テスラ中国の躍進ー世界最大EV市場ー中国のクローズアップ(2)
2021-04
※タイトル写真はこちらから引用
前回の記事で中国の主要の新興メーカーについて一通り紹介しまして、今回は電気自動車の革命児、テスラが中国に進出する話をテーマにしたいと思います。
テスラ上海ギガファクトリーに託された期待
2014年テスラは念願の中国で販売をスタートし、イーロン・マスクは上海に飛んで最初の購入者達に鍵を手渡ししました。その時にイーロン・マスクは中国で製造と研究開発の拠点を作る意向を表しました。2017年、テスラは政府関係者と接触して上海で工場建設について交渉したうえで、マスクは”我々は上海で工場を作る!”と堂々と発表しました。その時、多くの関係者はこの発言の信憑性について疑ってました。なぜなら海外の自動車メーカーは中国で自動車を生産する際に中国国内の自動車メーカーと合弁会社を作って、出資比率の上限は50%を超えては行けないという規制が昔からありまして、テスラはこの条件を呑み込むことを考えにくい、中国側も法律を変わることがないだろうと見られてました。
この件はもうほとんどの人が忘れかけた1年後の2018年、中国政府は長らく実施されたこの投資規制を2022年で完全撤廃する意向を発表し、追加の条件でNEV(EV、PHV、FCV)の生産する場合、先行で2018の年内で規則を撤廃すると付け加えました。前者は米中の貿易交渉の成果物の一部だとしたら、NEVに対する前倒しの特別措置は完全にテスラを誘致するための"マイクロオペレーション"ではないかと見られます。
2018年米中の対立はまだ主に貿易の分野に留まり今日ほど深刻的ではないものの、対立が激化となり投資に影響が出る可能性を否定できないです。にもかかわらずテスラがどうしても中国で生産拠点を設けたい理由は下記3つあると考えられます。
・中国で販売拡大
当時テスラの中国向けの販売は高い関税をかかっているにも関わらずグローバルの売上の15%を占めしました。現地生産が実現したら、販売が大幅拡大できると見込められます。
・テスラは長期的に市場ニーズに対して生産能力が不足の状態が続けられています。中国の生産能力を活かして生産拡大したい
・EVの製造コストをいかに低下させ、一日早くEVを普及させたいというテスラの理念
一方中国政府もテスラと同じぐらいの本気さでテスラを招きたいです。その約10年前、アップルがFoxconnに委託して中国でiphoneを生産し始めて、現地調達によりスマホのサプライチェーンが急速的な成長を果たして、その影響を受けて小米やファーウェイなど世界トップクラスのスマホメーカーも生み出し、国内にスマホが急速的に普及となり、モバイルサービスを中心とする情報革命が全土を席巻し様々な分野を変容させました。
100年に一度と言われる電気自動車への転換期で、いかに国内のEV産業を強くさせていくのかを重要な課題としている中国は、業界イノベイターであるテスラを国内に誘致できれば、産業の発展の質の面も、スピードの面もアップルのように絶大的な促進効果をもたらしてくれるのは間違いがないです。
当然テスラの招致に反対する声もあります。国内のEVメーカーが世界トップだったテスラと同じ土俵で競争することになって、絶滅する危機に陥る可能性がなくはないです。しかし鎖国政策で保護して育った産業は国際的に競争力を持てることを考えにくいです。自動車産業を強くさせることを目指す中国政府は敢えてこの”凶暴な外来種”を招いて、競争を激化させて産業全体が強くさせるというポジティブな路線を選びました。
2017年4月 中国副総理 汪洋がマスクを中南海に招待
チャイナスピードに加速させられたテスラ
2017年~18年の間はテスラにとって最も辛かった時期かもしれない。Model3の量産にトラブルが起きて生産地獄に陥り、株価の低迷とともに資金も底付きとなり、マスクはその時テスラをアップルに売ろうとしてたことを先日Twitterで公開しました。その後はなんとか乗り越えたが、新しいギガ工場を建てる資金は当然捻出できる状況ではなかったです。
2018年7月法律の問題がクリアされた直後に、テスラは上海市政府と土地や融資などを含めて工場建設の諸々の条件について合意をしまして、10月に土地を使用する契約を正式に交わしました。この"掛け合い"と言われる契約の内容を要約すると
① テスラは2023年から毎年上海市に22.3億元(約360億円)の税金を納める。その金額を満たさない場合工場の土地の使用権利を返上する
② テスラは5年以内に上海工場に140億元以上の投資を行う
③中国の銀行が5年以内にテスラに150億元の融資を行う
お互い真意と絶対成功させる決心を見せつける内容を盛り込まれています。
12月に工場建設の書類審査が全部完了されまして、2019年1月に上海ギガファクトリーは正式着工しました。敷地面積86万平方メートル(東京ドーム18個分)の巨大工場、建設期間は常識で数年をかかると思われますが、わずか10ヶ月後に竣工しました。工場を建てながら、内部の生産ラインの構築も同時に進められて、12月30日にテスト生産された最初の15台のModel 3が社員に交付されました。つまり、着工→竣工→車の交付というプロセスは2019一年以内に終わらせました。
