Stand by me 描クえもん 第7話

住所不定な気分でした。

【あとがき】
自分を取り巻く環境が目まぐるしく変化していくとき、普通はそれを体感します。

漫画家の場合、作品が売れても売れなくても基本的には家で漫画を描くだけです。
例えば、作品が大ヒットしたとします。
ひたすら忙しくお金を使う時間はありません。
たまに本屋に行って、自分の本が平積みされているのを見て驚くくらいです。
リアルタイムでヒットを体感する機会は多くありません。

その頃、変化を体感している人たちがいます。
編集者を始めとする作品周辺の関係者です。
彼らは変化に正比例して態度を変えていきます。
原作者やらブレイン、仕掛け人といった肩書きで取材を受け、意気揚々と作品について語り出します。

実はその行為には名前がついています。
「アレオレ詐欺」です。

昔、知人の漫画家からこんなことを言われました。

「この間、君の担当編集者に会ったよ。
ウチの雑誌で描かないかって。
雑談で僕が君の作品のヒロインを褒めたら、『アレ作ったのはオレだ』って言ってたけどそうなの？」

僕は答えました。

「僕が寝ている間、その編集者が僕にヒロインの夢を見させる能力があったとしたらありえるかもしれないね」