幻の引っ越し
昔、東京のコンピューターゲーム会社で働いていました。
事務所は高田馬場(たかだのばば)です。学生街です。いいところでした。事務所といっても、普通のアパートに机を並べて仕事をしていたのです。2000年代。この手の会社は景気が良かったのです。事務所も手狭になってきました。
中野のもっと広い部屋に引っ越しをしようという話になりました。
仕事のスケジュールを調整して、引っ越し当日を迎えました。コンピューター関係の仕事ですからね。若い人手はあります。若い勢いで荷造りして、レンタカーの小さなトラックを借りて第一便を送り出しました。私は残留組。高田馬場でさらに荷造りを続けていました。
ところが、数時間して、あろうことか第一便が荷物をそのまま乗せて帰ってきました。
何が起こったのか。
中野で荷物を下ろしていたら、大家さんにとがめられたそうです。
「会社が入るとは聞いていない。一般家庭以外はお断りだ。」
哀れ第一便は荷をほどくことなく、そのまま帰ってきたのです。
結局、引っ越しはできず、私たちは高田馬場のせまい部屋で仕事を続ける事になりました。
最低な話に聞こえるでしょう?
そうでもないのです。引っ越しは断捨離の最高のチャンスです。引っ越しするつもりで捨てたものは、やはりいらないものなのです。一度荷造りして、車に乗せて、戻って来て荷ほどきすると、さらに不用品が見つかります。
物がごっそり減って、狭い事務所が、少し広くなりましたよ。
みなさんも引っ越し大掃除。やってみてはいかがでしょう。
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イラスト by 和田正之
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