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環境問題はちょっと苦手。そんな僕が『隠岐サーキュラーデザインミュージアム』を見て感じたこと。

環境問題ってちょっと苦手なんだけど…

環境問題ってちょっと苦手です。SDGsなんて、綺麗事いいながら大企業が大儲けするネタだと思っていたこともあります。そもそも、多くの環境問題って答えすら出ないよねって思うくらいのひねくれ者です。

電気自動車なんて、排気ガス出ないからって言うけど、大きな電池開発してその開発時に出ているものは地球にインパクト与えてないの?ガソリン自動車と電気自動車どっちが地球に優しいなんてわからないじゃない?って思うタイプなのです(汗)。

隠岐諸島の島前地区はカルデラに海水が流れ込んだ地形。

沖縄と島根県の隠岐諸島海士町の2拠点生活を夫婦でする、かなり変わっている友人がいます。藤代圭一君。ニックネームはふじしーです。沖縄にはよく行くけど、海士町にいるふじしーに会いたいなって思って、海士町まで行ってきました。

僕の苦手な環境にも意識があって、持っているものやSNSへの投稿も、それってどうなの?って疑問を時々書いていたりします。でもその投稿全然、説教臭くないんですよね。子供が良く「なんで?なんで?」って質問してくる素朴が疑問ってあるじゃないですか?そんな感じなんです。そして、そこから何かを強く訴えるでもなく、ただただその疑問を置いていくって感じなんですよね。

ふじしーこと藤代圭一君

今回、海士町に行ったらそんなふじしーが、隠岐サーキュラーデザインミュージアムと言う何やら小難しいのか?クールなのか?よーわからん名前の展示をするタイミングでした。扇風機の展示会ではないようです。扇風機はサーキュレーターでした(笑)。4/20に海士町に入ったのですが、4/22からの開催の向けて最後の準備を、彼の仲間としている所をお邪魔しました。

すごく気持ちのいい空間です

Entôと言う海士町のシンボルになっているホテルがあります。僕も新館に2泊しましたが、すごくすごくきれいなホテルでした。その新館の1階に素敵なスペースがあって、今回はそこが会場です。目の前が海で、光がとてもきれいに入る場所です。

そこに身を置くだけですごく心地よい場所です。海士町に行ってそんなに観光したわけじゃないけど、このスペースには長い時間いたのでとてもとてもいい時間でした。

サーキュラーデザインミュージアムはEntôの1Fジオラウンジで開催中(5/7まで)

ふじしーはそのスペースを使って、才能ある海士町の仲間とともにその会場を作り上げていきます。あのすごくシンプルなスペースが、すごく素敵な展示スペースになっていきました。空間デザインの力でこんなにも変わるのか!展示してあるものも内容は後ほど書きますが、会場の展示自体が気持ちよく、シンプルで、かつわかりやすい。この展示スペースを作るために、スタッフの皆がどれだけのエネルギーを掛けてきたのか?がすごく伝わってきます。

Entôの気持ちよさに、更にサーキュラーデザインミュージアムの展示の気持ちよさ。これだけでも十分に足を運ぶ価値があるなって思いました。

サーキュラー・エコノミーって何?

先程からサーキュラーデザインという言葉が登場しています。サーキュラーデザインを説明する前に、サーキュラー・エコノミーと言う言葉を簡単に説明します。

サーキュラー・エコノミーは、リニア・エコノミー、リサイクリング・エコノミーという言葉と並べて使われます。リニア・エコノミーは「原料→生産→消費→廃棄物」と流れる商品を主流とする経済。いわゆる、私達が思い浮かべる既存の経済の流れです。

左から、リニア・エコノミー,リサイクリング・エコノミー, サーキュラー・エコノミー

リサイクルリング・エコノミーは、「原料→生産→消費→廃棄物」というリアル・エコノミーに対して、消費したあとのものを、原料として再利用する経済の流れのことをいいます。多くの人はゴミの分別をしていると思いますので、現代はこの意識がだいぶ浸透してきているのかな?と思います。

サーキュラー・エコノミーは、リアル・エコノミー、リサイクリング・エコノミーに対して、『そもそも廃棄物と汚染を発生させない』ことを軸として、製品開発時点で再利用やリサイクルがしやすい商品を作っていくことが考え方のベースにあります。製品寿命を伸ばすためのメンテナンス、リースによるシェアリング利用効率の向上も従事されている経済の流れです。

サーキュラーデザインは、このサーキュラー・エコノミーを実現するため、経済の流れ自体をどのようにすればサーキュラー・エコノミーになるか?をデザインすることです。

実はすごく身近なサーキュラー・エコノミー

今回の展示内容の詳細はこの記事の最後に記しました。これらの展示を見て感じたことは、サーキュラー・エコノミーは実はすごく身近な所にすでにある。ということ。小道具販売やお豆腐を作った時のおから、野山に自生する木々、洗剤の量り売りなどは、聞いたらすぐに理解できるサーキュラー・エコノミーだなって思いました。

