10年間でも9,000件ほどだった。今回は1か月も経たずに、特例の貸付だけで10年の年間支給件数を上回った」と指摘。

貸付件数データ
▶ニュースソース 厚生労働省HP  令和元年11月13日付資料より
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000633459.pdf
平成29年の貸付件数 緊急小口資金と総合支援資金 小口7,547件 総合731件 計8,278件

上記データから計算します
29年度の平日(土日祝除く)日数の247日で8,278件を割ると1日当たり全国の通常貸付件数は33.5件
3月25日制度開始~4月18日の全国申請7万1922件を23日間で割ると1日当たり3,127件→通常件数の94.75倍
緊急事態宣言直後4月18日の週の平日1日当たり6,300件→通常件数の190倍。
瞬間風速とはいえ、実に通常の190倍以上、10年分の申請が一挙に殺到していたのです。

なお申請は必ずしも全件貸付とは限りません。制度開始後は緊急時だったため土日祝も日数にカウントしています



※※当アカウントの内容はあくまでも個人の見解であり、いかなる団体等の公的見解を代弁するものではありません。登場する事例は特定個人についてではなく典型的・一般的例です※※

※制度説明の追記や文言の整理を行いました(2021.1.19)

※数字の根拠を追記しました(2021.2.5)


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しゅくらむ2/新型コロナ対策最前線の現場経験からさけぶ。
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