坂元裕二先生に突然声を掛けられた話 -坂元裕二ゼミ朗読作品発表会-
入口に「坂元裕二ゼミ」と書かれてあるのを、石橋を叩くように繰り返し確認する。私は、おそるおそる会場へ足を踏み入れる。
会場の前方には小上がりになったステージがあって、そこにはマスク姿の男性が1人座っていた。男性が、既に着席している観客たちと何やら楽しそうに会話しているのが分かった。
ふと、そのマスク姿の男性が私の憧れの、まさにその人である気がしたのだが、会場は薄暗く、その彼はマスクをしていたのでその時点では半信半疑であった。
私が座席の列に入り込もうとした時、彼が何かを言った。顔を上げると、彼は明らかにこちらを見ている。反射的に「え?」と返すと「クリスマスの曲で何が好きですか?」と尋ねてきた。え?
えっと、あの、あなたはまさか私の憧れのまさにその人ではないですよね?もしかしてご本人ですか?いやあの、70%ぐらいの確率で、ご本人だとは思うんです。でもこの状況に非常に混乱していまして。すみません、ご本人でない方がむしろありがたいのかもしれません、こんなに混乱してる姿を憧れの人に見せたくはないので……。
私が急いで「マ…マライア・キャリー…」と答えると、「あー、強いよね〜、マライア・キャリー」と納得された様子だったので、何の会話なのか、そして彼が誰なのか確信を持ちきれぬまま、私はとりあえず少し安堵したのだった。
彼がマライア・キャリーをきっかけに話を展開していくのを見つめながら、やっとのことで席に腰をおろした。
冷静になった私が、彼がやはり坂元裕二であると確信するのに時間はかからなかった。
……。
時間の止まったような体験だったもので、つい小説風に書いてしまいました。お恥ずかしい。
私が坂元裕二先生を敬愛していることは前提として、というか誰しもが好きだと思うので説明を割愛しますが、今回は坂元裕二ゼミの学生の作品、しかも朗読ということで、どんな情景を描きどんな言葉を紡ぐのかとても楽しみにしていました。最近NUMAというサイトで寝る前にラジオドラマを聴くのにハマっているのもあって、脚本と声とわずかな演出のみのシンプルなエンタメを生で拝見できることも楽しみでした。
どれも素敵な作品だったと言うと在り来りなのですが、オリジナリティに溢れ展開も面白く学生間の偏りもなく時間があっという間に感じました。
坂元裕二ゼミといえば、ユリイカの坂元裕二特集号で、清水俊平さんが坂元裕二ゼミで先生に学生達がどのようなことを指導されていたかをお書きになっていたのが印象に残っています。今回もそのようなやり取りやご指導があったのかなと想像しながら、楽しい時間を過ごさせていただきました。
そう言えば、まさに今日NUMAでとある作品を拝聴していた際に、たまたま伊礼姫奈さんのお声とまた巡り会いました。なんだか運命を感じています。坂元裕二作品、坂元裕二教え子作品でまたお声を聴ける日を楽しみにしたいと思います。
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