それに気付いて、ちょっと工夫をしたものがサーキュラー・エコノミーなんだと思ったのです。もちろん、コーヒーの出し殻の加工とか、海洋プラスチックごみの再生などは加工や技術が必要なものもありますが、これでも自分がどんなゴミを出していて、それがどんな種類のものが多いのか?ここにフォーカスするだけでも、サーキュラー・エコノミーの一端にすでに足を踏み入れていることなんだなって思います。

みんなのメッセージコーナーにある4つの「問い」

この展示には、自分のメッセージを書いて貼っておけるスペースがあります。そこにはこんな「問い」が書かれていました。

Q1 隠岐の好きなところはどこですか?
Q2 あなたが日々、実践している循環はなんですか?
Q3 子どもたちや孫たちに、どんな未来を残したいですか?
Q4 未来のために明日から実践したいことはなんですか?

そしてこれらの問に答えたメッセージが壁に貼られていました。これは日々増えていっていました。5月7日にはこのコーナーはどんな景色になっているのかな?

授業で見学に来た高校生も意見をシェアしてメッセージを貼ってくれました。

気負うことは全くありません。今の生活を否定することはありません。ただ、これらの問いを頭の片隅に置いておくだけで、十分にサーキュラー・エコノミーの一端を担っていることになる。そんなことを感じさせてくれた、サーキュラーデザインミュージアムでした。

サーキュラーデザインミュージアムではどんなことが展示されているの?(海士町編)

展示内容を簡単に記しますね。こちらは海士町での取り組み。ちょっと気にしてみると、沢山の取り組みがありました。

■廃校の利用・古道具の循環・廃材を利用した装飾

「あまマーレ」は保育園だった施設を「誰でも気軽に立ち寄れるコミュニティスペース」です。2300名が住む海士町は、島のみんなが顔見知りです。しかしUターン、Iターン移住者も増える中、顔は知っているけれど話したことがない人が増えています。そんな人がふらりと立ち寄っておしゃべりしたりすることを目的としています。

海士町には、ものの処分にに困っている人がいる一方、新しく移住してきた人は、生活に必要な食器や暮らしの道具、大型の家具が手に入りにくい現状があります。あまマーレでは、ものを無駄にしない循環を目的として、古道具屋さんの運営もしています。

古道具

■海士町の郷土料理

島の各家庭で季節・行事ごとに作られている郷土料理。「海士の味」「食文化」を残し、広げるためにレシピ公開中。

レシピはネットで公開されていたり、冊子になっている。

また海士町では、「魚が沢山釣れたから」「たけのこが沢山取れたから」とおすそわけが日常。もちろん翌年以降に無くならないように、場所や量について取りすぎない配慮をしている。

■廃材の利用・おからを使った製品開発・古新聞の利用

「アヅマ堂」は築90年の古民家を改修したお菓子工房。改修時は島の間伐材・廃材を積極的に利用しました。

アヅマ堂の隣りにある亀田商店さんのお豆腐から出るおからを譲り受け「亀田商店のおから豆乳ドーナツ」として商品化。おからは亀田商店さんに行くとレジに「ご自由にどうぞ」と書かれており、必要な人は持ち帰ることができます。

可愛らしいアヅマ堂の看板

包装紙は、古新聞紙を活用。重箱で商品を持ってかえることができ、次回来店時に返却。

古新聞紙を活用した入れ物

■地域素材を活かした循環商品開発

「島のほけんしつ 蔵」では、厳選して取り寄せたハーブと、島内で生育している植物を調合。隠岐ならではのハーブティーを提供。隠岐神社参道の見頃を終えた桜の花びらや葉、茎を採取。名水百選に選ばれた天川の水を利用。蒸留してフローラルウォーターとして商品化。

島でとれるクロモジを使ったクロモジ水(フローラルウォーター)やクロモジ精油

1階にはカフェがあり島内外、老若男女問わず誰でも利用できる「わたしに戻れる時間」を作っています。また、心と体に対して日々の生活の中でできる予防や緩和の方法を知り、一人ひとりが生き生きと「ごきげんに」暮らしていけるホリスティックケアを提供しています。

ハーブティーを飲んでホッと一息

■種のシェアリング・循環

海士町にある「シードライブラリー」。その名の通り、種の図書館。農家ごとに持っている種の違いや得意分野の違いから「種の交換をしよう!」と4年前に初めて「種の交換会」を開催。その後、日常的に利用できるよう「シードライブラリー」が発足。