そして、この速度感は建設時だけではなく、今なお続けていると感じられています。初年度でいきなり15万台の数字を叩き出して、2021年に入ってもう週5000台までスピードアップして、今年は年間45万台の生産能力へ向上させる計画を建てています。
同時に中国の現地調達率も順調に伸びって、去年の発表ですでに80%を超えました。大量生産、現地調達、そしてCATLの新型のバッテリーを採用する新モデルの投入などの要因で、コストが大幅な低減できました。そしてコストが削減した分は利益率向上させるのではなく、販売価格に反映させました。去年1年間にModel 3が4回も値下げを実施して、現在現地価格は日本円で約420万円(補助金含まず)まで下げました。2020年見事に中国EVの販売台数No1の座を奪い取りました。
テスラが狙ってた生産能力の向上、中国での販売拡大、生産コストの削減、3つの目標を全て完璧に達成しました。たった2年の中に、なにもない状態からスタートし、コロナショックも遭遇した上での出来事です。そして上海市政府との"掛け合い"について、現状の販売状況でみると2023年の納税額の条件を軽々とクリアされ、テスラ上海は銀行から受けた融資額はすでに200億元(3200億円)を超えまして、もう忘れていい話になってました。
テスラ上海に恵まれる者
テスラ上海の影響は中国国内に留まらず、早くて日本にも及んでました。先日テスラ日本はModel 3の調達先をカリフォルニア工場から上海工場に切り替えて、最大156万円の値下げを実施し、一番安いグレードのは429万円に引き下げ、中国と同じ値段に揃いました。Model Yの生産も開始したため、日本に導入される日がそう遠くないでしょう、これでEVの不毛の地だと言われる日本もEVの普及が加速できたらと思います。
テスラ上海の突如の登場により、予想通り中国のEV産業に多大な影響を与えました。大量生産そして現地調達によりテスラ上海に関わるサプライヤー企業が急速に成長しまして、中国上海の株式市場で100銘柄ほど”テスラコンセプト”株と一つのジャンルができています。
変わりに既存のEVメーカーが予想通り苦戦を強いられました。Model 3が発売されるタイミングや値下げを実施するタイミングで、既存メーカーの悲鳴が上げ、一時的市場に絶望的な空気感が蔓延してました。技術力、ブランド力、製品力、どちらも格段高かったテスラとどう対抗するか現地メーカーに生き残るため答えなければ行けない課題となります。
その中、グローバル的なビジョンを持って、予め独自な技術、商品設計、販売戦略、サービスの設計で差別化を図れって、前から競争に備えていたメーカーがその衝撃を耐えられて、テスラの進出によりもたらしたEVに対する市場から熱い視線、サプライチェーンの成長に対する促進効果を便乗してテスラとともに成長できた勝ち組のメーカーもありまして、政府の助成金に頼り過ぎて競争力が低く、独自性が乏しく苦境に陥る負け組のメーカーもあります。しかし全員が近い距離からテスラを観察し学ぶ機会と直接競い合う機会も与えられ、負け組達も一から出直して逆襲することを企てています。
独走するテスラ
テスラ上海工場は初年度で15万台の生産実績を残し、現在週5000台、年間25万台の生産能力に到達しましたが、今年中に年間45万台の生産能力を到達すると目標を設定しました。またさらなる工場の拡充が計画されているようです。
Model Yの量産が開始され、年始にModel Yの大幅値下げの爆弾を投下し、予約が一気に殺到し一時的にサイトのアクセス困難になってました。
車の生産だけではなく、急速充電設備(スーパーチャージャー)の専門工場も上海で稼働し始めました。250kw、15分の充電で250kmを走行可能な第3世代のスーパーチャージャーを今年中1万台を生産する予定です。
グローバル的にドイツとオースティンのギガ工場が今年中に稼働開始する予定、セミトラックとサイバトラックも今年から納車開始予定、去年9月に発表した次世代の4680電池の自動生産の動画が年末年始頃に公開されて、今年中テスト生産開始する予定です。この4680電池を搭載する予定となり、エンジン車の止めを刺すと言われるModel 2の噂も最近ちらほら出始めました。
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まとめ
テスラは電気自動車のイノベイターとして、”正しい”電気自動車はどういうものかを定義した上で率先で量産に成功し、新規参入者だと信じられないほどの完成度で車を送り出して一般の人も手が届く価格で提供し、たくさんの利用者に感動を与えました。
そしてテスラは困難の時に手を差し伸べて、中国工場の建設に多大な支援をして、テスラの驚異的な成長の後押しをした中国政府はも見事な先読みの力と行動力を見せしました。
両者の協力でテスラ上海という素晴らしい成果を生み出しました。米中の対立分断が深刻となる今、このような事例は今後もう見れないじゃない。そういう意味でも、テスラ、テスラ中国の成功を見守っていきたいと思います。
(完)
次回はテスラ中国の最大の競合BYDについて紹介したいと思います。
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