鯱バス

鯱バス

 私の住んでいる町は、厄年のお祭りを比較的熱心にする地域で、私も厄年の時にお祭りに参加しました。小中学校で別れたきりのクラスメイトと40も過ぎたオッサンになってから、一緒にお祭りをするのです。
 元旦一日には神社で厄払いのお祓いを受けて、そのまま飲み会に突入しました。まぁ、祭りにかこつけた男だけの同窓会です。
同窓会というのは、どこでもそうなのかも知れませんが、みんな日頃は立派な社会人ですから、最初はよそよそしく接しているのですが、お酒が入ってリラックスすると、大人げない言動が始まります。「小野ピー」「デッキン」「鴨ヤン」昔のあだ名も復活します。
ところで、みなさまは、東京観光には、はとバスをご利用かと思いますが、名古屋の観光には鯱(しゃち)バスが人気です。同級生T君は鯱バスの運転手。厄年のお祭りに参加していました。かわいそうなことに、飲み会の後も元旦一日から勤務があるとのことで、お茶を飲んでいました。
すると、クラスメイトの数人が悪ふざけを始めました。
「おねぇさん! T君はレモン酎ハイ大好きだから持ってきて!」
「T君のレモン酎ハイが足らないよ! 持ってきてあげて!」
勤務のためにお酒の飲めないT君の前に、あろう事か、大好きなレモン酎ハイが一ダースほど並びました。
 T君は苦笑いをしながら、それをながめていましたよ。
そして、そのレモン酎ハイに一切口をつけませんでした。
みなさん! 名古屋観光の折は、是非、鯱バスをご利用ください。鋼の意思でしらふを貫いている優秀な運転手が運転しています。そのうちの誰かは私のクラスメイトです。
T君、勤務の後に、ゆっくりレモン酎ハイを飲んだんだろうなぁ。
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イラスト by しんたこ

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