シードライブラリーのご案内

図書館で種を借りて、育て、作物ができたら種を採り、返却するという仕組みになっています。種をまき、育て、次の種をとる。その中で、種はその土地の気候や風土を記憶していくと言われているそうです。実際に続けていくと、よりたくましく、より美味しいものができるのだそうです。

実際に貸し出される種。育てて種ができたらその1部を提供する。

地域で受け継がれてきた種の品種を守り、伝えていく。それと同時に、お互いのおすすめの品種(固定種、在来種)を共有することで、島の食卓がより豊かになり、また、種を守ることが島の食や暮らしを守ることにつながります。多様な固定種の野菜を、なるべく自然に、負担をかけない農法で、楽しみながら守っていく活動を実施。

■地域貢献・国際交流

海士町にある隠岐島前高校。島留学生(高校生・社会人)でも有名な島前高校の地域国際交流部。国際系グループではグアテマラ交流や、ルーマニアのジオパークと交流。地域系グループでは小中学校との交流、海岸清掃、通うプラスチックを使ったワークショップを実施。海洋プラスチックを再利用したアクセサリー作りをしている。

海洋プラスチックを使ったアクセサリー

■島の植物や漂流物で「風」を届けるフローリスト

海士町には、街にはおなじみの「コンビニ」はありません。誰かの誕生日や結婚式、ふと頑張った自分へ贈り物をしたい時の「花屋」もありません。けれど、島のあちこちに咲いている旬の野花たち、それらに日常的に囲まれ、暮らし、愛でる感性をたずさえたフローリストがいます。ここには「贈りもの」の原風景となる暮らしかたがあります。

風のはなや flow

島の自然から掬い上げた素材を活かして、リースやスワッグ、ブーケ等のフラワーアレンジを制作・販売。植物の色や形から感じるときめきを分かち合い、“島暮らしの豊かさ”や、“島ならではの物語”を伝えられるものづくりを目指して、文筆業とのパラレルワークで花仕事を行う。屋号の「風」や「flow」という言葉は、流れやめぐり、循環するイメージで選んだ。

島にお花屋さんは無いけれど、flowのブーケで祝福

作家自身、「自然からいただき、返す。そしてまたいただき、また返す。」というサイクル(循環)を、フラワーアレンジメント制作を通じて「自分ごととして体感できる」と語る。

■陶器を金継ぎし再利用・ガラスボトルの採用・竹製品の導入

島の象徴でもある海士町のホテルEntôでの取り組み。客室内で使用する隠岐窯のマグカップ。使用中に欠けたり、割れたりしたものを廃棄せず、金継ぎといわれる手法で修復して使っています。

金継ぎをしたマグカップ

室内のペットボトルも廃止し、ガラス瓶のウォーターボトルを設置し繰り返し使用。竹製の歯ブラシ、トイレットペーパー、ティッシュペーパーを導入。竹は木材に比べ、酸素を35%多く放出し、二酸化炭素を35%多く吸収するといわれています。

竹を使った歯ブラシ、トイレットペーパー

■海士町の15番目の集落

「ないものはないラボ(通称:ないラボ)は、海士町の15番目の集落はオンライン集落。このオンライン集落から、自転車や、電気で動くトゥクトゥクをシェアする仕組みが生まれました。

ないラボ集落輪(自転車のシェア)
ないラボ集落カー EV-TukTuk

1950年には6,986人いた島民も今は2,300人あまり。文化継承や自治のアップデートが必要とされています。海士町には独自の文化・伝統を持つ魅力的な14の集落がありますが、ないラボはオンライン集落を15番目の海士町の集落として、島内外の縁あるメンバーと新しい自治に挑戦しています。

サーキュラーデザインミュージアムではどんなことが展示されているの?(島外編)

こちらはには、海士町の外での取り組みを紹介しています。

■捨てられたプラスチックから、捨てられないプロダクトを作る

buøyは海洋プラスチックごみ、ほぼ100%で作られたプロダクトです。株式会社テクノラボが生み出した独自の成形方法により、ゴミが持っていた色をそのままに一つずつ異なる色・模様を持っています。

bouy(ブイ)の美しいプロダクト。多くの人が手にとっていた。

より多くの人に今の海の状況を聞いてもらえば、海洋問題に取り組む人々が増え、海洋ゴミ問題の解決に近づくのではと考えました。SNSで見る海は美しいものでも、撮影者の足元や背中側には海洋ゴミが隠れています。

実際の海洋プラスチックごみ

多くの人にbuøyを手に取ってもらい、海洋ゴミの問題を身近に感じてほしい。いつか海からプラスチックが消えて、buøyがつくれなくなるその日のために私たちのブランドは存在しています

■廃材を活かした素材開発

今回展示されていたのは「カフェオレベース」と呼ばれる、コーヒー粕(かす)と牛乳から作られたプランター(植木鉢)。素朴でシンプルな風合いがとてもおしゃれで、普通に欲しくなる。同じ素材で照明のカバーも写真で紹介されていました。

コーヒーを抽出した後のコーヒー粕と牛乳から作られたプランター

もう一つ、建物の素材で使われている石膏ボード。石膏ボードの廃材は解体現場でたくさん出ており、また石膏ボードになります。ただ、すべての廃石膏ボードが石膏ボードになっているわけではないので、その石膏ボードを内装材に生まれ変わらせたもの(resecco)が展示されていました。

石膏ボードを再利用した内装材

■洗濯で海を汚す時代を終わらせる

約70年続くクリーニング店とコインランドリーを経営する株式会社勝川ランドリーから生まれた会社、Save the Ocean。ある時、定期的に実施しているクリーニング工場の排水パイプ清掃の際に「この汚れの行き先はどこだろう?」と疑問が湧きます。調べてみると、これらが海を汚すきっかけになっていたことに気がついたのです。

洗剤の量り売り

つまり、クリーニング店・コインランドリーはもちろん、日本のほとんどの家庭では洗えば洗うほど、洋服をキレイにすればするほど、海を汚すという環境破壊に加担してしまっているかもしれないのです。

そのことに気づき、使用していた業務用洗剤を一から見直し。洗剤の成分だけでなく、排水が環境に与える影響についても細かく調べました。私たちが流した汚水をキレイな水にしてくれているのは微生物による分解です。海をまもる洗剤は微生物が分解することを目的に作られた洗剤なのです。

Seve the Oceanの活動を記した冊子

「海をまもる洗剤」は、世界基準(OECD)で、89.2%の生分解性が認められ、洗浄力はもちろん、環境にもお肌にもやさしいものになりました。化粧品などで行う「24時間閉塞パッチテスト」「スティンギングテスト」の結果として、日本皮膚科学会認定専門医でも証明されています。

■コーヒー粕や廃棄コーヒー豆の利用

カフェ店舗などで毎日排出されるコーヒー粕を材料にしてキャンドルや石鹸を製作。それらのプロダクトを「素材回収したカフェ店舗」などで販売。利益の一部を生産者・生産地に還元、環境保護団体などに寄付をする活動を実施。

コーヒー粕を使ったキャンドル
コーヒー粕を使った石鹸

最新プロダクトは飲み頃を過ぎてしまったコーヒー豆やテスト焙煎などで余ってしまった焙煎豆を再利用した、ちょい足しスパイスを開発。グリル野菜をさらに美味しくする「スパイスソルト」、いつものカレーをひとふりで格上げする「ガラムマサラ」、台湾料理によく使われる異国間たっぷりの「五香粉」の3種類を販売予定。

余った焙煎豆を使ったちょい足しスパイス

香りと味を楽しんだあとのコーヒーの粕(かす=コーヒーグランズ)は、乾燥させれば脱臭剤として家の中で再利用もできます。そのように、一般の家庭ならば粕を有効に使うこともできますが、コーヒーを提供するお店で出る粕は量が違います。多くが廃棄されていたコーヒー粕を「コーヒーを飲むことによってできる一つの素材」と捉え、再利用しようと考えたのがCOFFEE FREAK PRODUCTSです。

5/5イベント ジオパークゆるスポーツDAYで開催される「さざえタワー選手権」「海洋ゴミ拾い選手権」

サーキュラーデザインミュージアムに合わせて4月23日には、「さざえタワー選手権」「海洋ゴミ拾い選手権」が開催されました。5月5日にも同じイベントがあります。

さざえタワー選手権(5/5 10時〜)

サーキュラーデザインミュージアムの会場で4/23に開催された『さざえタワー選手権』。Entôで出たさざえの殻を集めて、どれだけ高く積めるか?を競います。4/23の回ではかなり白熱した競技が開催されました。

時間制限はなく、高さを競います。

海洋ゴミ拾い選手権(5/5 14時〜)

14時からは海洋ゴミ拾い選手権が開催されます。4/23では、土に帰るピンク色のゴミ袋を使い、皆でEntô近くのレインボービーチのゴミ拾いをしました。すごくきれいなビーチなのですが、結構沢山のゴミが回収できました。和気あいあいとした雰囲気で楽しめました。

結構色んなものがありました。

プラスチックごみは細かく砕いて、再利用する試みをする予定です。

最後に

会場では、下の動画が流れていました。

この動画を見て僕は色んな思いが心をよぎりました。この動画、良かったら見てみてください。どう感じるかはひとりひとり違うと思います。どう思うおうと自由ですし、見る見ないも自由です。

長い記事、最後までご覧いただきありがとうございました。

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本文&写真:上田修司(ライター)
出展者の部分の情報と写真は隠岐サーキュラーデザインラボのご協力を得ました。


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